第6話 戦略級、ただし時給制
神代標は、目覚ましが鳴っていることに気づかなかった。
正確には、鳴っていることには気づいていた。
だが、起きる理由が見つからなかった。
新しく購入した寝台は、素晴らしかった。
使用者の体格に合わせて内部素材の硬度が変化し、肩や腰へ余計な負荷がかからない。
最高級枕は、頭を載せた瞬間に高さを調整する。
室温も適切。
遮光も十分。
昨日までの薄い寝具とは別世界だった。
標は十一年ぶりに、起きることを惜しいと思った。
「……これが睡眠か」
元の世界でも横にはなっていた。
身体を休ませるために目を閉じていた。
だが、眠ることそのものを楽しんだ記憶はない。
起きたくない。
もう少し、このままでいたい。
その欲求が、人間らしいものに思えた。
目覚ましが三度目の警告音を鳴らす。
《登校予定時刻を二十二分超過しています》
「今日は休むか」
標は布団を引き上げた。
直後、端末へ着信。
六波羅綾音。
無視する。
もう一度。
無視する。
三度目。
標は端末を手に取った。
「何だ」
《起きていましたか》
「今、起こされた」
《国家異能管理局の審査官が、すでに学校へ到着しています》
「待たせろ」
《国の正式な能力評価ですよ》
「頼んでいない」
《転移能力者には登録義務があります》
「昨日、医療物資を運んだ」
《だから予定が早まったんです》
「今日は寝る」
《欠席した場合、審査官が寮まで来ます》
標は目を開けた。
「不法侵入だな」
《管理局には、未登録の戦略級能力者に対する緊急調査権限があります》
「面倒だ」
《今さらです》
標は上半身を起こした。
寝台から離れると、背中が少し冷える。
「六波羅」
《何です?》
「この寝台は、いい買い物だった」
《そうですか》
「五十八万円の仕事を受けた価値があった」
《患者さんの手術も成功しました》
「それも悪くない」
《では早く来てください》
「車を出せ」
《学校まで徒歩十五分です》
「遅刻している」
《走ってください》
「疲れる」
《知りません》
通信が切れた。
標は端末を見た。
「業務責任者として不親切だな」
もっとも、今回の能力評価は六波羅運輸の仕事ではない。
綾音に送迎義務がないことは分かっていた。
標は仕方なく制服へ着替えた。
◇
国立関東第三魔法学校、第一能力評価棟。
普段は学生の固有異能や属性適性を測る施設だが、今日は棟全体が封鎖されていた。
入口には国家異能管理局の職員。
校内警備員。
政府系天蓋士部隊の護衛。
さらに九曜技研ホールディングスの技術者が、複数の大型測定装置を運び込んでいる。
国家登録対象となる希少能力者の評価には、民間最高水準の計測設備が必要だった。
標が到着したのは、集合予定時刻から四十二分後。
「遅い」
入口で待っていた榊原宗一郎が言った。
「寝台がよかった」
「理由になっていない」
「俺にとっては重大だ」
「国家の審査官を四十分以上待たせたんだぞ」
「向こうが勝手に来た」
「神代」
「分かっています。検査を受ければいいんでしょう」
標は建物へ入る。
榊原の隣には綾音がいた。
「なぜお前がいる」
「六波羅運輸は、現在神代君と転移門事業の試験契約を結んでいます」
「見学許可が出たのか?」
「契約上の利害関係者として、法務担当者と一緒に参加します」
「学校は?」
「授業は公欠です」
「便利だな」
「神代君も公欠です」
「なら、ゆっくり来ても問題なかった」
「遅刻と公欠は別です」
綾音は淡々と答える。
標は彼女の服装を見る。
今日は制服ではなく、前回と同じ濃紺のスーツ。
隣には六波羅運輸の法務責任者がいる。
学生としてではなく、契約先の代理人として来ているらしい。
二人の間に親密な雰囲気はない。
あるのは、契約書と業務端末だけだった。
「神代標君ですね」
評価室の中央から、白髪交じりの女性が歩いてきた。
五十代半ば。
黒い管理局制服。
左胸には、国家異能管理局・特別審査部の徽章。
「特別審査部主任、御厨沙月です」
「神代標です」
「本人確認を行います」
御厨が認証端末を差し出す。
標は手首を当てた。
《生体情報一致》
《神代標、二十三歳》
《国立関東第三魔法学校、第八学年》
《登録能力なし》
《魔力容量E》
《瞬間出力E》
《属性適性なし》
《暫定総合評価E》
端末へ、昨日までの情報が表示される。
続いて警告。
《未登録の空間系異能反応を確認》
《戦略指定審査対象》
「質問します」
御厨は標を正面から見る。
「転移系異能が発現したのは、何月何日の何時頃ですか」
「正確には分からない。三日前の夜だ」
