氷の道具箱
ギルの道具箱が夜の間に凍り、金具が動かなくなった。朝一番で修理するはずの戸が直せず、借家の住人が困った。ギルは火で温めようとしたが、古い木箱まで熱くなるため、セランが止めた。
道具を乾いた場所へ移し、布でゆっくり水気を取る。作業が遅れた分、風の入る家には仮の布を張り、子どものいる家を先に回った。ミラは工具が使えない日の予定を考えたことがなかったと気づいた。
ニコの小屋には余った棚があり、ギルは道具を置かせてもらえるか相談した。ただし山羊の飼料と同じ場所では湿り気が気になる。壁に小さな仕切りを作り、持ち出す際に記録することになった。
新しく直した戸は、開け閉めすると上の方が引っ掛かった。寒さで木が縮んでいたらしい。ギルは何度も調整し、住人に実際に動かしてもらった。修理した本人だけが開けられる戸では困る。
道具を置いた棚では、ニコが山羊の飼料を運ぶ時にぶつかることが分かった。棚を少し高くするとギルは手が届きにくくなる。セランは二人の動きを見て、棚の向きを変えた。持ち上げる必要のない工具は下へ置き、尖ったものだけ蓋付きの箱へ入れた。貸し出し記録には、持ち主が分かる印も必要になった。使う人に合わせて仕事場を直すと、道具一つにも置く理由ができていった。誰が工具を使っているかを書いた札は、少し大きくした。手袋をした手でも取れるようにとニコが勧めたからだった。
夕方、道具箱の蓋が軽く開いた。ミラは中の金具を見つめ、仕事をする人だけでなく、道具にも休む場所が必要だと知った。冬は人の手を冷やすだけではなかった。




