11英雄
あれから何年もの月日が流れた。
すっかり隠居したオルトリンデは、のどかな村の小高い丘の上に住んでいた。
オルトリンデの家の前に、掃除をしている若い男性がいる。
ミリアリアが魔法で浮遊する丸い板の上にのって、丘を上がってくる。
「あ、ミリーさん」
若い男がミリアリアに手を振る。
「よう、弟子のローディくん、励んでるね〜」
ミリアリアも手を振り返す。
「更に機械っぽい見た目になりましたね」
「う〜ん、暗中模索でね、どれが一番格好いいかなぁってね」
「そんな技術、公表したら世の中ひっくり返りますよ」
「オルトリンデは?」
「今日は調子がいいみたいです」
「そう、よかった」
ミリアリアは家のドアを開けた。
「やっぱり、ミリアリアか・・・」
すっかりやせ細って、シワだらけのオルトリンデが、ベッドに横たわっていた。
「いらっしゃい」
「調子良さそうだな」
ミリアリアはベッドの横にある椅子に腰掛けた。
「医者にはちゃんと診てもらってるのか?」
「ローディがうるさいからね、薬ばかりで嫌なんだけど」
「・・・そろそろ戻るのか?元の世界に」
「そう・・・ね、魔力も日に日に落ちてるし、そろそろ行かないと」
「あなたや、ローディが気になるけれど」
「そうか、淋しくなるな」
「ミリーからそんな言葉が聞けるなんて、生きてて良かったわ」
「レオリゾートも順調なんでしょ?」
「レオのバカ息子に全部譲るなんて、どうかしてるぞ」
「アップル商会をよろしくね、ミリー」
「会長なんて面倒な役柄、押しつけやがって」
「で、それね」
オルトリンデはベッドの横にあるテーブルの上にある数冊の本を指差した。
「ああ」
ミリアリアは一冊手に取ると、ペラペラとページをめくる。
「そうそう、セリーンの孫、悪ガキでな、この間ボコボコにしてやった」
「コラコラ、ミリーのその手で殴ったら、岩も砕いちゃうんだから」
「ちゃんと手加減してるさ」
「セリーンは元気だった?」
「あのババァ、元気過ぎる、ラッセルが死んで元気無くすかと思ったけどな・・・8人も子供がいると、やはり気持ちが若いままなんだろうか?」
「お前も子供がいたらよかったんじゃないか?」
「色々あったよねぇ・・・11英雄も私とダンテ、セリーンだけになっちゃったね」
「皆、大抵は病死か老衰だったな、英雄の最後とは思えんな」
「アルとカレルヴァは、今思うとらしかったよね」
「2人とも魔物から町を守って死んだ、ある意味英雄らしいな」
「ミリー・・・」
「なんだ?」
「今までありがとうね」
「こちらこそ、お前がいたおかげで楽しかった」
「そろそろ、行くね」
「ああ、たまには顔見せろよ」
ーーーお前なら出来る気がする。
「わかっ・・・た、わ」
オルトリンデ・ダムロッシュとしての生涯に幕が降りた。
「250年も預かっておくのか、全く、面倒なことを引き受けたもんだ・・・」
「師匠・・・?」
ローディが部屋に入ってきた。
「旅立ったよ・・・」
「そうですか」
「コイツは、なんで死顔まで楽しそうなんだ」
「変わった人でしたね〜」
「ああ、英知とも、変人とも言える英雄だった」
「いい師匠ではなかったですが、いつも本気で生きていて、一生懸命な最強魔導士は、二度と現れないでしょうね」
「いや、戻ってくるかもしれないぞ、だってアイツは、今も世界を救ってるんだ」
ミリアリアは、オルトリンデの髪をそっと撫でた。




