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元伝説の迷宮踏破者、今は過疎配信おじさん ――魔王が幼女に転生して来たので、再び迷宮の最深部へ  作者:
二章 おじさん、魔王に挑む

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十七話 おじさん、選抜戦に挑む⑮

 【ユニークスキル】、それは大衆からの認知により、その人間だけが持てる固有の【スキル】。


 川上春(カワカミ・シュン)は土壇場のタイミングで覚醒させ、レンジへとそれを披露する。


 完全なる偽者パーフェクト・フェイカー、それは莫大なら量の【魔力】を使うことで、相手の技術を模倣(コピー)する【ユニークスキル】。


 (シュン)の動きや、間合いの取り方、戦い方が認められ、彼ならば何でも出来る、万能であるという認知によって生まれた【ユニークスキル】であり、それを一瞬にして使い熟した。


地麝(チジャ)流居合、木枯(こが)らし」


 鞭のような居合が左腕から放たれ、それを目の前に迫っていた技を叩き込もうとする直前のレンジへとぶつけた。


(これは、ルリの技!? まさか、(シュン)の【ユニークスキル】は模倣(コピー)能力か! なら、ヤバい。今の一撃で僕から隙を作った。それを狙うなら、今、ここで来る。僕の剣が)


 およそ0.2秒の思考より弾き出された答え。


 レンジはその時、目の前に立つ男を何故か、自分と見間違えた。


 レンジ本人が知る由もなかった不明であった鬼気迫る空気と敵対者への容赦のなさ、彼の持つ圧倒的なまでの威圧感。


 完璧なまでの肋屋レンジを、川上春(カワカミ・シュン)は再現する。


「無明一刀流、(ナガレ)


 【魔具】陽炎(カゲロウ)による無明一刀流。


 それは鞘から刃を疾らせるという無明一刀流、抜刀という個を捨てたのにも関わらず、レンジの体には切り跡があった。


 速度、威力、それはまごう事なくレンジのもの。


 レンジがこれまで深い傷を負ってこなかったのには、理由がある。


 それは【魔力】の流れを読み解くことが出来る常時発動(パッシブ)の【ユニークスキル】、鷹の眼のおかげであった。


 鷹の眼は、レンジがこれまで経験が認められて生まれた【ユニークスキル】であり、【魔力】の流れや、起こり、萎み方などをハッキリと捉えることが可能であり、それによって彼は相手の攻撃の先読みなどが出来た。


 たが、それすらも己の剣は否定する。

 自身の師である肋屋イザナ、彼からしかその剣で傷をつけられことはなく、久しく感じていなかった感覚を味わうことになった。


(もの凄い完成度だ。模倣(コピー)なんてもんじゃない。あれは僕の剣。受けてみて分かったけど、理不尽な剣だな、想像より、も!)


 これまでにない程の危機感がレンジの脳裏を過ぎるとすぐに(シュン)から遠ざかり、距離を取ろうとする。だが、そんなレンジを(シュン)に対してら容赦無く襲いかかる。


「無明一刀流、(セイ)


 刃の無い逆手の抜刀から放たれる不可視の速攻。


 自分の剣、故にその間合いの詰め方も、今が一番敵を切るのに最適な瞬間だというのも全て知っていたからこそ、何とか体が反応し、(シュン)の放つ無明一刀流の一撃に刃をぶつけ、死をギリギリで免れた。


 【魔力】によって生み出された変幻自在の刃と黒鉄の刃が重なり合い、火花を散らす。


 そして、彼らは睨み合い、互いに最高の間合い、必殺の距離にて、技を撃つ。


「「無明一刀流、(セイ)」」


「「無明一刀流、(ナガレ)」」


「「無明一刀流、(リン)」」


「「|無明一刀流、(カラス)」」


 お互いに譲れない物、それを持ってぶつけ合う刃の応酬。


 目にも止まらぬ技の連続で、刃は重なる毎に研ぎ澄まされ、本物はより繊細に、模倣(コピー)はより洗練され、悪天候を物ともせずに打ち合い続けた。


 負傷はレンジの方が大きく、ルリから受けた背中の切り傷と(シュン)から受けた無明一刀流、そこから【魔力】が徐々に漏れ出て行く。


 長引けば不利になるのは自分であるがそれでも完璧なまでの無明一刀流の模倣(コピー)を前にして、なかなかに攻め切れない状況が続いた。


 そんな中、川上春(カワカミ・シュン)が仕掛けた。


 これ以上の拮抗は、(シュン)も同様に危険であり、【魔力】が切れれば技術身体が強制的に崩壊を始め、戦闘不能となってしまう。


 だからこそ、今、ここで決めることを決めた。


 かつての自分であれば無い、覚悟を決めるという言葉が似合う行動であり、


 レンジと戦い方た同様に、彼の体目掛けて、強烈な蹴りを入れると左腕より、再びルリの居合を放つ。


地麝(チジャ)流居合、花信風(カシンフウ)!」


 伸びる斬撃ではなく、それに合わせて載る風魔法(ウィンド)をぶつけ、更にレンジから距離を取る。そして、(シュン)は右手で、陽炎(カゲロウ)を握り、深呼吸をしながら無明一刀流の構えを取った。


