第二十章:新秩序の剣鋒
第一幕:怒号の防衛線と深海の激怒
城壁の上で呆然と立ち尽くしていたディアブラと、血煙の舞う戦場の真ん中にいたメシアは、その余りにも凄惨な光景の直撃を受け、瞳を激しく震わせた! 少年の黄金の真龍の瞳は、一瞬にして冷徹を極める絶対的な怒りの炎へと染まり上がる——!
「——許さない……ッ!」
ベルゼブブの腹部から生い茂ったおぞましい魔爪が、猛毒の紫黒の気泡を纏い、血の海に倒れ伏して身動きすらできぬオフィーリアの咽喉めがけて、まるで毒蛇の如きスピードで真っ直ぐに突き刺さった!
『ガキィィン——!!!』
耳をつんざくような、あまりにも清涼で重い金属の衝突音が戦場の喧騒を切り裂いた。眩い火花が千鈞一髪のタイミングで激しく四散し、ベルゼブブの必殺の爪撃は、横一文字に差し出された一本の漆黑の魔剣によってガチリと弾き飛ばされた。巻き起こった凄まじい衝撃波が、足元の焦土を粉々に粉砕して塵へと変える。
あまりの反動に、ベルゼブブはたまらず数歩よろめき後退し、腹部から生えた爪が痺れるようにピクピクと痙攣した。彼女はギョッとした表情を浮かべ、瀕死の狼人の少女の前に仁王立ちしているその少年の手元を凝視した。その瞳孔が極限まで収縮する。
「な……『天魔断罪の剣』だと?! そんな馬鹿な……魔王様ご自身の佩剣が、なぜお前のような下等な人間のガキの手に……っ!」
メシアは片手で魔剣をしっかりと把持し、重傷を負って微かな息しか吐けなくなっているオフィーリアの体を背後でしっかりと庇い立てしていた。少年の全身には、かつての勇者の圧倒的な霊力と、天魔の剣が放つ漆黒の殺気が激しく交錯している。先ほどまでの優しく穏やかな少年の面影は完全に消え失せ、その冷徹な双眸は、半魔半人と化したベルゼブブの姿をただ冷酷に射抜いていた。
「彼女に指一本でも触れてみろ……その首を、この剣で胴体から引き離してやる」
少年の低く重みのある声は、一言一句がまるで死の宣告の如く重く響いた。
その背後で、メシアが危険にさらされているのを目撃したリヴィアタンのなかで、静かに眠っていた深海の帝王としての底知れぬ激怒がリミッターを振り切った。
「その小娘に手を出しただけでも許しがたいというのに……あろうことか、我が愛しき勇者様にその汚い爪を向けただと……?!」
『ドォォォン——!』
何もない焦土の空間から、あり得ないほどの巨大な水柱と荒れ狂う大津波が轟音とともに爆誕した! 利維坦は一筋の青き流光と化し、瞬く間にメシアの背後へと舞い降りる。彼女の背後からは、無数の巨大で湛藍色のルーン文字を纏ったタコの触手が嵐の如く荒々しくうねり狂い、周囲を覆い尽くしていた天魔の雑兵たちを、一瞬にしてすり潰して血の泥へと変えてしまった!
リヴィアタンとメシアは背中を預け合うように立ち並び、無限に湧き出る敵兵を軽々と薙ぎ払いながら、その冷徹な青き瞳で、前方で双腕を失いながらも腹から異形の爪を生やしたベルゼブブを絶対的な殺意をもって固定した。
戦場の中心部は、まさに秒速で崩壊へと向かう極限の緊張に包まれていた。
第二幕:傲慢の降臨と二つの死闘
その頃、城壁の上で戦局を鋭く見つめていたディアブラは、メシアが懸命に仲間を護る雄姿と、血に染まったオフィーリアの姿を目の当たりにし、その両手を白くなるほど強く握りしめた。彼女の紅い瞳のなかに、燃え盛るような強い決意の光が煌めく。
「……見せてやるわ、ルシファー。私が、本当の魔王であることを……!」
戦局の趨勢が激しく揺らぐ中、突如として天変地異の如き重圧が戦場を支配した。
「ハハハッ! このざまあみろ、臭いバエめ! 本座の鉄槌を食らえ!」
サマエルがその巨大な巨躯を漆黒の爆炎に変え、遥か上空から山をも削り取るほどの重量を誇る巨大な戦斧を振りかざし、ベルゼブブの頭上へと凄まじい勢いで叩き下ろした!
