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現場服の真面目不器用おじさん、異世界の施工不良を叩きなおす 〜魔王軍の総攻撃? 工事の邪魔だから全員ヘルメット被って座ってろ〜  作者: 田島久護


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英雄の軌跡を見ておじさんが知る同類の生き様

「やぁコーサク殿、どうやらもう元気いっぱいのようだね」


 扉を開けるとそこには爽やかな笑顔でそういうイレイズと、笑顔がぎこちないリィナがいた。


二人の反応を見る限り今の話を聞いていたのだなと思いつつ、親が殺された話をこちらからするのはデリカシーがないと考え、あえてそのことには触れずにもう問題ないとだけ答える。


「……そうかそれは良かった。ならば君が疑問に思っていることを解消しに、少し散歩にでも出ようか」


 こちらの返答に対し感じるものがあったのか、目を閉じ俯いて小さく笑った後でそう言いながら歩き出す。


後に続いて歩いたが、運び込まれた場所は相当なお屋敷らしく、調度品から建物の内装まで驚くほど豪華だった。


お付きの言う通り二人がただの領主とその妹ではなく、前の王様の子供だとすれば納得が行く作りに見える。


通路だけではなく中庭には兵士がおり、こちらを明らかに警戒しているように見えた。


両親が暗殺されたことを思えば、俺のような身元不明な男が近くにいれば警戒するのは当然であり、リィナを一人旅立たせたのは納得いかないが街中での反応もわかる。


 重そうな玄関扉をメイドさんたちが開け外へ出ると兵士が並んでおり、こちらを見つけると急いで駆け寄ってきた。


手前で止まり敬礼した彼らに対し、イレイズさんは遠巻きに警備していてくれればいいと告げ、命令通りに兵士たちは距離を取る。


綺麗に整えられた庭園を大分歩いて屋敷の敷地内の門へ着き、兵士たちが開けてくれたので外へ出て右へ歩いていく。


「目的地はあそこだ」


 イレイズさんはそう言って指さしその方向を見ると、そこには巨大な木がそびえ立っていた。今の場所から距離はかなりあるはずなのに、近くにあるような迫力に息を呑む。


この世界が分からないと言った俺に二人が驚かなかった理由が、あの木にあるのだろうかと思いつつ、先導する二人の後を急いで追いかける。


町の中を歩きそして外へ出てまた森に入ったが、リィナと出会った場所と比べ道は整備されており、観光客と思しき人たちやお店が立ち並んでいるのを見て、あの木は人気のスポットなんだろうなと思った。


―こんにちは、見知らぬ異世界の人。


 あともう少しで木の麓と言うところで、女性の声が聞こえてくる。辺りを見回しても此方へ声を掛けたであろう人はおらず、聞き間違いかと思うことにした。


―私の声が聞こえているのですね。私の名前はエリザベス。あなたのお名前は?


 どうやら聞き間違いではないらしい。エリザベスと名乗るからには女性だろうと近くを見るが、声を掛けてきている人は近くにはおらず、皆お店を見たり休んだり家族や仲間と話している。


ここまで非日常が延々と襲い掛かってきたことで、自分の脳みそもついに限界を迎えたのだろうか。


いや、非日常が起こっているのだからこれは普通なのではと思い直し、名前を答えれば次の反応があるかもしれないと考え、小さな声で小峠康作ですと答えてみた。


ーコーサクさんとお呼びしても宜しいですか?


 あんな小さな声でも聞こえたようだ。普通のトーンでどうぞと答えてしまい、二人にも聞こえこちらを見たので愛想笑いをして誤魔化す。


怪奇現象の類なのかと内心肝を冷やしつつ、可笑しくなったと思われないように天気の話題をしながら歩き、しばらく道なりに進んでいくとついに目的地である木の麓に到着する。


木の周りには余計な物も者もなく、近くを流れる水の音と葉が揺れる音のみが聞こえる、神聖さを感じる場所だった。


「さぁここが我々の信仰対象でもあり、国の守り神でもあるマナの木だ」


 木を信仰し国の神として崇めるなんて、リィナたちの両親を暗殺した者を罰しないダメな国ではあるが、生きてる人間や見たこともない神を拝まないだけマシだなと思った。


守り神であることは理解したものの、それと自分の言動に驚かなかった理由がつながらない。説明を求めたところ


―イレイズ、リィナ、私とコーサクさんを二人きりにしてください。


「わかりました。ではコーイチ殿、我々は近くに控えているのでまた後で」

「ではコーサクさん失礼します」


 突然先ほどの声がまた聞こえる。声は自分だけに聞こえるのでなく、どうやらイレイズさんもリィナも聞こえるようで返事をし去っていく。


いや聞こえたなら聞こえてるって言ってくれよ、と心の中で憤りながら二人を見送る。


―改めましてコーサクさん、私の名前はエリザベス。マナの木の生贄にされたエルフです。


 生贄と言う言葉を聞き少し戸惑った後で怒りが込み上げてきた。声からしてリィナよりも若く聞こえるのに、生贄にされたなんて異世界であっても許されることじゃない。


イレイズさんやリィナの両親を殺した者たちを許すだけでなく、少女を生贄にするような木を崇めるなんてどういう国だ。


―ふふふ、私のために怒ってくれてありがとうコーサクさん。ですが私の悲しみはあなたと似た名前の人が癒してくれましたし、こう見えて一度は人に戻れたんですよ?


 思考を読まれているらしく憤ったことに感謝されたが、一度は人に戻れたとか俺と似た名前とか、色々気になることがありすぎて混乱する。


―早速ですがあなたの疑問にお答えしましょう。少し目を閉じて頂けますか?


 エリザベスと名乗る声に言われるまま目を閉じた。すると突然頭の中に映像が浮かんできて、一人の自分と近い年齢に見えるおじさんが映し出された。


彼の名はコーイチ。突然町はずれの森に現れた彼は、近くの町に移動し冒険者となる。


小さな王女を守り家に帰すために奮闘し、事を成し遂げ英雄として祭り上げられた。


再び小さな王女は誘拐され、取り戻すために魔神ラヴァルと対決し勝利する。紆余曲折を経て彼はマナの木を中心とした国を築き、それがここ不屈の国(インダミタブル)となった。


見たところ自分と同じ一般人ぽいのに、国を作り人々を養うなんて親方よりも凄い男だなと感心する。


―なんとなく名前で気付いたかもしれませんが、彼はあなたと同じように世界を移動してきた、異世界出身だったのです。コーイチはいつも誰かのために無茶をする、不器用な人でした。そんな彼だからこそ、生贄にされた私だけでなく、多くの人の心が救われたのでしょうね。


映像が終わり真っ暗になったところで、エリザベスからそう言われた。確かに思い返せば他の人たちはなじみがなかったものの、コーイチの顔の作りは自分が生まれ育った日本人の顔立ちである。


まるで物語のような偉業を成し遂げた彼の正体が、異世界からこの世界に迷い込んだ同じ日本人だった、そう知って驚かずにはいられず言葉を失う。


イレイズさんたちが驚かなかったのも、自分たちの先祖がそうだったからだと言われれば納得する。


同じ日本人で異世界転生して人々を救った男の子孫なら、俺が守るのも運命なのかもしれないなと思った。



5話までお読みいただきありがとうございます。

康作がここに導かれた意味、そして前作との繋がりが明かされました。

泥臭く生き抜いてきたおじさんが、英雄の血筋をどう守り抜くのか。第6話からも応援いただけると嬉しいです!

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