炊き出しの列
秋の市から戻った二人の旅人が、食事を一日取っていないと訴えた。サラは小鍋を分けようとしたが、ちょうど仕事帰りの村人も集まり、列の先が分からなくなった。子どもが押され、熱い椀が落ちそうになった。
ミラは列を長くするのでなく、食事を渡す場所を二つに分けた。歩きにくい人には席まで運び、持ち帰れる人には蓋付きの器を渡す。サラは手伝いを募るが、調理を知らない人へ熱い鍋を任せなかった。
旅人の一人は、施しを受けることを恥じた。ベルクは仕事が見つかれば返せばよいと話しかけたが、ミラは返済を条件にしない方がいいと言った。食べて休んだ後で、何をしたいか本人に聞けばよい。今は空腹で考えがまとまらない。
翌日、旅人は出発前に木の器を洗った。もう一人は足を痛め、数日滞在することになった。宿を借りる費用と共同の食料は混ぜて記録せず、村の誰にも説明できるようにした。食事を届ける役も毎日同じ人にならないよう交代する。
鍋を分けると、器の返却先も二つになった。サラは洗う桶を一つしか用意しておらず、器が積もり始める。リネは針仕事の手を休めて数を数え、食べ終えた人に返却場所を教えた。熱い汁を運ぶ役には背の高い者だけを選ぶのでなく、歩きやすい道を知る人を交えた。旅人は村の者が皆親切だと思ったが、サラは親切だけでは鍋を洗いきれないと笑った。明日の当番を決める声が夕暮れまで続いた。
広場から列が消え、床にこぼれた汁をルークが拭いた。ミラは空になった鍋を見て、足りなかったのは麦だけではなかったと知った。手渡す場所、受け取る時間、人の立つ幅まで、誰かを守る仕組みの一部だった。




