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魔王は転生して令嬢となり、雇われた勇者護衛  作者: 星野翔


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第二十二章:六翼の盾と獅の医者の奇跡

第一幕:ルシファーの冷酷な眼差しと新世界の宣告

『轟————!』


五メートルの巨体を誇る巨大魔神アスモデウスは、その全身に天地を焼き尽くすほどの赤き烈炎を纏い、威圧的な巨影を戦場全体に覆いかぶせるようにそびえ立っていた。


だが、要塞を一撃で粉砕しかねないその圧倒的な魔神を目の当たりにしてもなお、宙空に優雅に浮遊する『傲慢のルシファー』は、睫毛ひとつ動かさなかった。まるで神の如く冷徹で、感情の欠片すら宿さない純金の瞳は、アスモデウスとサマエルをまるでゴミでも見るかのように軽くいなすと、そのまま真下にいる『天魔断罪の剣』を手にした小千金——ディアブラの姿へと静かに落としめられた。


ルシファーは手にした黄金の長剣を音もなく鞘へと収めると、その口元に不敵かつ深遠な冷笑を浮かべた。


「ほう……これはまた珍しいお客様だ。まさか……ディアブロ様ご本人が自らお出ましになるとはね。実に……面白い」


ルシファーはふっと視線を横へと流し、両手の掌を破魔の聖光に貫かれて無惨に血を流す、憔悴しきったベルゼブブを一瞥して、やれやれと首を横に振った。


「ル……ルシファー様……っ」

ベルゼブブが激痛に歯を噛み締めながら声を絞り出す。


「もういい、そこまでだ。今夜のところはこれでお開きにしよう」


ルシファーは淡々と全軍への撤退を命じると、再びその視線をディアブラへと据え直し、優雅に、だが絶対的な威厳を込めて深々と一礼した。その声は戦場の隅々まで響き渡る。


「ディアブロ様、私はこの腐敗しきった世界の秩序を根本からリセットする……どうか今回は、これ以上私の邪魔をなさらないでいただきたい。次にまみえる時……私は必ずやあなたのその魂を我が手で刈り取るゆえ、あらかじめご容赦を」


第二幕:アスモデウスの狂暴重拳と六翼の盾

「ふざけた口を利くなぁぁぁっ! ディアブロ様の御前で何をヌケヌケと大口叩いてやがるんだぁぁぁッ!」


ルシファーが自分を差し置いて魔王の魂を奪うなどと宣ったのを聞き、5メートルの巨体を誇るアスモデウスは怒髪天を衝く勢いでブチ切れた! その巨大な狂暴の面が憤怒に歪み、魔神の巨拳が万丈の業火を纏いながら、山をも削り取る衝撃波を伴ってルシファーとベルゼブブへと叩きつけられた!


「奥義——色慾烈焰・煉獄砕破拳(しきよくれつえん・れんごくさいはけん)!」


『ドォォォン————!!』


山岳すら一撃で粉砕するはずの絶滅の拳撃に対し、ルシファーは微動だにせず、その背後に広がる三対(計六枚)の黒白交織の宏大な羽翼を、目の前でパッと十字に交差させて展開した。それは絶対防御の金光の屏障へと瞬時に変化する!


『パリィィン————!』


アスモデウスの放った恐るべき巨拳が六翼の屏障に直撃した瞬間、まるで核爆弾が破裂したかのような凄まじい衝撃波と風暴が爆発し、周囲に吹き飛んだ天魔軍の兵士たちが一瞬で微塵の塵へと消え去った!


だが——!


眩い黄金の光がスーッと収まったその空間で。


ルシファーの展開した六翼の屏障は、一筋の傷すらなかった。彼は片手で重傷のベルゼブブを優しく抱きかかえたまま、その六翼をふっと優雅に一振りした。彼らの身体は一瞬にしてまばゆい金色の流光へと変わり、残された天魔の軍勢をごっそりと引き連れながら、遥か彼方の夜空の彼方へと一瞬にして消え去っていったのだった……。


