43話 真の運命の相手
キャロルに止めてと言われても、グリックは話を止める気はないようだ。
「キャロル様、何を言うのです。あんなに愛し合った仲ではありませんか。本来なら、アスラス殿が戻って来なければ、私と婚約するはずだったのですよ。私たちの愛は、あの男に引き裂かれてしまったのです」
「だから、もう止めてって言ってるでしょう? ベリード様、この男の嘘をお信じにならないで!」
「私は嘘などついておりません。その証拠に、私はキャロル様のほくろの位置を正確に言うことができます。よろしければ、今から言いましょうか?」
私は無言と無表情で二人のやり取りを見ていたが、内心ではもっとやれと、笑っていた。
だが、もうここらでいいかな?
「グリック殿、そなたの言い分、よくわかりました。つまり、残念ながらキャロル様は、私の花嫁になる条件を満たしていないと言いたいのですね」
「そ、そうです。おわかりいただけましたか?」
「だ、だから違うって言ってるでしょう?」
グリックとキャロルの声が重なった。
「キャロル様、あなたの真の運命の相手は、どうやら私ではなかったようですね。私はお二人の話を聞いて、グリック殿こそあなたに相応しい男なのだとわかりました。私との婚約の話は、なかったことにしてください。国王陛下も、それでよろしいですね」
「ああ、娘がそなたに申し訳ないことをした。そなたにもらった虹の女神のネックレスも、指輪もお返ししよう」
「お父様、それは私がいただいたものですわ」
「黙りなさい。この期に及んでまだそんなことを言っておるのか。ところで、ベリード大公子、実はもう一つの虹の女神が盗まれてしまったようなのだ。隅々まで探したのだが見つからない。だから、申し訳ないが、二つとも返すことができないのだ」
「そうですか。もし見つかったら、その時で結構です。では、私は帰ることにいたしましょう。キャロル様、グリック殿と末永くお幸せにお暮しください」
「そ、そんな……」
「キャロル、もう、何も言うな。お前はグリックとの婚約を望んでいたのだから、もうそれで良いではないか」
陛下は、こめかみを押さえて、ふうとため息をついた。
「では、陛下は私とキャロル様の婚約を認めてくださるのですね」
グリックは、声高らかに勝者の笑みを浮かべている。
ふふっ、あなたのその勝ち誇った笑みは、いったいいつまで続くのかしらね?
また入り口が騒がしくなった。
「陛下、その婚約、お待ちください」
入って来たのは宰相補佐のアピウムだった。
アスラス様の友人で、頭が切れる男。
素晴らしいタイミング、まさしくシナリオ通り。
「アピウム、どうしたのだ?」
「虹の女神を盗んだ犯人がわかりました」
「なんと、それは誰なのだ?」
陛下が身を乗り出して尋ねた。




