二十三話 おじさん、選抜戦に挑む㉑
雪景色は一転し、Q104の、光り輝くLIVE会場と化した。
何処からか流れてくる派手な音楽に合わせて歌を歌い、キレのあるダンスを披露する。
「上げてけよ! 信仰者達! これからだぞー!」
チサトの声に呼応して、作られた土人形達がサイリウムを振り、それに合わせて、彼女達が纏う【魔力】の総量はドンドンと上がって行く。
「良いね! ぶち上がるじゃないか!」
そんな彼女達を前にして、一向に闘争心が衰えず、むしろ燃え滾っていた刃は手に握る【魔具】龍真鉄棍を片腕で持ち、投擲の構えを取る。
「龍真鉄棍、炎舞!」
【魔具】龍真鉄棍は6つの形態を持つ刃の特注の得物。
炎舞は投擲と共に、龍真鉄棍に【魔力】を吸わせることで、それを炎に変化し、相手へとぶつける。
刃はそれをQ104ではなくて、その手前でサイリウムを振るう土人形達へと放った。
炎を帯び、それは龍の形となり、土人形を破壊すると刃は一気にQ104の下へ距離を詰める。
Q104の【ユニークスキル】のギミック、刃はそれを何となく理解しており、土人形の破壊はその一環。
信仰者と呼ばれる存在の発する熱が失くなれば、彼女達の【魔力】も落ちる、そう踏んだ。
「君達だけの会場じゃあ、ないんでね! 吹き飛ばさせてもらうよ!」
刃は舞台に上がり、Q104の3人の内、真ん中にいたチサト目掛けて技を披露する。
「刃剛! 鉄壊山!」
刃の生み出した必殺の1つ、【魔力】を込めた 鉄山靠。
背中の一箇所に【魔力】を集め、それを相手にぶつかる直前に爆発させる八極拳の奥義である背中を使った体当たり。
チサトにそれが襲い掛かるも彼女はそれに対して、むしろ真っ向から受けて立とうと背を向けた。
「僕の 鉄山靠、 鉄山靠で挑むのかい?! なんて、なんて、最高なんだ!」
「うるさいなぁー! アイドルのLIVE中に舞台に上がってくるな!」
刃が放とうとする 鉄山靠とは違って、チサトは見様見真似であり、背中に【魔力】を一点集中させるのではなく、全身に莫大な量をまとわせて放つ 鉄山靠。
互いにぶつかり合うと勇剣同様に【魔力】同士が鬩ぎ合う。
「いいね! いいね!!!! 君! 僕、君のファンになりそう!」
「それは良かった! 応援するなら、私達に譲りなさい!」
バキバキと音を立てて、互いの【魔力】で火花を散らす。
そんな彼らに向けて、勇剣は手に握っている刀に【魔力】を込めていた。
「風魔法VI」
【魔力】飛ばしの容量で鍛え上げた風の魔法を載せた斬撃を彼らに向けて飛ばす。雪を舞させ、迫り来る風の斬撃に対して、アルファが次は自分の番だと貯めていた【魔力】を拳に集めた。
「まだまだ、これからです! 私達のLIVEは!」
風の斬撃に向けて、【魔力】を帯びただけのパンチをぶつけて、相殺するとアルファはそのまま勇剣がいる方へと走り出した。
(ありゃりゃ、僕1人になっちゃった。まぁ、それがこの【ユニークスキル】の強みでもあるしね)
モナカは1人残された舞台で踊り続ける。
Q104の【ユニークスキル】である妄想多数派は3人がLIVEを盛り上がる事で生まれる熱を【魔力】に変化する能力。
その盛り上げとは、視聴者達の総意であり、コメント欄や、SNSなどでも熱は発生、それは【魔力】に変換される。
Q104が行う戦闘で盛り上がっても、踊りで盛り上がっても両方とも熱と【ユニークスキル】が認知し、それを【魔力】へと変換する。
故に、チサトとアルファが勇剣と刃と戦っていても【ユニークスキル】は継続してる。
モナカはそんな中、1人残ってダンスと歌を披露し続けた。
(ぶっちゃけ、僕は2人よりも弱い。だけど、歌と踊りは2人よりも上手い自負がある。時雨モナカは役立たずじゃない。それを証明しろ!)
踊りは徐々に加速して、激しくなるもそれでもモナカの声は一切ブレず、芯の通った歌声が5人の戦う戦場に流れた。
「モナァ! いいな! 今日、私も上がって来た!」
モナカの歌を聴き、チサトのボルテージは上がって来たのか、腰に差していたマイクを握り、それに【魔力】を込めた。
「【合成】! 火炎魔法IV×貫通弾!」
刃に向けて、【魔力】を込めた蹴りを放ち、彼はそれを拾っておいた龍真鉄棍にて防ぐ。
そのタイミングを狙って、マイクに向けて放った言葉通りに【合成】されて生まれた炎の貫通弾が刃へと放たれた。
【魔力】をドバドバと注ぎ込んだおかげで、刃の目の前には勇剣が放ったよりも遥かに大きい火球が迫っており、彼はそれを見て、笑顔をこぼす。
「うーん! 上手いな! 崩し方!」
刃は称賛はするものの、それを撃ち落とすために龍真鉄棍を振り回し、その得物の姿を変化させた。
龍真鉄棍は三節棍に変化する。
そして、それを振り回しながらチサトが放った弾丸へと勝負に挑む。
「龍真鉄棍、水宴!」
振り回した龍真鉄棍の先に水が浮き始め、炎舞同様に龍の形となり、それを刃は勢いよく打つけた。
蒸発音が鳴り響く中、一方でアルファと勇剣の戦闘も加速していた。
アルファは両手に握る手斧を振り回し、それらには莫大な【魔力】を込めている。振り回す度にアスファルトを抉り、勇剣ですら、それを受ければ不味いと感じるほど。
「逃しま、せん!」
避けてばかりの勇剣にヘキヘキしたのか、アルファはアスファルトに手斧を突き刺し、それから思いっきり地面を掘り返した。
アルファの異常なまでの力強さには、獣化【スキル】の影響もある。
熊の獣化【スキル】によら、以前よりもパワフルに、そして、強靭になったアルファは正しく暴の権化と言っても差し支えない。
掘り返されたアスファルトを勇剣は手に握る得物で切り裂くと目の前には、それが生んだ死角から近づいて来たアルファの姿があった。
「くらっえ!!!!」
アルファの両腕から放たれるのは【魔力】を全力でこめた力任せの一振り。勇剣はそれを避ける事はできず、刀に【魔力】を込めて、防御を試みた。
だが、その防御虚しく、勇剣の得物は、いや、それを握っていた上腕部分毎、アルファの一撃が容赦無く破壊してしまう。
「おおっと! 蘆原選手、負傷! それと同時に、李 刃選手のメンバーである李 黒選手、李 黒選手の2人が久保パーティを全滅させた! 両選手の所属パーティに4ポイント! 個人に10ポイント!」
勇剣が負傷したと同時、4パーティの一角が落とされる。
右腕から溢れる【魔力】、それに追撃する様に無線より、更なる危機が届いた。
「まずい、勇剣! 敵集だ! すまん! 落ちる!」
声の主人は松風、そんな彼の言葉は、言い終えるよりも早く、爆発音と共に無線の連絡が途絶えてしまう。
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