↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
魔王は転生して令嬢となり、雇われた勇者護衛  作者: 星野翔


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
49/50

第49章:通じ合う暗黙の了解、父の斬魂の剣

地獄の業火が天空を舞い狂い、漆黒の空間全体を恐ろしいまでに猩々緋(しょうじょうひ)の煉獄へと呑み込んでいく。


目の前を咆哮しながら突き進んでくる混沌の化け物を前にして、メシアに怯む様子は欠片もなかった。彼は血に汚れた自身の手のひらをゆっくりと伸ばし、ディアブラの微かに冷たい小さな手を力強く握りしめた。


少年の黄金の瞳には、比類なき叡智と確固たる決意の光が宿っていた。彼はわずかに顔を傾け、隣に立つ大小姐へと静かながらも重みのある声で語りかけた。


「大小姐……力を貸してほしい。僕の……父さんから、あるものを借りたいんだ」


手をとられたディアブラは一瞬だけ呆気にとられ、湛藍と深紅が美しく交錯する血の瞳に困惑の色を走らせた。だが次の瞬間、彼女は少年の絶対の信頼に満ちた眼差しを真っ向から受け止めた。


千年の長きにわたり万魔の頂点に君臨した至高の魔王として、ディアブラの知性と魂の目覚ましさは計り知れない。彼女は一瞬にして少年の意図を汲み取り、口元を小さく持ち上げると、自信に満ち、強がりでありながらも心の底から安心しきった微笑みを浮かべた。


「そういうことか……ふん! 笨蛋保鑣(バカほうひょう)のくせに少しは知恵が回るではないか。まさか次元を越えた界域召喚などという大業を思いつくとはな!」


「——二重魔力回路、全開連結(フルドライブ)!」


二人が十指を固く絡め合わせた瞬間、真龍の勇者の放つ漲る黄金の輝きと、魔王の気高く深遠な漆黒の煞気が、何一つ包み隠すことなく完璧に融合を果たした! 極限に達した魔力が火山のごとく噴出・暴騰し、ディアブラの指先で古の微光を放つ「ソロモンの指環」へと残らず注ぎ込まれていく!


『嗡——————!!』


漆黒の指輪が次元の壁を穿ち抜く万丈の光彩を解き放つ。ディアブラは薄い唇を微かに開くと、幾万の時空を越える至高の魔神勅令を下した。


「空間と転移を統べし主——大公爵・バシン(Bathin)!」


大小姐の声は鈴の音のごとく清らかに響き渡り、侵すべからざる帝王の威厳を湛えて荒れ狂う虚空へと広がった。


「契約の名に従い、メシアが父——コルヴォスの斬魂剣『真龍王者之劍』を、ただちに彼の手に届けるのだ——!!」


『バリリッ——!』


虚空が突如として見えざる巨大な手で引き裂かれ、眩い金色の亀裂が走り抜ける! 天地を揺るがし魂を震わせる厳かな龍鳴と共に、純正なる真龍の威圧と浩瀚たる金光を纏った伝世の神兵——真龍王者之劍が亀裂から破空の音を立てて飛び出し、絶大なる風圧を巻き起こしながら、メシアが固く握る手の中へと寸分の狂いもなく収まった!


『ガアアアアッ——! 卑しい人間どもめ! 死ねい——!』


ほぼ同時に、凶暴な地獄の業火を全身に纏わせた凄惨なる異形のニビルが絶望の咆哮をあげ、世界を引き裂く荒れ狂う気浪を伴って、二人へとなだれ込むように襲いかかってきた!


一触即発のその瞬間——


メシアの双眸から無敵の金色神芒が炸裂した。彼は右手に父より借り受けた「真龍王者之劍」を掲げ、左手には「天魔断罪の剣」を逆手に構え、二剣を交差させる! 真龍の血脈と勇者の奥義が、この瞬間、かつてない前人未到の頂点へと昇華した!


『唰——————!!』


地獄の空間全体を貫く、直視すら叶わぬ熾烈を極めた極致の金光が、まるで破暁の曙光のごとく穿ち出され、ニビルの巨大にして醜悪な躯体を一瞬で貫いた!


「奥義——真龍断魂・気刃斬(しんりゅうだんこん・きじんざん)——!!」


『ドスッ——!』


それは肉体を断ち切る物理的な斬撃などではなく、魂と邪念そのものを切り裂く終極の神技であった!


凄惨を極める哀号と共に、躯体の内部に寄生していた虚無魔神ニビルの醜く漆黒な混沌の魂は、浩瀚たる金光と双剣の気刃のもとでその場にて無数の破片へと微塵に切り刻まれ、完全に灰燼と化して霧散した!


『轟……』


ニビルの邪霊による操りから解放され、かつて世界全体を戦慄せしめた高大にして威厳に満ちた魔王ディヤブロの前世の肉体は、煌々と燃え盛る業火のなかに静かに横たわった。両目を閉じ、かつての荘厳と静寂を取り戻したその姿は、もはや微動だにすることはなかった。


地獄の門を吹き荒れていた風暴は、ここにきてついに、完全なる平穏を迎えたのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。