「発現時に意識障害は?」
「一時的に」
「記憶の欠落は」
「ある」
「人格変化を自覚していますか」
「食欲と眠気が戻った」
「戻った?」
「以前は薄かった」
御厨は隣にいる医療担当者へ目を向けた。
記録される。
「転移能力の使用経験は」
「ある」
「発現後の使用回数を聞いています」
「大型門が四回。小型転移孔と自己転移は複数回」
「大型門?」
御厨の目が細くなる。
「提出された映像は確認しています。しかし、正式な能力評価前に医療輸送へ使用したことは重大な規則違反です」
「必要だった」
「患者の生命に関わる場合でも、未登録能力の商業利用は認められていません」
「許可を待てば、手術に間に合わなかった」
「結果論です」
「間に合ったのも結果だ」
「神代君」
榊原が低い声を出す。
標は肩をすくめた。
「罰金か?」
「状況を調査した上で判断します」
「拘束は」
「現時点では行いません」
「なら続けろ」
御厨は標の態度に反応しなかった。
長年、扱いにくい能力者を見てきたのだろう。
「本日の評価目的を説明します」
室内中央の壁へ、検査項目が表示される。
能力形式。
最大出力。
有効距離。
同時転移可能質量。
生体転移適性。
空間障壁への干渉。
侵食負荷。
戦闘利用性。
「検査結果により、能力等級および戦略指定の有無を決定します」
「戦略指定とは?」
綾音が尋ねた。
御厨が答える。
「個人戦闘力とは別に、国家安全保障や災害対応へ重大な影響を及ぼす能力へ付与される指定です」
「本人の活動は制限されますか?」
「指定内容によります」
「商業利用への影響は」
「安全保障上の制約を受ける可能性があります」
「補償は?」
「法律に基づいて算定されます」
「具体的な算定基準を開示してください」
「審査後に――」
「契約事業へ影響する可能性があります。審査前に確認する必要があります」
御厨は綾音を見る。
「あなたは?」
「六波羅運輸、神代標転移事業の実務窓口、六波羅綾音です」
「学生では」
「学生でもあります」
「現在の契約書は」
法務責任者が、すぐに電子書類を提示する。
御厨は内容を確認した。
「非独占の試験事業契約」
「はい」
「能力登録前に、よくここまで進めましたね」
「先に契約した方が有利だと判断しました」
綾音は平然と答えた。
御厨が僅かに息を吐く。
「事業上の制約については、評価終了後に説明します」
「記録しました」
「では、検査を始めます」
◇
第一検査。
基礎出力測定。
標は前回と同じ測定台へ立った。
大型魔力受容器へ手を置く。
「最大出力で魔力を放出してください」
九曜技研の技術者が言う。
「最大は出さない」
「なぜです?」
「装置が壊れる」
技術者が測定画面を見る。
記録上、標の瞬間出力はE。
大型受容器は、S級能力者の最大出力にも耐える。
「この装置の許容値は、学生用測定器とは異なります」
「魔力量の話ではない」
「では何が装置を壊すと?」
「戻りだ」
「戻り?」
「放出した魔力を回収する」
「今回は回収せず、そのまま受容器へ――」
「無駄だろ」
「測定です」
「捨てた魔力は返してくれるのか?」
技術者が言葉を失う。
「魔力は金銭ではありません」
「俺のものだ」
観察室にいた数人が顔を見合わせる。
「神代」
榊原が言う。
「最低限、指示には従え」
「全量を出せば、次の検査に影響する」
「魔力回復剤を用意しています」
「薬で戻る量には限界がある」
標は測定装置へ手を置いたまま、技術者を見る。
「測りたいのは何だ」
「瞬間的に放出可能な魔力量です」
「では、受容器が測定できる上限まで出す」
「最大出力の測定になりません」
「装置の上限より高いことは分かる」
「あなたの記録上の魔力容量はEです」
「容量と流量は別だ」
標は指先から魔力を流した。
白い光が受容器へ入る。
表示が上昇する。
E。
D。
C。
技術者の表情が変わる。
「魔力容量と一致しない……?」
B。
A。
出力値が、標の全魔力量を超える。
「あり得ない」
「循環している」
標から放出された魔力が受容器へ入る直前、ごく小さな転移孔を通る。
受容器の計測部を通過。
その直後、別の転移孔から標の魔力経路へ戻る。
同じ魔力が、一秒間に何度も計測部を通っていた。
出力値だけが上昇する。
標自身の魔力は減らない。
S級相当。
測定上限。
警告音。
《許容流量を超過します》
「止めてください!」
技術者が叫ぶ。
標は魔力循環を止めた。
測定値がゼロへ戻る。
装置から薄い煙が上がった。
「壊れたか?」
「安全装置が作動しただけです」
