二十七話 おじさん、選抜戦に挑む㉕
「決着! 決着だぁぁぁぁぁぁぁ!!!! 蘆原勇剣選手! 激闘の第八試合を勝ち抜き、ポイント獲」
「いや、まだだ」
カナが勇剣の勝ちを実況しようとした瞬間、それをアルベールが静止する。
カナは勇剣の勝利を確定したと思い込んでいた。
それもそのはず、勇剣が放った殲滅の陽光、その光を見れば誰もそう思ってしまうのも無理もない。
巨大な光の柱が刃を容赦無く包み込み、その一切の抵抗を許さずに燃やし尽くした。
そうカメラには映っていたから。
常識外れの戦闘センスと並外れた死への嗅覚、それらが見せた戦いへの渇望が刃の肉体を無意識の内に動かしていたことを。
カメラ越しで気付けたのはアルベールを含む数人のみ。
「勇剣ィィィィィ!!!!」
刃の背後に浮かぶ光の玉の数が1つとなっており、最後の1つを自身の腕の付け根に纏わせる。
【魔力】を殲滅させる筈の焔を受けながらも刃という常識を超えた怪物は、崩壊しかけた擬似身体に、2つ残っていた背中の光、それを内側から流し込み、構築し続け、それを乗り越え、今に至る。
この間、凡そ3秒にも満たないにも関わらず、刃は勇剣の【魔具】、殲滅大君の特性を理解して、拳より【魔力】を放つのではなく、加速させ、物理的にその肉体を撃ち貫くことにシフトさせていた。
「勇剣!!!!」
それを目撃したマナカは彼を助けるために、体に仕舞っておいた翼を広げ、飛翔を試みる。
「【合成】、鉄魔法IV× 鎖IV」
その言葉が唱えられると同時、地面より鉄で出来た鎖が所々より現れ、マナカの肉体を縛りつけた。
「なんだぁ! コレェ!」
怒りで声を上げるマナカの前に立っていたのは李 刃パーティの一員、李 白。
彼女の放った【スキル】鎖は敵を拘束するために【魔力】の鎖を形成する物。以前は拘束に使うにしては壊れやすく、使い物にならないと言われていたが【合成】が生まれたことでその評価は一転、鎖を場所構わず召喚し、相手を拘束することが出来るようになったおかげで評価を上げた【スキル】である。
幾十重にも体に巻き付いた鎖をマナカは壊そうとするが何処から兎も角生えてくる鎖にイライラして、その術者を倒してしまうために口に【魔力】の光を集めた。
その光を前にして、白は避けようとせず、ただ、その場で彼女を止めるためだけに徹していた。
「退け、女ぁ!」
口から放たれる【魔力】の光線、それは白の肉体を貫き、破壊する。
ただ、肉体が崩壊する最中、マナカを前にして、白は口を動かした。
「この数秒、コレを稼ぐのが私の役目」
それを耳にした時、マナカは勇剣の方へと目を向ける。
白が欲しかったのはマナカを止めるだけの時間。
刃と勇剣の戦いが誰にも邪魔されない様にするための少しの間。
腕に載せた【魔力】を加速装置の様に噴出させ、刃の拳が勇剣の顔を貫こうと放たれていた。
「コレで! 終いダァ!!!!」
刃の咆哮が鳴り響き、勝利への凱旋を果たすために前進する。
そんな刃に対して、勇剣は腕を前にして、何かを掴む手の素振りを取った。
(何だ? 何故、防御を取らない? 何かを狙っている? 何をする!?)
刃は思考をやめない。
だが、既に放った拳を止める事はできず、ただ、前に進むだけ。
「堕とせ、竜墜」
勇剣の一言の後、刃の拳が彼の頭を貫く。
筈であった。
刃の腕、それは勇剣に届かず、空から地面をへと落下した。
そして、勇剣の腕に握られていたのは殲滅大君を使う直前、刃に投げつけていた得物。
その名を竜墜。
【魔力】をジェット噴射のの様にして、飛び回り、ある程度の自由操作の可能な勇剣の生み出した傑作【魔具】である。
片腕を失い、自分の最後の一撃をも防がれた。
そんな刃が見せたのはあまりにも満ち足りた笑顔であった。
「謝謝、勇剣! 満足だ!」
その笑顔に対して、勇剣も少しだけ笑みを浮かべ、殲滅大君によって、刃の首を断ち切った。
「完全、決着!!!! 激闘の末、雪積もるビル街にて、最後に立ったのはA級最強【冒険者】!!!! その強さの厚みを見せつけた!!!! そしてそして! 蘆原パーティのみの生存のため、試合終了!!!! 蘆原選手の所属パーティに4ポイント! 個人に10ポイント!!!! そして、蘆原パーティは2人が生存のため所属パーティに2点追加です! 第八試合の結果はこの通りになります!」
【魔王】討伐選抜戦第八試合
一位 蘆原パーティ 10ポイント
二位 李パーティ 6ポイント
三位 有馬パーティ 4ポイント
個人
一位 蘆原勇剣 20ポイント
二位 李 刃 5ポイント
二位 有栖坂アルファ 5ポイント
ニ位 有馬チサト 5ポイント
ニ位 李 白 5ポイント
ニ位 李 黒 5ポイント
映し出された集計にカナは興奮気味に声を上げた。
「またしても勇剣選手が個人ランキングのトップを掻っ攫う! いやー! アルベールさん! 如何でしたか! 今回の試合! 私はコレまでで一番興奮しております!」
鼻息荒く喋るカナに対して、アルベールは逆に冷静に答えた。
「うん、凄い試合だった。ただ、コレまで以上に個が一番強調された試合でもあったかな」
「確かに! 勇剣選手が見せた、あの【魔力】の塊が形を成して生み出した怪物、アレが出てきてから試合の空気を一段と変えて、一際、強大な個が強調されたそんな印象があります!」
「ただ、僕的には前の試合の組み立ての方が好きだったかな。選抜戦という括りでパーティを組み、そのパーティ同士が様々な戦略を用いて切り合い、撃ち合い、鎬を削る。集団戦の醍醐味があったしね。でも、今回の試合を否定する訳じゃない。究極までの個が見せた試合は見てて一点だけを見つめるから他の情報が減って画面に集中できた。特に、最後の蘆原選手と李選手の打つかり合いは【魔王】との戦いすらも劣らない見応えがあったしね。単純に好みの問題だね」
アルベールの意見にうんうんと大きく頷き、同意をするとカナは元気良く口を開く。
「アルベールさんの意見もまた然り! 私の意見もまた然り! 多くの意見、それらが生まれた時点でこの試合は最高の盛り上がりを見せたということです! それではこれを持ちまして、本日の【配信】は終了とさせていただきます! 皆様、高評価! 感想! ガンガンお待ちしております! 実況の早乙女カナと!」
「アルベール・ペンドラゴン」
「「2人でお送りしました」!!!!」
彼らの言葉で締めくくり、画面は暗転すると討伐選抜戦の【配信】終了となる。
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