第十章:ソロモンの指輪の真実
第一幕:夜の海原と古代の秘宝
夜色が果てしない大海原を覆い、神聖なる戦船は生者禁制の地『神の島』へと向かう海面を穏やかに滑るように進み、数々のきらめく波光を切り裂いていく。
船首の欄干の傍では、肌寒い夜風が三人の裾をそっと揺らしていた。
銀ブルーのショートヘアを持つ天才剣士オフィーリアは欄干に寄りかかり、その冷たくも澄んだ青い瞳を、傍らで海を眺めてボーッとしているお嬢様——ディアブラへと向けた。ここ数日の道中を通じ、彼女は、このお嬢様の体力がか弱く、性格もツンデレ気味であることに気づいてはいたものの、どこかその身から発せられる尋常ならざる高貴な気配をひそかに感じ取っていた。
オフィーリアはついに胸の内の好奇心を抑えきれなくなり、静かに問いかけた。
「ディアさん……今回の『神の島』への冒険で、あなたがずっと取り戻したいと仰っている『ソロモンの指輪』とは、いったいどのような用途を持つ古代の秘宝なのですか?」
◇
第二幕:千年の記憶と魔王の威圧
その質問を耳にし、傍らで愛用の鉄剣の手入れをしていたメシアも手を止め、顔を上げて、どこか意味深な笑みを浮かべた目を彼女に向けた。
ディアブラはすぐには答えなかった。
彼女は潤んだ美しい双眸をゆっくりと閉じ、微風に自身の繊細な髪を揺らした。その瞬間、彼の思索は千年の時を超える枷を突き抜け、再びあの血肉が雨と降り、神々が墜落した荒古の時代へと舞い戻った。
再び目を開けたとき、そのか弱く柔和だった瞳の中には、思いがけず万人を俯瞰し、万物を威圧するような冷徹さと圧倒的な覇気がひそやかに宿っていた。
「およそ千年前……当時、魔界はまだ統一されておらず、天界、人界、魔界が割拠して争い合い、天下は塗炭の苦しみに沈み、万物は血の海の中で細々と喘いでいた」
お嬢様の声は優しくありながらも凄まじい通し力を持ち、言葉に言い表せないほどの史詩のような滄桑感を帯びていた。
「この終わりのない乱世と殺戮を完全に終わらせるため、本王はこの世界のあらゆる隅々をひとり歩いた——極北の永夜の氷原から、深淵の最底辺に至るまで。本王は自身の魂を誓いとし、強引に契約を結んで七十二柱の忠実なる強大な魔神を従えたのだ」
彼女はしなやかで真っ白な指先を伸ばし、何もない虚空に向けてふっと軽く握りしめた。その口調には、容赦のない狂傲が満ちあふれていた。
「そして『ソロモンの指輪』こそが、その七十二柱の魔神の本体の力を宿し、召喚するための唯一の媒体なのだ! これさえあれば、天地を引き裂くに足る魔神軍団を手に入れたも同然……再びそれを手にさえすれば、本王ふたたび頂点へ登り詰め、本王の魔界の王としての宝座を取り戻すことができるのだ!」
◇
第三幕:静まり返る海面と少年の笑み
冷たい海風が船舷を吹き抜け、空気はまるでこの瞬間に凍りついたかのようだった。
オフィーリアはわずかに口を開き、常に冷静で微動だにしなかった青い瞳の中に、極限の衝撃の色を走らせた。彼女ほどの超一流の剣客であれば、目の前のお嬢様の言葉の裏にあるものが単なる妄想などではないことが痛いほどよく分かる——その魂の深淵から発せられる帝王の威圧感は、決して偽れるものではないのだ!
(七十二柱の魔神……世界を覆すに足る軍団だと?! 一見するとか弱く見えるこのお嬢様が……前世ではそんなレベルの存在だったというのか……?)
だが、この荘厳さと震撼の空気を打ち砕いたのは、あまりにも不穏なタイミングでのクスリという笑い声だった。
「ふふん……」
傍らに立っていた農家の少年メシアが、こらえきれずに吹き出した。彼は剣を鞘に納めると、腕を胸の前で組み、目の前で醤油の瓶すらうまく開けられないくせに胸を張って『魔王の宝座への返り咲き』を高らかに誓っているお嬢様を見つめた。その瞳には、三分間の愛おしさと七分の腹黒いからかいの色が浮かんでいた。
「さすがは尊敬する魔王様ですね……志は相変わらず高いままで何よりです。ですがお嬢様、その七十二柱の魔神軍団を再び召喚し、世界を征服される前にですね……」
メシアはパチリと瞬きをし、似非笑みを浮かべたまま船室の方向を指し示した。
「今夜は少し波が高いようですが、あなたのそのか弱い凡人の肉体……ひょっとしてまたすぐに船酔いでゲーゲー吐き出したりしないでしょうね?」
◇
第四幕:打ち砕かれた威厳と夜空の絶叫
ディアブラが命がけで演じきり、やっとのことで築き上げた高冷な帝王の気配は、一瞬にして砕け散ったガラスの如く、音を立てて木端微塵に粉砕された!
彼女のお顔が一気に「ドカン」と真っ赤に爆発し、まるで尻尾を踏まれた野良猫のように羞憤の声を上げて絶叫した。
「きっ……きさま……この忌々しい無礼なガキめ! 本王が船酔いなどするものか! もう一度『吐く』などしてみろ、指輪を手に入れたら真っ先に貴様をカエルにしてくれるぞ——!!」
夜空の下、本来なら重々しい歴史の過去と遠征の危機は、再びこの喧嘩友達のドタバタ劇の中で、気楽で温かな笑い声へと溶け込んでいくのだった……




