第36章:天啓聖光の庇護
第一幕:安眠の理由と、三強の対峙
「少主……どうかお気をつけください!」
オフィーリアは歯を食いしばり、全身の激痛を堪えながら重々しくうなずくと、身を翻して撤退と治療へと向かった。
その時——
「ドーーーン……!」
遠くの崩れ落ちた城壁の廃墟の中で、滾々と立ち込める煙塵と瓦礫が激しく爆発した!
ルシファーは、塵一つついていない自身の純白の長袍を軽くはたき、表情ひとつ変えずに煙の中から一歩一歩と歩み出てきた。彼はわずかに首を傾げ、遠方で真っ二つに両断され、完全に息絶えたベルゼブブの死体をひと目見やると、その視線をメシアの手に握られた金色の魔炎を纏う古剣へと移し、その声には冷徹な称嘆の色が混じっていた。
「『天魔断罪の剣』か……実に大したものだ。さすがはディアブロ大人の神兵利器だな、たった一人の人間の手で、一太刀のもとにベルゼブブを片付けてしまうとは」
言い終えると、ルシファーはゆっくりと顔を上げ、その金色の瞳でメシアの背後を通り越し、傍であくびをかみ殺しているパジャマ姿の少年に視線を据え、冷ややかに皮肉った。
「ベルフェゴール……堂々たる遠古の魔神が、まさか取るに足らない一人の人間の力を借りて私を倒そうとはな。お前の誇りはどこへやった?」
その言葉を聞き、ベルフェゴールは頭の天然パーマをボリボリとかきむしり、細く閉じられたその目をわずかに見開くと、どこか投げやりで、それでいてこの上なくけだるげな口調で言い放った。
「はぁあ……誇りなんて小銭の価値すらないね。そんなものでグッスリ眠るための枕が買えるのかい?」
ベルフェゴールは大きなあくびをひとつ噛み殺し、鋭い斜め視線をルシファーに向けた。
「まあ、そうとも言うさ! お前みたいな傲慢なバカが暇を持て余して、変な秩序の再構築なんぞを企むからいけないんだ。魔界全体がめちゃくちゃに掻き回されて、おかげで極北でのんびりお昼寝する自由すら奪われちまった……今日という今日はお前をボコボコにしてひざまずかせてやらなきゃ、本座だっていずれ安心して美容睡眠もとれやしないっての!」
「救い難い愚か者め」
ルシファーの眼光が鋭く凍りつき、右手で握る裁決聖剣をゆっくりと掲げた。比類なき神聖なる金色の神威が、瞬く間に天地のすべてを覆い尽くす。
「そこまで早々に死に急ぎたいというのなら、この本座が願いを叶えてやろう!」
第二幕:極速の激突と、遠古の重力拳
「ガァァァ————ッ!!」
天地を繋ぐ空気が、その瞬間に完全に引き剥がされ、真空と化した!
メシアの姿が金色と黒色が織りなす一条の雷霆へと変化し、その手にした『天魔断罪の剣』が虚空を引き裂きながら、ルシファーが掲げる眩い金芒を放つ裁決聖剣へと、半空中で荒れ狂う激突を見せた!
二振りの神兵の剣先が交差したその瞬間、すべてを滅ぼす衝撃波が津波のごとく四方八方へと轟音と共に爆発した! 『煉獄の城』の関所の周囲に残っていた数百座の廃墟の巨石が、凄まじい気圧によって一瞬にして微細な粉末へと打ち砕かれる!
「ぐっ……!」
メシアの腕の筋肉が隆起し、真龍の黄金の瞳に激しい怒りの炎を燃え上がらせながら、歯を食いしばってルシファーの剣圧を押し留める! 対するルシファーの高慢な金色の瞳の奥には、ついに冷徹な重々しさがかすかに宿った。
「人間ごときが……この私の神威を肉体だけで受け止めるというのか……?!」
だが、ルシファーが剣を引き戻して態勢を立て直す間すら——
「ビリリリ————ッ!!」
ルシファーの頭上のはるか上空、その天幕全体が恐るべき円弧を描いて突如として下方へと深く凹んだ!
モコモコの天然パーマにパジャマ姿のベルフェゴールが、いつの間にかルシファーの頭上に現れており、その一見すると華奢でか弱い小さな拳に、星々すら粉砕する【絶対遠古重力】を纏わせ、崩れ落ちる天盤の如き圧倒的な威圧とともに真下へと叩き下ろした!
「そこから——叩き落としてやるよ——!!」
第三幕:天啓の加護と、崩壊の天地
「ガキィィィン————ッ!!」
この滅びの拳を前にして、ルシファーとてわずかな油断すら許されなかった! 彼の背中にピタリと寄り添っていた六枚の羽翼が瞬時に大きく広がり、眩いばかりの『天啓の加護』の金光が羽の上で狂暴に開花し、絶対無敵なる神聖金光の盾へと変化し、ベルフェゴールの重力巨拳を真正面から正面衝突で受け止めた!
金色の天啓の聖光と、深淵なる遠古の重力が半空中で激しく摩擦し、すり潰し合う!
「バリバリバリッ! ドガァァァン————ッ!!」
二つの頂点に立つ力の衝突が引き起こした余波は、まるで世界の終わりのような天地崩壊を引き起こした! 『煉獄の城』の大地そのものが激しく揺れ動き、陥没し、底知れぬほど禍々しい無数の亀裂が蜘蛛の巣のように数キロメートル四方へと枝分かれして伸びていき、高空の雲層すらも豪快に引き裂かれて巨大な空洞を作り出した!
神聖なる金光と重力の嵐によって吹き飛ばされた三人の影が、それぞれ地上へと舞い戻る。
ルシファーの六枚の羽の羽毛が風嵐の中でわずかに震え、金色の聖光自体は傷ひとつないまま健在であったものの、その足元の大地は完全に原型を留めぬ廃墟と化していた。一方、メシアは天魔断罪剣を携え、ベルフェゴールと共に左右に分かれて吹き荒れる砂塵と風の中へと気高く立ち並び、その眼光は鷹の如く鋭く研ぎ澄まされていた。
真なる神と魔の終局決戦——今、その激動の幕が切って落とされたのだった!