「ならよかったな」
「これは出力測定ではありません!」
「計測部を通った魔力量だろ」
「同一魔力を循環させています」
「流れたことに違いはない」
御厨が観察室から出てくる。
「神代君」
「何だ」
「通常の評価基準では、能力者本人が一度に発生させた魔力を出力とします」
「ならEだ」
「今の循環技術を含めれば、継続的にS級相当の流量を作れる?」
「装置が耐えれば」
「魔力容量は増えていないのに?」
「ああ」
御厨は測定結果を見る。
「魔力容量E。瞬間固有出力E。実効魔力流量、測定不能」
「前回と同じだな」
「同じではありません」
御厨の声が少し低くなる。
「前回は、測定誤差の可能性が残っていました」
「今は?」
「評価制度の方が間違っている可能性が出ました」
◇
第二検査。
空間接続距離。
評価棟の地下には、転移能力者用の試験区画が存在しない。
そのため、天川情報基盤から提供された認証座標を利用することになった。
接続先は、学校から八十六キロ離れた国家異能管理局の試験施設。
現地映像。
正確な座標。
室内構造。
空間障壁情報。
すべて標へ提示される。
「現地へ行ったことはありませんね?」
御厨が確認する。
「ない」
「映像と座標情報だけで接続できますか」
「可能性はある」
「成功率は?」
「座標情報が正しければ百パーセント」
「情報に誤差があれば」
「ずれる」
「どの程度?」
「誤差次第だ」
御厨の横に立つ天川情報基盤の技術者が口を開く。
「提供座標の誤差は、三ミリ未満です」
「三ミリなら問題ない」
「対象室は、空間干渉防止障壁で保護されています」
「聞いていない」
「障壁への干渉能力も同時に確認します」
標は御厨を見る。
「追加検査か?」
「元から項目にあります」
「契約書にはない」
「これは契約ではなく、法定評価です」
「便利な言葉だな」
標は接続先の映像へ手を触れる。
八十六キロ。
距離自体は問題ない。
座標も十分。
問題は空間障壁。
この世界の障壁は、指定された範囲内の空間変動を検知し、異能の発生を阻害する。
元世界の軍用固定術式と比べれば単純だった。
標は障壁情報を読む。
球状範囲。
外部から内部への座標接続を遮断。
ただし、電力。
通信。
換気。
人間の出入り。
完全に閉じた空間ではない。
「甘いな」
「何がです?」
天川の技術者が尋ねる。
「障壁が空間しか見ていない」
「空間異能を防ぐ装置ですから」
「通っているものが多すぎる」
標は右手を上げた。
黒い線が現れる。
しかし、試験施設の室内にはつながらない。
出口は、障壁の外側にある通信設備区画。
そこからさらに小さな転移孔を形成する。
通信線が障壁内部へ通る経路。
その経路に、空間接続を重ねる。
線が左右へ開いた。
門の向こうに、八十六キロ先の試験室が見える。
《接続を確認》
現地職員の声が、門を通して直接届く。
天川の技術者が画面を凝視する。
「障壁は正常稼働しています」
「だろうな」
「どうやって内部へ?」
「通信経路を借りた」
「通信線は、物理配線ではありません。暗号化された魔力通信です」
「経路があるなら同じだ」
「同じでは――」
標は床に置かれていた小さな金属球を拾う。
門へ投げる。
八十六キロ先。
試験施設の床に、球が落ちた。
《物質通過を確認》
御厨が目を細める。
「空間障壁を破壊したわけではない?」
「壊していない」
「回避した?」
「正面から入る必要がない」
「より強力な障壁なら?」
「穴を探す」
「穴がなければ?」
「作る」
「作れなければ?」
「障壁を維持している人間を外へ出す」
御厨が黙る。
「戦闘利用の話ですか」
「障壁だけが存在するわけではないだろ」
能力同士を比べる者は、出力だけを見る。
どちらの魔力が強いか。
どちらの障壁が硬いか。
どちらの攻撃が大きいか。
標は違う。
障壁が強ければ、障壁を攻撃しない。
術者。
魔力源。
制御装置。
通信。
補給。
必ず別の場所に弱点がある。
「真正面から力比べをするのは、同じ強さの馬鹿だけだ」
標が言う。
観察室の一角。
鳳城麗華は、腕を組んだまま門を見ていた。
本来、学生が国家評価へ同席することはない。
しかし鳳城総合産業が、学校の空間防護設備と魔力炉を提供しているため、技術確認の名目で代表学生一名の見学が認められていた。
麗華は鳳城家の後継候補。
同時に、学校内で最も高い魔力出力を持つ学生の一人でもある。
「気に入らないか?」
隣にいた獅堂蓮司が尋ねる。
獅堂戦技は、評価棟の戦闘試験用疑似外相種を提供している。
