二十六話 おじさん、選抜戦に挑む㉔
チサトの首が断たれた瞬間、Q104の【ユニークスキル】の能力は欠壊する。
3人で1つの【ユニークスキル】、故に1人が欠ければ、その能力を保つことが出来ない。
「蘆原勇剣選手! 有馬チサトを落とし、ここに来て初のポイント獲得だ! 所属パーティに2ポイント! 個人に5ポイント!!!!」
実況の声が視聴者に情報を伝え、それと同時、腕を失ったアルファはモナカだけでも生かそうと声を出そうとした瞬間、アルファの顔は一瞬にして、棒の様な物で潰される。
「出る幕はもう無いよ! 君達は!」
その咆哮と共に訪れた目の前に映る光景に理解が出来ず、モナカは唖然とした。
「アルファ」
アルファの顔を潰したのは李 刃。
だが、思考が停止したモナカ、その首を勇剣は容赦無く断った。
モナカの首が地面に落ち、雪の舞う世界で、天使達の歌が止んだ。
「奇襲! 猛襲! 驚愕の展開! 李 刃 選手がアルファ選手を落とし、蘆原勇剣選手も同様にモナカ選手を落とした! ここに怒涛のポイント変動だ! お互いの所属パーティに2ポイント! 個人に5ポイント!!!!」
視聴者達はその実況によって盛り上がり、戦いは最高潮を迎えようとする。
天使が堕ちた舞台に集うは武人と咎人。
マナカはQ104《モンナンジュ》との撃ち合いを終えたことで、勇剣の下に現れ、刃を睨みつける。
視線の先に映る武人、それは明らかに先程とはまるで違い、肉体の色が人間の肌色に分類することが出来ない、ドス黒い赤へと変色しており、その背後には9つの光が彼を照らしていた。
「さぁ! 勇剣! 構えろよ! 俺とお前! 全力で、死合おう!」
李 刃の持つ【ユニークスキル】、十命・壊陣。
刃は自身の肉体に【魔力】を、氣という形で貯めることが出来る。最大ストック数は10個で、それら全てを一気に解放させることで刃の肉体は修羅と化す。
10の光は彼の【魔力】のストックであり、それを全て消化し切る、若しくは肉体の限界を超えるまで刃は止まることはない。
一方で勇剣とマナカとの接続時間は残り3分を切っている。
勇剣とマナカの接続が切れるのが先か、刃の【ユニークスキル】が尽きるのが先か。
両者共に限界が近いことを理解し、それでいて同じ想いを秘めていた。
それは1点でも多く点を取ること。
その為には出し惜しみはしない。
互いの張り詰めた緊張の中、臆することなく踏み入れたのは…。
時間の限界が迫る勇剣であった。
両手に握る双剣を構え、勇剣とマナカは刃へと挑む。
彼らが間合いに入ると同時、刃の肉体が躍動する。
マナカに向けて、目にも止まらぬ速度で、自身の得物である龍真鉄棍を投げつけ、勇剣に対し、不可避の速攻を放った。
マナカにぶつけられた龍真鉄棍、それは彼女の太い腕に当たると同時、大きな爆発を起こした。
「龍真鉄棍、豪華炎舞!」
それは刃の【魔力】の光の1つが消える代わりに、極限にまで爆発力を高めた一投。
爆ぜた龍真鉄棍が地面に落ちると煙が明け、その結果が露わになる。
マナカの両腕が木っ端微塵に破壊されており、彼女を支えていた腕が消え、地面へと倒れた。
「マナカ!」
刃の速攻を弾いたと同時に、最愛の存在の腕が吹き飛び、勇剣は初めて声を上げる。
「君の相手は俺だろう!!!!」
だが、その動揺を突き、刃は大きな音を立てて、踏み込み、勇剣のみぞおちの手前で拳を止めた。
「刃剛、一騎闘万!!!!」
拳を動かさず、ぶつけるのは極限までに圧縮された【魔力】。
【魔力】により、空間が歪み、捩れを生んだと思いきや、次の瞬間、勇剣の肉体がビル群を駆け抜ける。
