二十二話 おじさん、選抜戦に挑む⑳
「勇剣、ポイント獲られた。今なら、Q104の奴らのところにドローンのマーキングは済ませてある。飛ばすか?」
松風はビルの中で、ノートPCを片手に持ちながら、ドローンで戦況を勇剣に伝えた。
無線から松風からの連絡に、勇剣は少し考える。
今、李 刃を仕留めてことを有利に運ぶか、それともQ104の3人を仕留めて点を稼ぐか。
「他の人達はどうなってますか?」
刃の猛攻に耐えながら、松風と会話を続けると飛ばしておいたドローンから敵の位置を確認する。
「うーん、そうだな。一応、可能だ。だけど、全員バラけてる。1人ずつ潰すってなら、アリだが高く付くぞ? Q104は3人で1つの戦力だから、1人獲れれば3人獲れる。どうする?」
「なら、Q104のところに飛ばして下さい」
「了解。刃から少し距離を取れ。一瞬だけで良い!」
松風の指示通り、勇剣は刃から距離を取るために手に握る刀に一気に【魔力】を込めて、それを刃目掛けて振るった。
「ワオ!」
刃の目の前に現れたのは巨大な【魔力】の斬撃でありながら、相手を容赦なく轢き潰そうとする質量。
強者でなければ踏み潰されていた。
だが、彼は強者であり、武術を極めた達人であった。
「刃剛、鉄潰!」
手に握る六角形の棒を振り回しながら、自身の【魔力】をその先に込めて、【魔力】の塊に目掛けて打つける。
次の瞬間、勇剣の放った斬撃が一撃で破壊され、刃は彼が何かをしようとしていることに気付き、距離を一気に詰めて来た。
「なぁ! 勇剣! 何する気だよ! 俺と死合うんだろう?!」
「ええ。でも、試合なんで、コレ。今はポイントが欲しいんです。また、後で会いましょう」
勇剣が言い終えると同時、松風は準備を終えたのかノートPCのenter keyを押した。
「瞬間転送」
その瞬間、勇剣の姿は消えた。
しかし、そこには刃の姿も消えていた。
2人の【冒険者】を仕留めたQ104の3人は【魔力感知】を使い、辺りに敵が居ないかを探していた。
「チサー、チサが得意なの【魔力感知】何だからちゃんと探してー」
「だぁー! モナはあれやってコレやってって何でも強請ってばかり! 少しは自分でやらんかい!」
「うえーん、チサがいじめる~。アルファちゃん、慰めて~」
チサトにちょっかいを出し、叱られたモナカはアルファに抱き付くとそん彼女をヨシヨシと頭を撫でた。
「アルファー! モナを甘やかさない!」
「ま、まぁ、2人とも落ち着こ! とりあえず、今後のプランを決めないとだし」
アルファに諭され、チサトはため息を吐く。
「はぁー、それはそうだけど! って、はぁ?! ヤ、ヤバい! 2人とも武器持って! 一気に2人飛んで来る! ココに!」
突如として、【魔力感知】に引っかかった2つの大きな気配、それの正体をチサトは一瞬で見抜き、アルファとモナカに警告した。
それを聞いた瞬間、2人は得物を握り構えると彼女達の目の前に1つのドローンが壊れ、地面に落ちた。
そして、その場からヌルリとした【魔力】が溢れ出した。
(何じゃ、ありゃ。震えが止まらん。本当に人が宿して良いのか? あの【魔力】!?)