蓮司も企業側の補助参加者として呼ばれていた。
「何がです?」
「力比べをするのは馬鹿だって話だ」
「合理的ではあります」
「お前は正面から障壁を破る方だろ」
「破れるなら、その方が早いでしょう」
「ほらな」
「ですが、破れない相手へ同じことを続けるほど愚かではありません」
麗華は標を見る。
「問題は、彼がどこまで見えているかです」
「強いだろ」
「強さだけの話ではありません」
麗華の声は硬い。
「空間障壁を回避できる能力者を、自由にしてよいのかという話です」
「鳳城らしいな」
「国家施設、軍事拠点、企業研究所。彼が座標を知れば、すべて侵入可能かもしれません」
「本人へ聞けばいい」
「正直に答えると思いますか?」
蓮司は標を見る。
「答えるんじゃないか?」
「なぜ」
「入れるなら入れる、入れないなら入れないって言うだろ。あいつは自分を弱く見せる気がない」
「隠す必要がないほど、自信があるということです」
「いいじゃねえか」
「何がです?」
「強い奴が、自分を強いと言ってる。分かりやすい」
麗華は小さく息を吐いた。
獅堂家の価値観は単純すぎる。
だが、標に関しては、その単純さが核心に近い気もした。
◇
第三検査。
生体転移。
志願者として選ばれたのは、国家異能管理局の男性職員だった。
戦闘経験があり、空間異能試験の資格を持つ。
全身へ複数の測定装置を装着している。
「転移距離は十メートル」
御厨が言う。
「転移先は同室内。対象者の生命反応、細胞損傷、記憶、魔力経路への影響を測定します」
「門を歩かせればいいか?」
「最初は対象者を直接転移させてください」
「嫌だ」
「理由は?」
「生体を物体として転移させる方が危険だ」
「門型ではなく、対象指定型の評価が必要です」
「必要ない」
「能力形式を確認します」
「できるが、やらない」
御厨の表情が変わる。
「できる?」
「ああ」
「なぜ拒否するのです」
「対象の身体を完全に把握する必要がある。内部構造、血液、腸内物、魔力経路、装備。定義から漏れれば、その部分だけ残る」
男性職員の顔色が僅かに変わった。
「事故例があるのですか?」
「ある」
「あなたが起こした?」
「違う」
元世界の初期転移技術。
対象指定の誤り。
装備だけが残った兵士。
血液の一部を転移元へ置き去りにした能力者。
身体は移動できても、魔力経路が切断された者。
標は十一年間で、いくつも見てきた。
「門を歩かせる方が安全だ」
「門の通過中に閉じた場合は」
「閉じない」
「不測の意識喪失は?」
「安全装置を作る」
「どのような?」
「俺の意識が落ちた場合、門を閉じずに接続を固定する」
「誰が維持するのです」
「循環させた魔力だ」
「本人の意識なしで、異能を維持できると?」
「短時間なら」
御厨は九曜技研の技術者へ目を向ける。
技術者は首を振った。
「理論上、確認された例はありません」
「なら確認しろ」
標は十メートル先へ門を開いた。
同じ室内。
入口から出口が見える。
「歩け」
男性職員が門へ近づく。
片手を入れる。
十メートル先の出口から手が現れる。
身体を半分通す。
異常なし。
完全に通過。
「生体反応、正常」
「細胞損傷なし」
「魔力経路、変化なし」
「時間差、計測限界未満」
職員は自分の身体を確認する。
「何も感じませんでした」
「歩いただけだからな」
標は門を維持したまま、御厨へ尋ねる。
「他に通りたい奴は?」
観察室にいた蓮司が、即座に手を上げた。
「俺が行く」
「獅堂君」
教員が止める。
「生体安全性の比較対象が必要だろ」
「検査参加者ではありません」
「同じ学校内だ。十メートル歩くだけだろ」
蓮司は許可を待たず、評価室へ降りてきた。
標の前に立つ。
「通っていいか?」
「一回一万円」
「取るのかよ」
「実験参加費をもらう側だろう」
「俺は払わねえぞ」
「なら帰れ」
「お前、金に細かすぎるだろ」
「門は俺のものだ」
蓮司が笑った。
「分かった。払う」
「獅堂君!」
見学担当教員が声を上げる。
「後で親父に請求する」
「会社経費で個人的な試験を行わないでください!」
「実戦装備開発の参考になる」
「正式な申請が必要です!」
「では、今回は私が払います」
麗華が観察室から降りてきた。
全員の視線が集まる。
「鳳城?」
蓮司が眉を上げる。
「私も通ります。二名で二万円ですね」
「ああ」
標は即答した。
「待ってください」
御厨が止める。
「これは国家評価です。学生の娯楽ではありません」
「生体転移の安全性を確認するため、異なる能力特性を持つ複数人のデータは有用です」
