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19、『炎舞』と魔族の戦闘

「どこから探すんだ? 午前中、雑魔を全部退治した後、五〇人ほどでしばらく森中を見て回ったんだが、発生源はわからなかったぞ」

「とりあえず『探知』」


 僕は探知魔法を森全域にかけた。


「午前中に退治したのに、もう何匹か発生してるみたいですね」

「『炎舞』のひとたちも遭遇したっぽいね」


「最初は魔王崇拝の連中が、どこかに発生源になる魔道具でも埋めたんじゃないかと思ったんだが、全然見つからなかったんだ。だからおそらくレベルの高い魔族の仕業だろう。高度な隠蔽魔法がかけられているのか、まだ手掛かりすらつかめない状態だ」


「魔王崇拝? それって都市伝説じゃないんですか?」


――魔王崇拝。


 この世界は邪神によって創られたもので、本物の創造主が創りたもうた世界は別にある。

 魔王は我々人類を救い出して本物の世界へ連れていくために遣わされた聖なる光の使者である。

 魔王や魔族を見て恐怖をおぼえるのは、邪神の仕業なのだ。


 とかなんとかいうのが魔王崇拝と呼ばれるもので、一種の宗教と化しているらしい。

 ただ、少なくとも僕のまわりでは魔王崇拝者に会ったなんて話はもちろん、摘発されたという噂も聞いたことがない。


「だったらいいんだがな。実際に存在するし、聖教会に摘発もされている」

「全然、噂を聞きませんけど」

「聖教会が内々に処理してるんだ。話題になることも許さないらしい」


 魔王を崇拝するなんて、変なひとたちがいるものだ。

 それはともかくとして――。


「なんだか雑魔以外の魔物もいるみたいですけど」

「なに!? どんな魔物だ?」

「そこまではわかりませんけど、でも、たいして強くはないですよ」

「ならいいが……珍しいな。雑魔に引き寄せられたか?」

「とりあえず行ってみましょう」


 森の中心を貫くように真っ直ぐ通っている道がある。

 僕たちはその道を走った。


     *


 山童やまわろは、老人の顔をした手足の長い魔物である。

 全身、枯枝のように細く、手足は異常に長い。

 普段は四足歩行だが、闘う時は状況に応じて二足立ちになる。

 手には山童の手足の骨を持ち、それを武器にして闘う。


 そして『炎舞』はその山童四体に加えて、魔法を使う人型魔族とも同時に闘っていた。


「ぬおりゃああああ!」


『炎舞』のリーダー、フェールが気合いの声と共に、山童へ斬りかかった。


 ガンッ!


 山童の持っている骨と剣のぶつかりあう音が、大きく鳴り響いた。

 すぐさま近くにいる別の山童に斬りかかる。


 同時に、剣士のカラムが別の山童二体と闘っていた。


「ちっ、やりやがる。アレシア、エリーズ!」

「わかってるわよ、『火球』」

「はいです、『神霊憑依』!」


 魔法使いのアレシアは山童の向こうにいる一体の人型魔族に火球を、巫女のエリーズは山童四体に神聖魔法を放った。


 ドゥン!


「「「「ギイイイイイッ!」」」」


 火球が人型魔族に当たって弾ける音と、白い光に包まれた山童の苦しげな叫び声が、同時に周囲を満たした。


「ふん、この程度か」


 悲鳴をあげた山童に対して、なんらダメージを受けていない様子の人型魔族がつまらなそうにいった。

 人型といっても顔は犬に近く、全身が獣毛に覆われている。

 そのため、言葉は不鮮明で聞き取りづらかった。


「あら、やっぱり言葉をしゃべるのね」


 魔族は強ければ強いほど知能が高くなる。

 ゆえに、言葉をしゃべることができるというだけで、それなりの強さを備えているという証明になっていた。


「山童の方はダメージを受けてるみたいだぜ」


 フェールはさらに攻撃を仕掛けた。

 山童は神聖魔法のダメージで動きが鈍くなっていたため、胸や腹、腕等、数カ所を斬り裂くことができた。


「グギッ、ケイイッ!」


 なおも反撃してくる山童を軽くいなし、さらに傷を与えるフェール。

 カラムも山童へ自在に攻撃を加え、ダメージを与えていく。


「そっちの魔族さえなんとかしてもらえりゃ、山童はなんとでもなるな」

「雑魚どもが……あまり調子にのるなよ。『治療』」


 山童の身体が闇に包まれたかと思うと、傷が綺麗に消え去った。


「治療魔法を使うのか。面倒くせーな。山童はいいから先にこいつを頼む!」

「まかせといて」

「まかせるです」


 アレシアとエリーズが魔法を使おうとした刹那、


「『暗転』」


 闇魔法が発動し、『炎舞』のメンバー全員が闇に包まれた。


「くっ、アレシア!」

「『光明』!」


 強烈な光を放つ光球があらわれ、闇を消し去った。


 と同時に、山童がフェールとカラムに襲い掛かった。


 ガキッ!

 ガンッ!


 ふたりはかろうじて山童の攻撃を剣で受け止めた。


「『神霊憑依』」

「『火柱』」


 エリーズとアレシアが魔法を放った。

 白い光と炎の柱が人型魔族の身体を包む。

 だが、人型魔族が無造作に手を振っただけで、光と炎柱はあっさりかき消された。


「そんな!」

「厄介過ぎるです!」


 ふたりの顔に焦りの色が浮かぶ。


「やっとわかったか、愚かな人間どもめ。魔族のちからを思い知るが、いっ……い?……」


 人型魔族は驚愕の表情を浮かべた。

 魔力のこもった短剣が、人型魔族の喉を深々と貫いていたのである。


「忍者には気をつけろって、お偉いさんに教えてもらわなかったのか?」


 忍者のキリトは短剣を引き抜き、人型魔族から大きく跳び退いた。


「ぐっ……がふっ……」


 血を吐き出す人型魔族。

 人型は弱点も人間と同じなのだ。


「トドメを頼む」

「まかせて! 『爆裂』!」


 アレシアが魔族へ向けて手をかざした。

 次の瞬間、人型魔族を中心に大きな爆発が起こった。


 煙の立ち込める中、キリトがアレシアたちの方へ移動した。


「おせーぞキリト」

「そういうな。なかなか隙を見せてくれなかったんだ」

「それより、さっさと山童を片付けちまおうぜ」

「だな」


『炎舞』が山童退治に乗り出そうとしたその時、


「『闇縛り』」


 縄状の闇が五人の身体に絡みつき、動きを封じた。


「なにっ!?」

「そんな……」

「嘘だろ?……」


 先ほど爆発四散したはずの人型魔族が立っていた。

 傷はなく、貫かれたはずの喉も元どおりになっている。


「まさか、あの程度で勝てると思っていたのか?」


 人型魔族は犬の顔に笑みを浮かべた。


「おまえ……名付きか!?」

「そのとおり、我が名はシュグラ……」


「あのー……」


 僕は盛り上がっているところを申し訳ないなと思いつつ声をかけた。


「『炎舞』の皆さん、よければお手伝いしましょうか?」

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