第十六章:ソロモン召喚!色欲と狂暴の終焉の王
第一幕:誓いの指輪と神殿の大陣
所羅門神殿の最奥に鎮座する聖台の上で、古く神秘的なルーン文字が仄かな光を湛えて明滅していた。
ディアブラは緊張に指先を濡らしながら、幽暗な紫光を放つ『ソロモンの指輪』をその華奢な薬指へとゆっくりとはめ込んだ。同時に、メシアもまた熾烈な魔威を迸らせる『天魔断罪の剣』を力強く握りしめる。
二人の内に秘められた力がこの瞬間、奇跡的な共鳴を引き起こし、千年の長きにわたる封印から解き放たれた神殿の大陣が轟音とともに動き始めた!
ディアブラは『ソロモンの指輪』を装着した左手を高々と掲げた。宝石から血のごとく濃密で赤々とした光芒が爆発的に溢れ出す! 彼女の烏黒の美しい髪が天を舞い、その双眸は魔王専用の血赤に染まり上がった。
千年前、萬魔を束ねた魔王ディアブロとして——彼の魂は、かつての絶大な権能を取り戻すべく極限の気迫を込め、天地を揺るがす荘厳な音調で絶叫した!
「我が宣告を聞け! 汝は七の第三を掌る者、狂暴と烈火より生まれし終焉の王なり!」
『ドォォォン————!』
膨大な漆黒の魔力符文が石畳の上に一瞬にして展開され、宝物庫全体が激しく揺れ動いた!
ディアブラは胸を張り、指先を虚空へと向け、もっとも古き霊魂の真名を吟唱した。
「我が燃ゆる霊魂を導きとし、汝の名を喚ぶ——『アスモデウス』! 深淵の帳を引き裂き、地獄の王座より降臨せよ! 我が身前に立ちふさがる者を、尽く灰燼と化すのだ!」
「す、すごい圧迫感です……!」
傍らのオフィーリアは慌ててレイピアの柄を固く握りしめ、厳戒態勢をとった。
メシアもまた瞳を鋭く細め、引き抜いたばかりの『天魔断罪の剣』を握り直し、いままさに震撼の登場を果たそうとする古代魔神を迎え撃つ構えを見せた。
◇
第二幕:立ち込める煙と5センチの足音
『パァァァン————!』
一筋の巨大な赤き雷霆が魔法陣の中央を撃ち抜き、火山噴火のごとき膨大な濃煙が狂暴に渦を巻いて広がっていった!
「はーっはっはっは! 出てくるがよい! 本王の無敵の魔神軍団・第一弾よ!」
ディアブラは腰に手を当て、天井を仰ぎ見ながら勝ち誇った大笑いを響かせた。
やがて、煙がゆっくりと薄れ散っていく。
「ん……? どこだ……?」
メシアは目を凝らし、立ち込める煙の中を見渡したが、予想していたような巨大な影はどこにも見当たらなかった。
「少主……下を見てください」
オフィーリアが呆然とした様子で魔法陣の真中央を指さした。
広大な石畳の上にポツンと立っていたのは……体長わずか5センチメートル(ちょうど親指と同じくらい)の、ミニサイズの羊角悪魔だった。
背中には小振りで愛らしい漆黒のコウモリの羽をはためかせ、頭にはクルリと巻いた二本の羊角。掌にすっぽり収まるサイズでありながら、立ち姿だけは異様なほどセクシーかつエレガントにキザなポーズを決めている。
ミニ悪魔は優雅に「コホン」と咳払いをして喉を鳴らすと、赤ん坊のように愛らしい声で必死に大人びたトーンを作りながら口を開いた。
「吾は『色欲と狂暴』のアスモデウス……ここにディアブロ様の御命を拝聴仕る」
◇
第三幕:魔力不足と怒髪天
空気が完全に凍りついた。
メシアは地に立つ親指大の小悪魔を呆然と見つめ、それから隣に立つ傲嬌なお嬢様へと視線を往復させ、目元をひくひくと猛烈に引きつらせた。
ミニ・アスモデウスは己の5センチしかない豆粒のような身体を見下ろし、それから見上げるほど高く聳える廃墟の巨石を見上げた。彼が思い描いていた「全高5メートルで万物を薙ぎ倒し咆哮する」はずの英姿は、一瞬にして木端微塵に砕け散った!
アスモデウスの口元が狂ったようにひくついた。そのミニサイズの顔が一瞬にして真っ黒に染まり、羞恥と怒りで顔を真っ赤にしながらディアブラを指さして甲高い悲鳴を上げた!
「ま……待ちなさいよッ! ディアブロ様ぁ! 魔力が足りないならこんな適当に私を召喚しないでくださいよッ! 今の私のこの姿、コオロギに踏み潰されるのと何が違うんですかァァァッ! もう嫌です、このまま辞職してやりますからねッ!」
「な……何だとこのチビ子羊め! 本王に向かって何という口を利くのだ!」
ディアブラはお顔を真っ赤にして地踏みしながら叫び返した。
◇
第四幕:色欲の性と二本指の制裁
アスモデウスは激怒して腕組みをし、ぷくーっと頬を膨らませていた。だが、その豆粒のような両目が、転生して可憐で小さくなったレースのフリルドレス姿のディアブラを上下にジロジロと舐め回した瞬間、その瞳の奥に色欲の魔神としてのスケベな本能の怪光が怪しく輝き始めた。
アスモデウスは小さな顎をなで、翼をパタパタと羽ばたかせて宙に浮かぶと、どこか生意気でウザったい調子で「ふん」と鼻を鳴らした。
「ま……まあいいでしょう。今のディアブロ様がなかなか可愛らしい姿になられていることに免じて……私にそのドレスの下の小さなおパンツを見せてくださるなら、今回の件は大目に見て差し上げますよ~♡」
「き、きさまぁぁぁ……この変態スケベ悪魔めがあぁぁぁ————ッ!!!」
ディアブラは羞恥のあまり一瞬で耳の根まで真っ赤に染め上げ、悲鳴を上げながら足元の靴を脱ぎ捨てるや、空中のアスモデウスに向かって全力で投げつけた!
『カキィィン!』
『ペシッ!』
アスモデウスが逃げ出すより早く、オフィーリアの『破魔のレイピア』が冷酷にその目前の空間を切り裂いて遮り、間髪入れずにメシアが伸ばした二本の指が、まるで小さな小動物をつまみ上げるかのように5センチの小悪魔を「グニッ」と指先で挟み込んで拘束した。
メシアは片眉をピクリと跳ね上げ、指先の中でバタバタと暴れるミニ・アスモデウスを見つめながら、この上なく危険で極悪な笑みを浮かべた。
「おい、チビ助。僕の目の前でうちのお嬢様にセクハラするなんて、ポップコーンみたいに直接指で潰されたいのか?」
「は、離すのだ無礼な人間め! 我はかつて……ひゃんっ!? 痛い痛い痛い! 潰すな、挟むんじゃないのだぁぁぁ!」