麗華は正論の形で参加を押し通そうとする。
「費用は鳳城家の個人資産から支払います。企業経費にはしません」
「そういう問題では――」
「構わない」
標が言った。
「俺が構います」
御厨は額へ手を当てた。
最終的に、安全管理者を増やすことを条件に、二人の通過が認められた。
蓮司が先に門をくぐる。
「本当に何もねえな」
十メートル先へ出る。
その場で跳び、身体を動かす。
「魔力も減ってない」
「お前が使ったわけではない」
「侵食もなし。便利すぎるだろ」
次に麗華が門へ入る。
通過する直前、境界で足を止めた。
黒い面の向こうに、自分の背中が見える。
「門の内部は、どこにあるのですか?」
「どこにもない」
「入口と出口の間は?」
「ない」
「距離が消えている?」
「そう考えていい」
麗華は門を通過した。
一歩。
それだけで、十メートル先へ出る。
瞬間的な浮遊感もない。
魔力の乱れもない。
空間を移動した感覚すらなかった。
「これは……」
麗華は振り返る。
黒い門。
標。
自分が立っていた場所。
何かが移動したのではない。
二つの地点が、最初から隣り合っていたようにしか思えない。
「異能というより、法則の変更ですね」
麗華が言う。
「大げさだ」
「あなたが言うのですか?」
標は答えなかった。
検査結果。
生体転移による損傷なし。
魔力消費は術者側のみ。
対象者の侵食率変化なし。
複数人の連続通過が可能。
従来の転移能力は、術者本人か、接触した数人を移動させるものだった。
標の門は違う。
開いている限り、誰でも通れる。
能力者一人の移動能力ではない。
任意の場所へ設置できる交通路だった。
◇
第四検査。
模擬戦闘。
「必要か?」
標が尋ねる。
「転移能力の戦闘利用性は、昨日の学校評価で確認されています」
御厨が答える。
「しかし国家基準での評価は別です」
「相手は?」
評価区画へ、一人の男性が入ってくる。
三十代。
灰色の戦闘服。
武器は短槍。
胸元には政府系天蓋士部隊の徽章。
「国家天蓋士ランキング国内四十八位、A級戦闘員の国見です」
「上位なのか?」
蓮司が観察室から答えた。
「国内の現役天蓋士は数万人だ。四十八位なら化け物だぞ」
「お前より?」
「今の俺じゃ勝てねえ」
国見が槍を構える。
「評価内容は、神代標の制圧または戦闘不能化。神代標側は、国見審査官の胸部に設置された判定具へ一撃を与えれば合格です」
「怪我をさせても?」
「防護結界があります」
「転移させて場外へ出すのは?」
「安全区域内なら認めます」
「装備を奪うのは?」
「認めます」
「服は?」
国見の眉が動いた。
「戦闘継続に必要な装備だけにしてください」
「分かった」
御厨が開始位置を指示する。
距離は二十メートル。
国見の周囲に風が集まる。
槍術と風属性の複合戦闘。
速度特化型。
開始と同時に距離を詰め、標が門を形成する前に制圧する狙いだろう。
「神代標」
国見が言う。
「私は学生相手でも手加減しない」
「助かる」
「なぜ」
「加減を考えなくていい」
開始音。
国見の姿が消えた。
風が爆発する。
二十メートルを一歩で詰める。
槍の柄が、標の腹部へ迫った。
命中する直前。
標が半歩、横へ移動する。
転移ではない。
ただの歩行。
槍が制服をかすめる。
国見の目が僅かに見開く。
標は槍の軌道を事前に読んでいた。
踏み込み。
肩。
視線。
足元の風。
十一年間、これより速い敵と戦ってきた。
国見が槍を返す。
横薙ぎ。
標の首を狙う。
標の前に小さな転移孔が開く。
槍の穂先が孔へ入る。
出口は、国見自身の背後。
国見の槍が、自分の背中へ向かって現れる。
「っ!」
国見は即座に槍を止める。
その隙に、標が指を動かした。
国見の右足の下に転移孔。
出口は、三十センチ上。
踏み込んだ足が、予想より高い位置へ着地する。
体勢が崩れる。
標は国見へ近づかない。
白い魔力弾を一発撃つ。
出力E。
国見は風の障壁を展開。
魔力弾は障壁へ当たる前に消える。
胸部判定具の一センチ前へ出現した。
《有効打判定》
開始から二・四秒。
「終了です」
御厨の声。
国見は動きを止めた。
胸部の判定具が赤く点灯している。
観察室は静まり返った。
「もう一度」
国見が言った。
「検査は終わりだ」
標が答える。
「今のは、私が能力を知らなかった」
「戦場で敵が説明してくれるのか?」
「次は対応できる」
「有料ならいい」
「いくらだ」
「十万円」
「払う」
御厨が二人の間に入った。
「私闘は禁止します」
「評価の再試行です」
国見は真顔だった。
「一度の結果では、偶然の可能性があります」
