城からの旅人
郡都から新しい役人が村へ来た。冬の税猶予と橋の調査を担当する部署が変わったという。男は村の帳面を見て、こんな小さな場所で書類が多すぎると笑った。ベルクは顔をこわばらせたが、ミラは増えた理由を一つずつ説明した。
役人は王国の村なら同じ様式を使うべきだと言い、郡都の書式を見せた。そこには病気の家の名前を公開する欄もあった。ニーナは個人の事情を広く伝える必要がないと反対した。役人は規則だからと譲らなかったが、ユストが現在の規定を照らし合わせると、その欄は任意だと分かった。
ミラは書式そのものを拒まず、必要な数字だけ移すことにした。橋の費用については新しい役人もすぐ返事ができない。中央の判断を待つという。ベルクは落胆したが、受領印だけは押してもらった。
役人の荷車に積まれた帳面は、どれも同じ厚さだった。記録をそろえれば集計はしやすい。しかしハルヴェにはない施設の欄まで埋めるよう求められ、エダは空白でよいか尋ねた。役人は最初、ゼロと書けばよいと言ったが、ミラは『ない』ことと『数がゼロ』であることを分けたいと説明した。ユストがその違いを認め、欄外に注記することになった。小さなやり取りだったが、帳面を信じる人のために必要な一行だった。
役人は帰りの道で、橋の柵が以前より遠くへ移った理由を尋ねた。オスカーが説明すると、彼は何も言わず手帳へ書いた。
役人は帰り際、こんな記録をどの村も付ければよいと軽く言った。ミラは真似できないとは思わなかった。ただ、紙を増やせば働く人の時間が減り、守るための帳面が負担になる場合もあると感じた。役人の荷車が去った後、村の鐘はまだ修理中で、夕食の煙がいつもどおり上がっていた。