第三幕:治癒の獅子・マルバスの召喚

『はぁ……はぁ……っ!』


敵軍の姿が完全に闇夜に溶け去ると、燼火要塞を覆っていた緊迫の空気は嘘のように消え去り、静寂の夜が戻ってきた。


5メートルの巨神だったアスモデウスは、急速に魔力を収縮させ、再び元の5センチのミニサイズへと縮み上がった。一方のメシアは急いで『天魔断罪の剣』を納めると、腹部から血を流し続け、すでに深い意識の闇へと沈み込んでいるオフィーリアの身体を両腕でしっかりと抱きかかえた。


「オフィーリア! しっかりしろ、頼むから耐えてくれ……!」

メシアは目の前で青白く染まっていく同伴者の顔を見つめ、その双眸を焦りと怒りの赤に染め上げた。


その時——


すでに顔面が紙のように真っ白になり、一歩歩くのすら奇跡というほど極限まで摩耗しきっていたお嬢様——ディアブラが、彼女を支えようとしたサマエルの手をキッと力強く押し退けた。


彼女は震える小さな両手を高々と掲げ、無名指の『ソロモンの指輪』に残された最後の一滴の霊魂の律動を絞り出し、古く神聖なる秘法の祈りを詠唱した。


「腐敗と治癒の境界を歩む主宰よ、世間のすべての隠し事を暴く知者よ!」


「我はここに肉体の律動を捧げ、停滞したる歯車を叩き起こさん。マルバス——! 獅子の皮を脱ぎ捨て、人の面をもって此処に歩み出でよ!」


ディアブラの瞳の光がフッと散りかけながらも、彼女は渾身の力を振り絞って最後の宣告を絶叫した。


「指先の疫病をもって、あるいは掌の奇跡をもって……我が渇望に応えよ——!!!」


『ヴォォォォン————!』


翠緑色と金色が織りなす神聖な治癒の魔法陣が地面に盛大に展開した! 立ち込める煙の向こうから、長身で金縁のローブを纏い、その頭部に威厳と叡智を湛えた「高貴なる獅子」の面頭を持つ人型の巨影がゆっくりと歩み出てきた——それこそは【第5柱・大統領】マルバスその人であった!


マルバスは優雅に片膝を突くと、胸元に手を当てて深く頭を垂れた。


「吾はマルバス……ディアブロ様の御命に奉る」


第四幕:掌の奇跡と、倒れ行く魔王

ディアブラの華奢な身体がガクガクと激しく揺らぎ、彼女はメシアの腕に抱かれたオフィーリアを指差し、か細く、だがこの上なく優しい声で最後の勅令を下した。


「マルバス……あの娘を……オフィーリアを治してやってくれ……」


「御意のままに、我が主よ」


マルバスはスッと立ち上がると、その太く力強い掌をオフィーリアの裂けた腹部の傷口へと優しく重ね合わせた。次の瞬間、無数の翡翠色の眩い『治癒の奇跡の光』がオフィーリアの全身を包み込んだ! 破魔の狼人としての彼女の肉体の崩壊し necrotic な細胞と破壊された内臓が、常識を完全に超越した速度で凄まじい勢いで急速に縫合・再生していく!


オフィーリアの呼吸が穏やかなリズムを取り戻し、その頬にふっと健康的な赤みが戻っていくのを確認した瞬間、ディアブラのなかで張り詰めていた限界の糸が、プツリと完全に切れた。


『スッ……』


体内の魔力と精神力が完全に枯渇し、一滴すら残っていなかった。


小千金のまぶたがトロンと閉じられ、その小さく華奢な身体は、まるで一本の萎れた百花が風に揺れるように、ふわりと後ろへと傾いていった——。


『ガシッ。』


彼女の異変をずっと警戒していたメシアは、空いていた片方の腕で素早く、そしてこの上なく優しく、仲間を救うためにすべてを使い果たした傲嬌なお嬢様の身体をしっかりと抱き留めた。


少年は胸に預けられた、規則正しく微かな寝息を立ててすやすやと眠りこけている、あまりにも愛らしい寝顔を見下ろし、その口元に深い温もりと愛惜に満ちた優しい笑みをそっと浮かべた。


「よく頑張ってくれたね……僕たちの大切なお嬢様、魔王様。あとは……僕に任せて安心して眠るといい」


マルバスが放つ翡翠色の柔らかな治癒の光に包まれながら、戦場の硝煙はゆっくりと夜空へと溶けていき、世界を揺るがしたこの激闘は、温かな絆に満ちた結末へと静かに収まっていくのだった……。

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