「二度目は二十万だ」
「なぜ上がる」
「対応策を考えた相手の方が面倒だ」
「払う」
「国見審査官」
御厨の声が低くなる。
「国費で個人的な再戦をしないでください」
「自費です」
「そういう問題ではありません」
標は国見を見る。
「後日、正式に依頼しろ」
「逃げるのか」
「今は別の仕事中だ」
国見が一瞬黙り、槍を下ろした。
「分かった。必ず申し込む」
「先払いだ」
「ああ」
蓮司が観察室で声を上げて笑った。
「いいな、あいつ!」
麗華は笑わない。
戦闘記録を見つめている。
国見は国内四十八位。
純粋な速度、出力、経験。
すべて標を上回る。
それでも触れることさえできなかった。
標は国見より速くない。
強くもない。
硬くもない。
ただ、攻撃が到達する場所と、身体が存在する場所を変える。
相手が強くなるほど、相手自身の力を利用できる。
能力の出力差が、そのまま勝敗につながらない。
「戦えば戦うほど、対策が難しくなる」
麗華が呟く。
「逆じゃねえか?」
蓮司が聞く。
「能力を見れば、対策できるだろ」
「門を警戒すれば、行動の選択肢が減ります」
攻撃を出せば転送される。
踏み込めば足元をずらされる。
障壁を張れば内部へ攻撃を送られる。
距離を取っても、転移される。
近づいても、逃げられる。
「彼は、相手の選択肢を一つずつ奪っています」
「だったら全部まとめて吹き飛ばす」
「周囲ごと攻撃する?」
「ああ」
「市街地でも?」
蓮司が黙る。
「人質がいても?」
「……面倒だな」
「純粋な戦場なら対処法はあるでしょう」
広範囲攻撃。
空間固定。
無差別攻撃。
標が転移できる範囲すべてを同時に攻撃する。
だが実際の戦場には、味方と市民がいる。
守る対象がある。
壊してはいけない設備がある。
「力が強いのではありません」
麗華は標を見る。
「力を使う場所を、彼だけが決められる」
◇
すべての検査が終了したのは、午後三時過ぎだった。
標は評価室の椅子へ座り、提供された弁当を食べている。
国の費用。
返還義務なし。
確認済みだった。
御厨を中心に、管理局、学校、九曜技研の担当者が協議する。
魔力容量E。
固有出力E。
身体能力E。
防御力E。
通常の能力者評価だけなら、E級。
一方。
門の有効距離は、今回の試験では八十六キロ。
医療輸送実績では百二十キロ。
複数人の連続通過。
高額精密機器の無振動輸送。
空間障壁回避。
生体損傷なし。
低侵食。
戦闘では国内四十八位のA級を二・四秒で制圧。
既存の等級へ当てはめること自体が難しかった。
「暫定評価を発表します」
御厨が前へ立つ。
壁面へ結果が表示される。
《神代標》
《能力名称:未定》
《能力分類:空間接続・門型転移》
《魔力容量:E》
《固有出力:E》
《身体能力:E》
《防御能力:E》
《魔力制御:測定不能》
《実効戦闘評価:A以上》
《災害対応評価:S》
《輸送・補給評価:S》
《総合能力等級:暫定A》
《特記事項:国家戦略指定候補》
標は弁当を食べながら画面を見る。
「Sではないのか?」
蓮司が尋ねた。
御厨が答える。
「S級能力者には、単独で主核級外相種への対処が可能、または同等の国家的危機へ対応可能であることが求められます」
「標なら倒せるんじゃないか?」
「現時点で、神代標自身の攻撃力と耐久力はEです」
「攻撃を中へ送ればいい」
「主核級の内部構造や座標を正確に把握できる保証がありません。広範囲攻撃に対する防御も未確認です」
標は口を挟まない。
正しい評価だった。
元世界でも、自分一人で主核級を倒すことは難しかった。
転移門は万能ではない。
座標を捉えられない相手。
空間そのものを食う敵。
広範囲を消滅させる敵。
転移先すべてを攻撃できる相手。
相性の悪い存在はいくらでもいる。
「ただし」
御厨が続ける。
「部隊支援、輸送、救助、戦場制御を含めた総合的な影響力は、S級能力者を上回る可能性があります」
「ならSでいいだろ」
「等級は、個人の能力だけで判断します」
「古い評価方法ですね」
綾音が言った。
御厨は否定しなかった。
「そのため、国家戦略指定候補とします」
標が弁当箱を閉じる。
「それで、何が変わる」
「国外渡航時の申請義務」
「嫌だ」
「重要施設への立ち入り制限」
「元から入らない」
「能力を用いた大規模輸送の事前報告」
「大規模とは?」
「今後、詳細を定めます」
「勝手に決めるな」
「国家安全保障に関わります」
「俺の仕事にも関わる」
「神代君」
御厨の声は静かだった。