みぞおちの付近を【魔力】によって防いだにも関わらず、勇剣の体は幾つものビルを貫き、10を超えた辺りで漸く打ち付けられた。
刃の扱う刃剛流十極拳の真髄、それは相手を確実に仕留める破壊の一撃。
極限までに圧縮された【魔力】から放たれる発勁を使った必殺、それこそが刃剛、一騎闘万、李 刃の極技の1つである。
(なんて、強さ。マナカを出したにも関わらず、この始末、不甲斐ない、な)
そんな事を考えながら、勇剣はビルの中で立ち上がる。
「勇剣! 大丈夫?!」
いつの間にか、マナカが横に現れていた。彼女の破壊されていた腕は治りきっており、それを見て、勇剣は自分がまだ、非情になりきれないことに疎ましくなる。
(僕はいつまで彼女が【魔力】の塊であることを理解しないんだろう。あの姿の彼女は怪物。彼女はもうとっくに死んでて、とっくに別の存在だというのに)
視線の先に映るのは異形とかしたマナカ。
それと共に生きる自分。
罪と罰、それが自分に起因するものであることを勇剣は理解している。
だが、その理解が心まで追いつかない。
「勇剣? 大丈夫? 痛い?」
マナカは心配そうに勇剣を見つめて来る。
その視線を受ける資格は本来は自分にないことも、あってはならないことも理解してる。
「ああ、大丈夫だよ、マナカ。僕は君を何としても取り戻す。そのために、戦ってるんだから」
マナカの問いに無理矢理答え、勇剣は自分がやるべき事を思い出させ奮い立たせた。
マナカと再び出会い、巡り会うために必要な今を勝ち取る。
ドォンと大きな音を立てて、それが刃が距離を詰めてきた事と理解した。
「マナカ、とっておき」
「分かった! アレだね! 勇剣!」
勇剣の命に応じて、マナカは自身の影に手を伸ばし、その中から一本の刀を取り出した。
勇剣はそれの柄を握りしめ、鞘からその刀身を刃へと向ける。
「さぁ! まだまだ! 行こう、か!」
叫びながら空を浮遊【スキル】すら使わずに飛びまう刃はその腕に再び背中の光の1つを纏わせ、技を放つ。
「刃剛、破壊乃掌!!!!」
ビルごと勇剣を押し潰そうと放たれるのは【魔力】によって生み出された掌。
それに対して、勇剣はマナカの両腕で防御を取ってもらい、防ぎ切ると同時に彼女に命じた。
「マナカ、飛ばして」
その言葉に対して、マナカは勇剣をボールを投げる様に勢い良く、空に浮かぶ刃に目掛けて放り飛ばす。
一気に距離を詰める勇剣は、両手に握っていた得物の内、1つを刃へと投げつけた。
刃はそれ避け、再び背中の残っていた4つのうち3つを拳に宿し、迫り来る勇剣をその一撃を持ってトドメを刺そうとする。
「刃剛、一騎闘万!!!!」
まだまだ、遊び足りない。
だが、今ここで決着はつけたい。
二律背反な思いを持ちながら、刃は勇剣へと発勁を用いた一撃を放つ。
「滅しろ、殲滅大君」
勇剣を追い込んだ一撃に対して、彼はマナカから受け取った真っ白な刀身をした刀を向けた。
その一振りは、勇剣が最初に生み出し、マナカの奥底に眠らせていた深奥。
殲滅のアカシャ、かつての第六天魔王と呼ばれた凡ゆる【魔力】を滅する【魔王】の【権能】が込められた勇剣の秘剣。
一騎闘万の【魔力】によって生み出された破壊の拳、それを白き刃は一瞬にして、消し去る。
そして、【魔力】によって生み出した一撃、それを滅すると同時に、とある形で跳ね返す。
「殲滅の陽光」
その一言の後、李 刃の肉体を彼の【魔力】に勇剣の【魔力】を上乗せさせられた【魔王】の焔が焼いた。
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