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20/24

20、弱すぎる

「「「「「「!?」」」」」」


『炎舞』と人型魔族が驚き振り返って、僕とエルシー、ラグナーを見た。


「ちょ、おま、バカかおまえ、こいつは名付きだ、早く逃げろ!」

「いや、さすがにそんなわけにはいかないでしょう?」


 僕とエルシー、ラグナーは『炎舞』の闘いを、途中から見守っていた。

 さっき彼らと会った時の様子から、下手に助けに入ると、よりいっそう嫌われるような気がしたからだった。


 それにはエルシーとラグナーも同意した。

 それで隠れて見物していたのだが、『炎舞』が負けそうなので、仕方なく登場したのだ。


「先に山童を始末しとくね」

「うん、頼んだ」


 エルシーは剣を抜き、フェールとカラムを襲おうとしていた山童二匹の首を、一瞬で刎ねた。


「「ギイイィッ?……」」


 胴体から切り離された頭部が、困惑した表情で宙を舞い、地面に落ちて転がった。


「「「「「「「えっ!?」」」」」」」


 それを見た『炎舞』と人型魔族、それにラグナーが驚きの声を漏らす。


 間を置かず、エルシーが残りの二匹の首も刎ねた。

 同じように困惑顔の首が宙を舞った。


 四匹の山童の身体がドサリと地に倒れ伏した。


「……嘘でしょ?」

「あんな若い女の子が、一瞬で山童を?……」


「ふん、山童ごときを倒したからといって……」


 僕はシュグラとかなんとか名乗った人型魔族がいい終わる前に近づいて、


「『衝撃』」


 気をたっぷり練りこみ、その上に衝撃魔法を乗せた拳を叩きこんだ。


「ぶへっ!」


 犬頭が爆ぜた。

 続けて胴体を蹴り飛ばす。


 すると闇魔法が解けて、『炎舞』全員が身体を動かせるようになった。


「おい、気をつけろ、そいつはその程度じゃ死なねーぞ!」

「あ、はい。あれのことですよね、『天使の牢獄』」


 僕は右掌を西の方向へ向けた。

 すると、十五メートルほど離れた場所に光の球があらわれた。


「ぐあっ、なんだこれは!」


 そちらから悲鳴があがった。

 犬頭の魔族が光球に囚われていた。


「え、なんであそこに!?」

「まさか、こっちは偽物だったってのか?」

「傀儡魔法か、くそっ、全然気づかなかった」


 傀儡魔法には二種類ある。

 ひとや獣の死体など、生命の宿っていない肉体や人形を操るものと、生命の宿った自由意思を持つ存在を操るもののふたつだ。


 シュグラなんとかという魔族は、雑魔を自身に似せて形成し操っていたようだ。


「雑魔の発生源はその犬っころってことか?」

「犬っころではない、シュグラウスだ」


「本当に名付きなの? それにしては弱すぎると思うんだけど」


 僕がなにげなくそういうと、ラグナーと『炎舞』と皆さんの顔にまた驚きが走り抜けた。


「……弱すぎる?」

「私たちはやられる寸前だったのに……」

「おい、ユーリだったな? 助けてもらったことには感謝するが、それはおおげさだろ。外から見てたから、シュグラウスが隠れていたことに気づいただけじゃねーのか?」


 フェールの問いにどうこたえたらいいんだろう。

 僕とエルシーからしたら、なんであれに気づかないのか不思議なくらいなんだけど……。


「そうかもしれませんね」


 強すぎると思われるのを避けるため、とりあえずそういうことにしておいた。


「で、どうなのです? そいつが雑魔の発生源ってことでいいです?」

「違うと思います。こいつはただ遊びに来ただけでしょう」

「遊びに?」


「遊びにというか、騒ぎに便乗して人間をからかいにきたって感じじゃないかな。違う?」

「人間同士で争っているのを見物しに来たようなものだ」


 僕の問いに、シュグラウスは割りと素直にこたえてくれた。


「人間同士ってどういうことだ?」

「あれは人間が仕掛けたものだろうが」

「仕掛けた?」

「誰かが雑魔を無限に発生させるものを、この森のどこかに仕掛けたんだと思います」

「はぁ!? そんなものどこにもなかったぞ」


「強力な隠蔽魔法がかけられてるんでしょう。……あ、また雑魔が発生した」

「なに!? どこだ?」

「森の中心付近です。たぶん、そこに発生源があると思います」

「だったらすぐにそこへ行こう」


「はい。その前に、シュグラウス、人間が仕掛けたってのは本当?」

「俺はそう聞いた」

「誰から?」

「……」

「『天使の拘束』」


 シュグラウスを包む光の球が小さくなった。


「ぐああっ、名を知らんのだ! 俺より上位の魔族としかわからん、うぐああっ!」

「嘘は吐いてないようだね、ありがと。お礼に殺すんじゃなくて……『神霊浄化』」

「ギャァァァァ!」


 強力な神聖魔法によって、シュグラウスは光の中へ融けるように消えていった。


 それをラグナーと『炎舞』の皆さんが、また呆気にとられた様子で見ていた。


「『神霊浄化』みたいな高等魔法をあんなに簡単に……」

「こっちのエルシーって娘もとんでもなく強かったし……」

「なんなんだ、このふたりは!? 今のリウーカ学園はこんなにレベルが高かったのか?」


 僕は彼らの驚く様子に困惑し、エルシーを見た。

 エルシーも首を捻っている。


「あのー、つかぬことをお訊きしますが、『炎舞』は何級相当のパーティーなんですか?」


 冒険者は一番上の一級から一〇級までランクが分かれている。

 同様にパーティーも同じランク分けがなされており、それに応じた依頼しか受けられないようになっている。

 ちなみに一級の上に特級があり、大陸全土でも一〇人に満たない。


「二級だ」

「二級!」


 僕は素直に驚いた。


 エルシーの記憶にある二級冒険者や名付き魔族とくらべると、『炎舞』とシュグラウスはかなり弱い。

 おそらく『炎舞』は一〇〇年前なら五級以下で、シュグラウスは名が付けられるなどあり得なかったはずだ。


 魔王が封印されることによって魔族のレベルが下がり、それに伴って人間も弱くなったとか?


「エルシー、わかる?」


 それだけで僕の疑問を察したエルシーは、黙って首を横に振った。


 やっぱりわからないか……。

 ま、こういうことは後でゆっくり考えるとして、


「それじゃ早速、雑魔の元を絶ちにいきましょう」


 まずは仕事を先に片付けることにしよう。

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