5話 闇ギルドの一員
私はロウタス侯爵家の三女として生まれた。
父はとても厳しい人だけれど、家門を繁栄させる手腕は素晴らしくて、父の代で、国の中でも最も強い権力と金を持つ侯爵家になった。
父は秘密裏に闇ギルドを経営しているのだが、この情報網が、父の強い武器になっている。
私は5歳の誕生日を迎えた日から、淑女教育と武力指導の両方を受けて育った。
これはロウタス家の女性に生まれたら、誰もが通る道。
そして10歳の誕生日に父に呼ばれた。
私と同じ銀髪の父は、同じく金色の瞳の鋭い視線を私に投げかけて問うた。
「お前はこのまま淑女教育を受けて、政略結婚で我が家門にとって有能であることを示すのか? それとも武力指導を受け続けて闇ギルドの一員になるのか、どちらを望む?」
年の離れた二人の姉は、淑女教育を選び、二人とも政略結婚の相手と結婚して、今は家を出ている。
私は親の決めた愛のない結婚をしたくなかった。
それに、身体を動かす方が好きだった。
だから、私の答えは、すでに決まっていた。
「私は武力指導を選び、闇ギルドの一員として我が家門にとって有能であることを示したいと思います」
その日から、私の諜報員としての技術がたたき込まれた。
剣術、体術、変装技術、薬の知識など、私は厳しい修行に毎日耐えた。
怪力のジェニファは、厳しい修行を一緒に耐えた仲間であり、14歳からは、仕事をする上での信頼できる相棒でもあった。
16歳になった年に、王宮の諜報員として派遣され、当時17歳のキャロル王女を監視する目的で、王女付きのメイドになった。
変装技術を駆使して茶髪と茶色い瞳に変え、顔は化粧で、どこにでもいるような平凡な顔に変えた。
昼間はメイドとして耳と目で情報を得、夜は天井裏に忍び込んで、上から皆を盗み見た。
一年後、18歳になったキャロル様は二つ年上のアスラス様と婚約。
アスラス様はアカデミーを首席で卒業後、二年間、上級アカデミーで研究職に就き、専門家が絶賛するような素晴らしい成果を挙げていた。
わがまま放題に育ったキャロル様を心配した国王陛下が、国一番の天才と呼ばれ、生活態度も極めて真面目なアスラス様を結婚相手に選んだのである。
この国では、王位を継承するのは第一子だと法律で明確に決まっている。
昔、王位継承をめぐって内乱がおこり、危うく国が傾きかけたことがある。
その二の舞を踏まぬように、第一子を継承順位一位と決め、それはたとえ王でも覆すことができないことになっている。
しかし、第一子がボンクラだった場合は、第二子が国王補佐の身分になり、国王の公務を受け持つことになる。
だが、だからと言って第二子が国王になれるわけではない。
補佐は補佐として、明確に身分が決められているのだ。
キャロル様には弟が一人いるが、まだ8歳。国王補佐にはなれそうもない。
だからこそ国王は、王配にアスラス様を選んだのだ。
アスラス様は、婚約してから毎日王宮に通うことになった。
アスラス様にも専属のメイドを付けることになり、その役を私が引き受けることになった。
父であるロウタス侯爵にとって、未来の王配であるアスラス様が、敵となるのか味方になるのか、見定める必要があったからである。
メイドの采配をするメイド長は、父の配下であったから、私の部署替えは、いとも簡単に行われた。