 その美しい所作から決着を付けようと言う意志を感じ取るとレンジもまた同様に、彼の挑戦を受けて立とうと鞘を前に握り締め、同様の構えを取る。


 そんな決着間際の河川敷付近にて、那須野・アルディーニと犬の耳を生やした鈴木・ジェームズ・ジェパードが対峙していた。


 (ミツル)がやられた直後、ジェームズは到着すると穴だらけにされた彼を見るや否や、激昂し、アルディーニへと挑んだ。


 結果として、今、ジェームズはアルディーニを追い込んでいた。


 ジェームズの装備は2丁のショットガンと【スキル】防壁(ウォール)を使った特攻戦法であり、アルディーニはそれに対して、冷静に彼に対処した。


 筈であった。


「うおおおおお!!!!」


 ショットガンを構え、その引き金を何度も引き続ける。


 【魔力】を用いた連続射撃、アルディーニはそれを魔弾で撃ち落とし、逆に彼に向けて攻勢に出た。


防御Vウォール・クインタプル!」


 防御(ウォール)、それは防御のための【スキル】であり、【魔力】によって防御壁を張る物である。


 形は変幻自在であるが全身を覆ったりすると壁が破られやすくなるため、基本的に一点集中させることで使用する事が多い。だが、ピンポイントで攻撃を防御するのは難しく、最近は移動系【スキル】の活躍により、あまり使われなくなっている【スキル】であった。


 そんな不安定な【スキル】を使いこなし、ジェームズはアルディーニの魔弾の着弾点を全て予想したかの様に防御(ガード)した。


「なっ!?」


「吹き飛べ!」


 彼の不得手な間合いに入り込み、ショットガンをぶち込み、彼の右肩を消し飛ばすことに成功する。


 予想外の連続であるがアルディーニは動揺せずに、片腕で作っていた魔弾をジェームズにぶつけ、距離を取った。


(この人、データで見た時よりもよっぽどやりにくいな。【配信】見て感じていたこの人の山勘の当たりの高さは想像以上。俺の不利な間合いまで無理矢理かっぽじって来るなんてどんな脳筋戦法だよ)


 アルディーニは右肩が弾かれたことで右腕が使い物になっており、その箇所から【魔力】が溢れ出ていた。


「良いね。俺のみたい英雄が一杯だ」


 逆境の中であるにも関わらず、アルディーニは笑った。


 片腕を失い、得意の魔弾の【合成(コンポージョン)】も不可能になってしまった状況でも尚、彼は自分のスタンスを変えない。


「ジェームズさん、強いな、アンタ」


 嬉しそうに呟くとアルディーニは残った左腕で自身の残りの【魔力】ありったけを使い魔弾を生み出した。


「これで倒せなきゃアンタの勝ちだ! 行くぜ! 弾丸(バレット)!」


 雨が降り注ぐ様に放たれるアルディーニの魔弾。


 ジェームズはそれを前にして、自身の肉体で貫かれても問題ない場所を最初から決め、防御(ウォール)による防御(ガード)を行う。


「うおぉぉぉぉぉ!!!!」


 (シュン)に頼り切りの自分が憎かった。


 彼だがに負担を課せる自分が嫌だった。


「無理させすぎない様にしましょうよ、ジェームズさん。この前、(シュン)さん頼りになった結果、俺達を庇ったせいで(シュン)さんが早い段階で落ちちゃったんで」


 (ミツル)の言葉は深く自分に突き刺さる。


 自分が弱いから(シュン)に頼ってしまう。


 だからこそ、自分も彼に追い付かねばならないと感じた。


「俺が! アイツと並ぶんだ! ここで! やるんだ!」


 魔弾の猛襲は止まない。

 腹部は貫かれた。

 太ももは抉られた。


 それでもジェームズは前へ進んだ。

 進んで進んで進み続けた。


「すげえな、アンタ」


 そして、アルディーニの目の前に現れた。


「吹っ飛べ!」


 ジェームズはショットガン二丁を構え、その引き金を躊躇いなく引くと、その銃声が嵐の中に鳴り響くのであった。

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