だが——その戦斧がまさにベルゼブブの頭を両断せんとする、その寸前の瞬間。
『カーン——ッ!!!』
世界が揺らぐかのような、圧倒的な大鐘の如き衝突音が煉獄の城全体を打ち鳴らした。無敵の威力を誇るサマエルの巨斧が、どこからともなく現れた一振りの華麗な長剣によって、ほんの軽やかに、まるで子供の玩具をあしらうかのように空中でピタリと受け止められていたのだ!
発生した凄まじい衝撃波は完璧な円環を描いて周囲数百メートルの大地を水平に削り取り、すべての障害物を消し飛ばした。
サマエルの巨大な身体は、その跳ね返された反動に耐え切れず、地面にドスリと着地しながらも数十メートル後方へと押し戻された。彼は歯ぎしりしながら、突如として戦場のただなかに降り立った、聖潔なる光と邪悪な黄金の気配を纏う優雅な人影を睨みつけ、その巨躯を微かに震わせながら叫んだ。
「この圧倒的なまでの気圧の差……まさか……傲慢のルシファーかッ?!」
そこに立っていたのは、まばゆい金色の長剣を軽やかに指先で回す、この世のものとは思えぬ美貌と完璧な気高さを纏った男——傲慢のルシファーであった。彼は優雅に首をかしげ、サマエルを冷ややかに見下ろしながら、小馬鹿にしたような笑みを浮かべた。
「腕が落ちたな、サマエル。だがまあ……相変わらずその血の気の多い無鉄砲さだけは、千年前から微塵も変わっていないらしい」
ルシファーは手にした黄金の長剣を無造作に振り払い、すべての存在を見下ろすような圧倒的な蔑みをその瞳に湛えた。
「いいだろう。今日本座が自ら相手をしてやる——お前のような古臭い『狂犬』が、この新しい世界に君臨する本座の新秩序に、果たしてどれほどの傷をつけられるか見せてもらうぞ」
「ルシファーァァァ——ッ!!!」
サマエルの双眸が怒りで完全に真っ赤に染まり、全身の漆黒の烈炎が十倍にまで膨れ上がり、再び怒号とともに戦斧を構えて突撃していった!
そして、もう一つの戦場——
「ベルゼブブ、貴様の相手はこの僕たちだ」
メシアが冷徹な声で告げ、手に握った『天魔断罪の剣』から真龍の金藍の霊力と魔王の煞気が爆発的に噴き出した。同時に、リヴィアタンの背後から迫り出した無数の湛藍の触手が、逃げ場を完全に塞ぐようにベルゼブブの周囲を取り囲む。
「おのれ……小僧どもがあぁぁぁっ!!」
半魔半人と化したベルゼブブは、狂乱の絶叫を上げながら、二対の魔爪を荒々しく振り回して突進してきた!
『ズドンッ——! 轟ッ——!』
天と地が逆さまになったかのような激震が走り、血肉と魔力が交錯する。
一方は、メシアと利維坦のコンビが狂暴な暴食の幹部を圧倒的な力で押し潰す死闘。もう一方は、暴君サマエルが持てるすべての憤怒を懸けて、至高の傲慢路西法に挑む頂上決戦。
二つの極限の戦場が同時並行で激しく爆発し、剥き出しの魔力が空と大地を引き裂きながら、煉獄の城の運命を決定づける最終決戦の幕が、いま完全に落とされたのだった——!