「あなたの門は、兵器、危険物、犯罪者を国内のどこへでも運べる可能性があります」
「運ばない」
「あなたが拒否しても、脅迫や洗脳を受ける可能性があります」
「対策すればいい」
「だから管理が必要です」
「管理とは、俺に命令することか?」
「保護も含みます」
「鳳城と同じことを言うな」
観察室にいた麗華の眉が僅かに動く。
御厨は標の視線を受け止める。
「自由には、責任が伴います」
「責任なら負う」
「国家規模の被害が起きた場合も?」
「俺が起こしたなら」
「起こす前に防ぐ必要があります」
「それを理由に、何でも制限できるな」
室内の空気が重くなる。
標は国家を信用していない。
元世界で、十一年間使い潰された。
世界を守るため。
人類のため。
代わりがいないから。
必要だから。
同じ言葉を何度も聞いた。
「能力を使えと命じる権利も、戦略指定に含まれるのか」
標が尋ねる。
「非常事態には、協力要請が出されます」
「要請か?」
「法的強制力を伴う場合があります」
「報酬は」
「規定に基づきます」
「拒否した場合は」
「状況によります」
「曖昧だな」
「すべての状況を事前に規定することはできません」
「なら、俺も事前に協力を約束しない」
御厨と標が見つめ合う。
綾音は口を挟まなかった。
これは企業契約ではない。
国家と能力者の関係。
六波羅が前へ出すぎれば、標を利用して国家へ対抗する企業と見なされる。
ただし、記録は取っている。
「一つ確認する」
標が言う。
「非常時に無料で門を使わせる法律はあるか?」
「現行法では、能力者へ正当な補償を行うことが定められています」
「ならいい」
「金額に納得できなくても、命令へ従う義務が生じる可能性はあります」
「その場合は、後で争う」
「裁判を?」
「ああ」
「国家相手に?」
「契約書があるなら、相手が誰でも同じだ」
御厨は数秒黙り、僅かに表情を緩めた。
「少なくとも、無条件で逃げるつもりではないようですね」
「条件が合えば働く」
「人類の危機でも?」
「人類が払え」
「滅亡寸前なら、通貨に価値はありません」
「先払いで物をもらう」
蓮司が吹き出した。
麗華は額へ手を当てる。
御厨も、今度は僅かに笑った。
「分かりました。戦略指定の詳細は、本人および契約関係者と協議した上で決定します」
「協議時間は有料だ」
「行政手続きです」
「俺の時間だ」
「神代君」
綾音が小声で言う。
「国家相手の手続きに面談料を請求するのは難しいです」
「なぜ」
「国民として必要な手続きだからです」
「国民は面倒だな」
「今さら辞められません」
御厨が端末を操作する。
「最後に、能力の登録名称を決めます」
「転移門でいい」
「正式名称としては簡略すぎます」
「空間接続門」
九曜技研の技術者が提案する。
「多重座標接続」
別の研究者。
「無損傷空間回廊」
「長い」
標はすべて却下する。
「では、能力者本人の呼称を優先します」
御厨が入力する。
《登録能力名:転移門》
「これでいい」
「一般名称と同じになり、後に混乱する可能性があります」
「俺の門が一番有名になれば問題ない」
御厨が標を見る。
「随分な自信ですね」
「競合がいるのか?」
誰も答えられない。
世界で公表されている転移能力者は数人。
その中に、標と同様の門を開ける者はいない。
「では、登録します」
《固有能力・転移門》
《登録完了》
標の学生記録が更新される。
昨日まで。
属性適性なし。
固有能力なし。
暫定E級。
就職通知ゼロ件。
今日。
門型転移能力者。
暫定A級。
災害・輸送評価S。
国家戦略指定候補。
標は端末を確認した。
同時に、新着通知が増えていく。
企業面談依頼。
政府機関。
研究機関。
海外組織。
最初の一分で十八件。
二分で三十件。
「六波羅」
「見えています」
「全部、窓口へ回す」
「契約範囲を超えています」
「追加契約だ」
「報酬は?」
「成立額の二パーセントだったな」
「既存契約に含まれるのは、六波羅運輸の事業と関係する案件だけです」
「戦闘企業や研究機関は別か」
「はい」
「面倒だ」
「新しい代理業務契約を結びますか?」
「条件は」
「月額固定費と、契約成立時の成功報酬」
「固定費は払わない」
「では、成功報酬を上げます」
「二パーセント」
「五パーセント」
「高い」
「国家戦略指定候補の案件管理です。法務担当者も増員します」
「三」
「四・五」
「三・五」
「四」
「成立」
標と綾音が同時に端末を開く。
麗華が二人を見ていた。
「国家戦略指定が決まった直後に、手数料交渉ですか」
「今決めないと依頼が増える」