チサトは【魔力】をよく見通せる眼を持っている。
だからこそ、捉えた勇剣の【魔力】の異常性。
チサトが目にしたのは立ち昇る【魔力】とそれが見せた色。
紫とピンク、それらが混在しながら入り混じる決して人が出せない、混沌とした【魔力】、画面越しで【魔王】を見た時に感じた恐怖することすら憚られる、そんな色がチサトには見えていた。
「アルファ、モナカ、覚悟決めろ。ココでこの人と戦って勝つぞ」
「マジ? 逃げるのは無し?」
「モナカちゃん、それは無理だ。あれは本能で分かる。逃走なんて選択肢を選んだ時点で潰される」
Q104の3人は覚悟を決めた一方、その横から突如として、勇剣に向けて、襲い掛かる存在がいた。
それは
「今のが瞬間転送か! なるほど! 結構便利だ!」
李 刃であった。
「どうして、ついて来れてるんですか?」
勇剣は襲い掛かる刃に対して、冷静に対処しながら問いかけた。
「何となくだよ! もし、僕が君の足に鎖を巻きつけられたら逃げられないんじゃないかって思ってね!」
刃は自身の手に握る得物である棒の先、それは分裂し、ヌンチャクの様になるとその鎖を勇剣の足に纏わせていた。
「すまん! 勇剣! 刃も一緒に転送しちまった!」
松風は今の状況を別のドローンから確認したのか無線から勇剣に連絡をした。
「良いです。僕がやることは変わりません。ココで全員を仕留めます」
勇剣はそう言うと刃に向かって再び斬撃を飛ばし、彼らから距離を取った。
(落ち着け、勇剣。この後、全員、僕がポイントを獲れば問題ない。なるべく手数を見せずに勝つ。やるぞ)
勇剣は呼吸を整え、改めて刀を構える。
3パーティ揃い踏みの中、最初に仕掛けたのは意外にもQ104であった。
チサトの腕にはいつの間にか、マイクが握られており、それに向かって、彼女は勇剣と刃に向かって、宣戦布告する。
「あー、私達、アンタ達に負けるつもりも、勝ち譲る気も無いから、そこんところよろしく」
「おー! チサ、大胆!」
「締まり悪くなるから、こう言う時くらい黙ってて!」
その宣戦布告に刃は嬉しくなったのか、彼もまた好敵手が増えたことに喜び、声を上げた。
「良い宣戦布告、どうもありがとう。ちゃんと受け取り、受けて立つ。さぁ、御託はそろそろ良いだろう! 始めようか!」
刃の言葉に呼応してか、三者三様、一斉に声を上げる。
「「「【ユニークスキル】、私達の最初のLIVE! 妄想多数派! 開演!!!!」」」」
「【魔具】解禁! 行くよ! 龍真鉄棍!」
「【合成】、風魔法VI × 弾丸」
1パーティは【ユニークスキル】を、1人は【魔具】を、もう1人は【合成】を使用し、その瞬間、戦場に爆発音と共に1つの光が包み込んだ。
それが収まるといつの間にか、Q104の3人の舞台が雪積もるビル街の中心に生まれていた。
「土人形V」
アルファは【スキル】を発動すると、そこから次々と土人形が生まれ始め、それらは七色に光り輝く棒、サイリウムを握りしめ、それを振るった。
そして、観客に向けて、チサトは元気よく叫んだ。
「人間のみんな~! 今日のLIVEに来てくれてありがとう!!!! それじゃあ、始めてくよ! 一曲目から!」
【ユニークスキル】、妄想多数派、Q104のチサト、モナカ、アルファ、3人が揃った時だけ発動が出来る代わりに彼女達の強さの本領。
ゴーレムの振るう一糸乱れぬ動きとそれに対して、歌と踊りを披露する3人。
そんな彼女らに向けて、勇剣は気にせずに再び【合成】で生み出した魔弾を放つ。
迫り来る巨大な魔弾を前にしても尚、3人は恐れることなく歌うことを止めず、むしろ、迫り来る弾丸にチサトは指で銃の形を作り、その引き金を弾くポーズを取った。
すると、その指先から光が放たれ、魔弾は弾け飛び、その背後にいる勇剣を飲み込んだ。
妄想多数派、それは3人がLIVEを盛り上がる事で生まれる熱を【魔力】に変化し、それを自由自在に操ることが出来る【ユニークスキル】。
「さぁ! LIVEは始まったばかり! 盛り上げてくよ!」
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