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魔王、病弱な公爵令嬢に転生するも、護衛として現れたのは宿敵の勇者でした〜今更正体を隠しても遅いのですが?〜  作者: 星野翔


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第48章:宿命を打ち破る再会、お前を前に行かせはしない

神の島の聖台の上、濃煙が次第に薄れゆく中、空気には刺すような焦げ臭さと残滓となった狂暴な霊圧が立ち込めていた。


『シャリィィン……ッ!!』


大魔神マルバスの両手から温かくも膨大な翠緑の治療陣法が輝きだし、絶え間なく湧き出る生命の霊力が晶瑩とした光の雨となって、倒れ伏す者たちを包み込んでいく。


「ケホッ……ゲホッ……!」


サマエル、ベルフェゴール、リヴァイアサンら魔神たちは、治癒の光の中でゆっくりと双眸を開き、痛む胸を虚弱に押さえながら起き上がった。


意識を取り戻したばかりの狼人の少女オフィーリアは、全身の裂けた恐怖の傷口も顧みず、狂ったように身を捩って立ち上がった。彼女は両目を真っ赤にし、焦げ痕と砕石に満ちた広場をよろめきながら駆け回り、四方を押し殺した声で叫んだ。


「大小姐……少主! どこにいるの……!? お願い、応えてよ……!」


だが、かつて『地獄の門』がそびえ立っていた白石の聖台の中央には、いまや冷たく静まり返った巨大な深坑と、残煙の漆黒が残るのみであった。大小姐の姿もなく、少主の痕跡もない……神の島全体が、胸を締め付けるほどの死寂に包まれていた。


◆

時を同じくして、漆黒に閉ざされた『地獄の門』の内部——


そこは血に染まった業火によって完全に引き裂かれた混沌の空間であった。滔々たる地獄の業火が狂った毒蛇の如く狂乱して舞い、この虚無の世界のあらゆる生命と魂を荒々しく呑み込み、焼き尽くしていく。


『グォォォォォン————ッ!!』


果てしなき業火の無情なる焼き尽くしのもと、虚無魔神ニビルの巨大な躯体は幾重にも崩壊し、血肉は焼かれて飛灰となり、痛々しい白骨を晒していた! だがそれでもなお、かつての魔王の肉体より再塑されたこの混沌の化け物は、不死不滅の強靭さを糧に仁王立ちし続けていた!


ニビルは六つの血瞳を真っ赤にし、耳を聾するほどの絶望の咆哮を上げた。


『我こそは世の唯一神……そこらの業火ごときで……我が滅びるものか! 虫ケラどもめ……!』


前方からそう遠くない場所、ディアブラの繊細な身躯が滾る火の海の中にたたずんでいた。業火の灼熱が彼女の顔を真っ赤に映し出し、銀灰色の長髪が狂風の中で激しく狂い踊る。


「そうか……」


ディアブラの眼差しは霜の如く冷たく、その口元には極致的高傲と決意の笑みが浮かんでいた。


彼女の華奢な肩の上に、漆黒の大公爵シャックスが優雅に舞い降りた。紫紅の双眸には悲しみと敬意が溢れていた。


「シャックス……やれ」


ディアブラは深呼吸をし、ゆっくりと両目を閉じた。


「我がの魂を……業火の深遠へと導き、あの肉体の中へ完全に注入するのだ!」


シャックスは漆黒の両翼を広げ、悲鳴のような狂暴な黒風を巻き起こした。漆黒の魂の光輪が瞬間的にディアブラの小柄な身躯を包み込み、大小姐の魂を最深部の業火の嵐へと強引に押し込もうとしたその時——


◆

「待ちなさい、大小姐」


『ドンッ! ズギャァァァッ——!!』


低く、かすれ、けれど圧倒的な安心感を帯びた声が、突如として地獄の業火の轟音とニビルの咆哮を突き破り、漆黒の空間に轟然と響き渡った!


ディアブラの全身が激しく震え、猛然と目を見開いた!


全身血まみれで衣服をボロボロにしたメシアが、万丈の光華を放つ『天魔断罪の剣』を握りしめ、確かな足取りで後方から一歩踏みしてきたのだ! 彼の身体に縦横無尽に刻まれた傷口からは未だ血が滲んでいたが、その黄金色の真龍の金瞳は、二度と消え失せることのない太陽のように熱く滾っていた!


「メ……メシア……?! お前……どうしてここに?!」


ディアブラは目の前に現れた信じがたい存在を見つめ、華奢な身体を震わせながら、声すら信じられぬ驚きで震わせていた。


少年は電光石火の身のこなしで、瞬く間にディアブラとシャックスの間に割り込んだ。彼は驚き慌てる大小姐をすかさず自分の背後へと引き寄せた。その細身でありながらも圧倒的に頼もしい背中は、立ち塞がる巨大な高山のようであった。


メシアはわずかに顔を背け、口元の血を一拭きすると、背後の呆然とする大小姐に向けて、あの見慣れた、優しくもどこか強引な笑みを浮かべて見せた。


「専属護衛として……お前を前に行かせはしないよ」

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