54話 最終話 幸せな暮らし
早いもので、私とアスラス様が結婚してから10年の歳月が流れた。
相変わらず仲の良い夫婦生活が続いている。
子どもは男の子が二人、女の子が一人生まれ、子育てと領主代理の仕事で毎日とても忙しいけれど、充実した日々を送っている。
真面目なアスラス様は、他の女性に目移りすることもなく、私のことをずっと愛してくれていて、可愛いい子どもたちのことは、目の中に入れても痛くないほどに可愛がっている。
キャロルとグリックの裁判は、事件から半年後に判決が下った。
グリックは貴族の身分をはく奪され、鉱山で20年間の囚人労働、キャロルは、証拠不十分で殺意があったのか判定できず、王都から遠く離れた修道院での謹慎処分となった。
不思議なことに、謹慎期間が終わってからも、キャロルはそのまま修道院で暮らしている。
時々訪れるイケメン神官と、運命の出会いをしたと言っているとかいないとか……。
まあ、どちらにしても、その神官に会いたいからでは? と、 ちょっとした噂が関係者の間で囁かれているらしい。
ラディーの時代に手掛けた薬草園は軌道に乗り、ロウタス侯爵家の新しい事業として定着している。
その中でも最も華々しい業績を上げたのは、人工栽培が不可能とされていた薬効キノコの栽培に成功したことである。
五年前に人工栽培が可能になってから、大量生産ができるようになったこのキノコは、高熱を伴う恐ろしい伝染病、フルエンティアに効果があることで知られていた。
二年前に世界的規模でフルエンティアが大流行した際に、アスラス様が作った薬が世界を救ったのである。
この偉業が評価され、アスラス様は、国王陛下から伯爵位を叙爵された。
現在アスラス様は、新しいエネルギーを研究している。
電気と名付けられたそのエネルギーが広まれば、夜に火を使わなくても部屋を明るくすることができるらしい。
私は研究に夢中になっているアスラス様のために、彼の好きなお茶を淹れる。
「アスラス様、お茶を淹れましたよ。そろそろ休憩にしましょう。今日はあなたの好きなミルクティーよ」
「ああ、リリア、ありがとう。いい香りだ。リリアの淹れるお茶は本当に美味しい」
今でもアスラス様は、北部原産の茶葉で作るミルクティーが大好きだ。
「あなたが美味しいって言ってくれて、私はすごく幸せだわ」
「僕も、幸せだよ。優しい君と可愛い子どもたちと一緒に暮らせて、心から幸せだと思う。君と結婚できて本当に良かった」
アスラス様の嘘偽りのない微笑みを見て、私はほっと胸をなでおろす。
悪女の私が必ず幸せにしてみせますって心に誓ってから早10年。
私の誓いは果たせてますよね。
そしてこれからもずっと、あなたの幸せが続くことを願っています。
愛しているわ、アスラス様。
星の数ほどある作品の中から、本作品を選び、最後まで読んでくださりありがとうございました。
愛するアスラスを助けるためとは言え、嘘をつき自分の欲を優先させて夫にしてしまったリリア。
幸せに暮らしていても、心の中では、後ろめたい思いと、ばれてしまったら?という恐怖が離れることはありませんでした。
それでもアスラスの幸せを一番に考えているリリアは、最後に、嘘偽りのない幸せをつかむことができました。
一緒にハラハラドキドキ、ほっと一安心なんて思ってもらえたら幸いです。
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