スキル強制終了!? 現れた領主はリィナの兄?
都市としてもアースの町は大きいようで人がたくさん行き交う。
人々は見覚えのある人間以外に獣が二足歩行していたり、耳の尖った種族や背の小さな口髭顎髭を生やした種族など、ファンタジー映画さながらの光景が広がっている。
彼らの身に付けている物も明らかに近代的な物はないが、先ほどの髭もじゃの人は背中に刃にカバーをかぶせた斧、腰にトンカチやカンナやミノなどをぶら下げていた。
パッと見ただけでも年季の入った道具を丁寧に扱っているのが分かり、ひょっとしたら職人かもと思い話しかけたくなるが堪える。
これが夢だとしたら自分の想像力も大したものだな、と感激していると
「リィナ様!」
前方から群衆を掻き分けてリィナの前に兵士たちが現れた。ただならぬ雰囲気を醸し出しており、それを感じた人々は波が引くように遠ざかる。
様付しているから大丈夫だとは思うが、何かあっては大変なので彼女の前に出た。
「なんだ貴様……! お前たち、コイツを遠ざけろ!」
どうやら大丈夫ではないらしい。こちらを確認することもなく武力行使に出るような連中が、彼女にとって良き人々とは思えなかった。
何より俺が前に出ただけで血相を変えるくらいなら、森の中にリィナが一人でいたこと自体が可笑しいのだ。
訓練されたプロ四人を相手にどこまでやれるか分からないが、こちらも酷い環境を数十年耐え抜いて働いてきたので根性なら負けない。
何より彼女を守ると決めたからには、相手がプロで強敵であろうとも下がるなど選択肢になかった。
今はこの体だけが頼りだがすべて出し切って守り抜く!
―不屈の完遂者Lv.2発動
また抑揚のない声が聞こえた瞬間、キィィンという強い耳鳴りが聞こえ体が熱くなり、兵士たちがこれからどう動くかを予測した動きをする幻が見える。
俺の覚悟に反応して発動するのかもしれないなと思いつつ、襲い来る兵士たちを一人避け二人避け、三人目の兵士の攻撃を避けながら脛を蹴り、四人目の兵士には避けながら腹へ蹴りを入れた。
今のところは問題ないがいつ体に異変が起きてもおかしくないので、急いで避けただけの二人に攻撃を仕掛ける。
予測の幻は続けて出ており、余裕を持って避けながら一人目は顔面、二人目は腹へ攻撃を加えて倒した。
「ぐあっ……!」
パリーンというガラスが砕ける音が聞こえたと同時に、残っていた四つの幻も砕ける。
不思議な現象が終わったのかとほっとする間もなく、こちらの体の熱が痛みへ変わりすぐにでも座りたかったが、自分が倒れたら誰が彼女を守るのかと思い踏ん張った。
前回とは違う終わり方と後遺症に驚くも、今は彼女を守ることが先決なのでどうしたいか聞いたところ、彼女は倒れた兵士たちに近づいていた。
「兵士の人たちは無事ですから安心してください! それにしてもやっぱりコーサクさんは凄いです!」
そう言ってこちらに来て手を握り飛び跳ねる。少女らしい可愛い動きだなと一瞬和んだが直ぐに我に返り、逃げるか留まるかどうすると再度問いかけた。
「逃げる必要などないよコーサク殿、だったか? 非礼はすべてこちらにある」
声のした方へ視線を向けようとしたが、いつの間にか兵士たちに周りを囲まれ驚き、リィナに手を放して離れないでくれと指示を出した。
発動中だったとはいえこの動きに気付かなかったのはなぜだろう。彼らの雰囲気から敵意や殺意は感じないからだろうか。
言い訳になるが今日力を得たばかりで全容を把握し切れていない。
日本でもなく相手が帯剣するような世界では、そんな甘いことを言っていてはあっというまに殺される。
自分だけが死ぬならそれでもいいが、今は守りたい人が傍にいるのだからそんな呑気ではだめだ。
「まったく呆れるな……リィナ、彼に戦う必要がないことを伝えなさい。お前は何をぼーっとしているんだ?」
正面から兵士たちが道を開けて現れたのは、他の兵士たちよりも身分が高そうな凝った装飾白い鎧を着た、金髪のイケメンだった。
身分が高そうなのはそれだけでもわかるが、纏っている雰囲気からして只者ではないと分かる。
数々の現場を仕切りながら渡り歩き、畏れられた西島親方くらい有無を言わせぬ威圧感があり、逃げても無駄な努力になると直感した。
万事休すかと思ったものの、すぐにリィナと呼び捨てしたことに気付き彼女を見たところ
「コーサクさん、こちら私の兄のイレイズです。アースの町を中心とした領土の領主をしております」
そう笑顔でこちらの顔を横から覗き込みながら紹介してくれる。事情が分からずに困惑して呆然としているこちらに対し
「……なんというかコーサク殿、申し訳ない。妹だけでなく我が兵に落ち度があった。あなたは最初から戦う必要はなかったと言うのに……。リィナもお前たちも後で説教だ、覚悟しておけ!」
イレイズさんは申し訳なさそうな顔をしながら一礼し、顔を上げた後で周囲の兵士たちを見ながらそう言った。
彼女の兄は人が良さそうな人物だと感じ、これならリィナに身の危険はなさそうだと理解しほっとした途端、力が抜けて膝から崩れ落ちる。
「コーサクさん!?」
「やはりな。あんな特殊技能を使用すればこうもなろう。誰か担架を持ってきてくれ」
薄れゆく意識の中でイレイズさんの言葉を聞き、彼がなぜ俺の力を知っているのか問いたかったが、残念ながら声が出ず瞼が落ちて意識が遠のいていった。