綾音が答える。
「神代君の能力は、社会全体へ影響します」
「だからこそ料金を決める」
標が言う。
「公益より利益ですか?」
「利益がなければ続かない」
「救助や防衛には、金額で測れない価値があります」
「なら、価値があると思う奴が払え」
「払えない人は?」
「国が払えばいい」
「税金で?」
「国民全員に価値があるなら、全員で負担するのが正しいだろ」
麗華は言葉を止めた。
標は金だけを求めているようで、論理そのものは一貫している。
能力者個人へ善意を強制するのではなく、社会全体が費用を負担する。
「あなたは、力を持つ者の責任をどう考えているのですか」
麗華が尋ねる。
「力を持つだけで、他人に所有される責任は生まれない」
「所有ではありません」
「無料で使わせろ。命令に従え。社会のために働け」
標は麗華を見る。
「言い方が違うだけで、所有と同じだ」
麗華の表情が硬くなる。
「鳳城家は、能力者を所有物だとは考えていません」
「管理するべきだとは考えている」
「危険な力には管理が必要です」
「誰が管理者を管理する?」
「国家と法です」
「その法を作るのは誰だ」
「選挙で選ばれた代表者です」
「企業は影響しないのか?」
麗華は答えなかった。
鳳城総合産業は、国家防衛政策へ強い影響力を持つ。
法律を直接決めるわけではない。
だが、完全に無関係とも言えない。
「難しい話は、後にしろ」
蓮司が二人の間へ入る。
「標」
「何だ」
「俺とも戦え」
「いくら払う」
「最初から金かよ」
「国見は二十万で予約した」
「じゃあ二十五万」
「なぜ上げる」
「獅堂家の人間だろ」
「企業一族料金か?」
「ああ」
蓮司は笑った。
「いいぜ」
「蓮司さん」
獅堂戦技の同行社員が止める。
「個人の模擬戦へ二十五万円を支払わないでください」
「自分で払う」
「学生の資産をそのように――」
「負けたら勉強代だ」
「俺が勝っても返さないぞ」
「当然だ」
蓮司は標へ手を差し出す。
「予約だ」
標はその手を見た。
「先払い」
「信用しろよ」
「契約と信用は別だ」
「分かった。今払う」
端末間で二十五万円が送金される。
《入金を確認しました》
標は初めて蓮司の手を握った。
「成立だ」
麗華が呆れたように二人を見る。
その横で、綾音は新しい代理業務契約書を作っていた。
恋愛感情など入る余地はない。
標が見ているのは入金額。
綾音が見ているのは手数料と案件数。
互いに相手を必要としている。
ただし、その必要性は恋ではなく、利益と信頼に基づくものだった。
◇
その日の夕方。
国家異能管理局から、登録情報が限定公開された。
《新規A級能力者》
《神代標》
《固有能力・転移門》
《国家戦略指定審査中》
詳細は非公開。
それでも、門型転移能力者の存在は、各企業の上層部へ一斉に伝わった。
天城重工連合。
鳳城総合産業。
東海道国際物流機構。
九曜技研ホールディングス。
白鷺医療生命機構。
獅堂戦技。
天川情報基盤。
常盤魔力網。
各社が、異なる価値を見いだす。
兵員輸送。
緊急避難。
医療。
研究。
物流。
防壁突破。
災害救助。
まだ誰も、最も大きな価値には気づいていない。
天穴の内側。
外部から隔絶された戦場。
能力者が、最初に失うもの。
弾薬でも。
食料でも。
人員でもない。
魔力。
標の元世界では、戦場へ魔力を送り続けられるかどうかが、攻略部隊の生死を決めていた。
蓄魔器を門で運ぶ。
魔力伝送者のパスだけを接続する。
遠く離れた供給拠点から、前線へ魔力を流す。
それができれば、能力者は戦い続けられる。
治癒術師も。
防御術師も。
攻撃部隊も。
天穴の深部で、力を失わずに済む。
だが、この世界には、まだ十分な蓄魔技術がない。
企業も政府も、転移門を便利な移動手段としてしか見ていなかった。
標は教えるつもりがなかった。
少なくとも。
その価値へ、自力で気づく者が現れるまでは。
◇
標は自室へ戻り、新しい寝台へ横になった。
端末には、面談依頼が七十四件。
綾音から、代理契約の最終確認。
国見から、再戦日程の候補。
蓮司からは、模擬戦の催促。
白鷺医療生命機構から、正式な面談依頼。
東海道国際物流機構から、報酬百万円の初回協議提案。
標は百万円の文字を見た。
「話を聞くだけで百万円か」
悪くない。
だが、今は眠い。
端末を伏せる。
最高級枕へ頭を沈める。
柔らかい。
首への負担もない。
「明日考えるか」
国家戦略指定候補。
七十四件の依頼。
国内最大手企業からの提案。
そのすべてを後回しにして。
神代標は、気持ちよく眠った。




