33話 作戦会議
アスラス様は、初めは勢いよく馬を走らせたが、町の中に入るとスピードを緩めた。
お陰で、舌を噛むことを気にせずに、馬上で話すことができるようになった。
「アスラス様、私がお使いに出た後、何があったのですか?」
「君が出た後、なかなか戻って来ないなぁと思っていたら、手紙が届いたんだ。君を助けたければ、誰にも言わずに一人で来いってね」
「それで、本当に誰にも言わずに一人で来たと……?」
「いや、メイド長には、君がキャロル様のお使いから帰ってこないから、僕が迎えに行くって話したよ。君がさぼっていると思われたら嫌だからね」
メイド長に話すなんてグッジョブだわ。
きっとメイド長からお父様に伝わっているはずよ。
「でも、一人で来るなんて、危険です。アスラス様にもしものことがあったら……」
「僕は君に助けられたんだよ。君が、武術をもっと練習した方がいいって言ってくれただろう? あれから、僕は戦える道具を作り始めたんだ。今日使った閃光弾も催涙弾もそのときに作ったものだ。催涙弾にはくしゃみの成分もたっぷり入れたから、彼らのくしゃみは、しばらく止まらないと思うよ」
「あの……、彼らは、アスラス様を誘き出して、私と心中させるつもりだったようです」
「奴らが狙っているのは僕の命だろうに、君を巻き込むなんて許せない。本当に君には申し訳ないことをした」
「いえ、でも、こうして助けていただきましたから……。あの、アスラス様は誰の指図だと思っているのですか?」
「うーん、軽はずみなことは言えないからね。まだ、誰とも……。ともかく僕が王配になるのを阻止したい人間であることは確かなんだろうけど」
アスラス様、あなたは優しすぎます。
犯人は、グリックとキャロル様。
ああ、もう様なんてつけないわ。キャロルだけで充分よ!
でも、あなたが軽はずみなことは言えないと言うのなら、私も今は黙っておきますね。
話しているうちに、馬は王城に着き、私たちは馬を降りた。
この後、報告を受けた騎士たちが、すぐに犯人を捕まえに行ったが、小屋には誰もいなくて、探してもそれらしき人物を見つけることはできなかった。
しかし、二度とこのようなことがあってはならないと、アスラス様の護衛が増えたことは良かったと思う。
私はこの夜、城を抜け、ロウタス侯爵邸で、緊急作戦会議を開いた。
出席者は、父ロウタス侯爵、兄ボガード、ギルド仲間のジェニファ、私の師匠のステイク、メイド長のアンナ、そして私の6人である。
領地にいる兄とステイクには、舞踏会の後、すぐに早馬で連絡し、王都に来てもらっていた。
「それでは作戦会議を始めます」
私の開会宣言を、皆すごく真面目な顔で聞いている。
「アスラス様が幸せであるのなら、諦めるつもりでいましたが、王女とグリックが命を狙っているとわかった以上、アスラス様を魔の手からお救いしなければなりません。アスラス様は言ってました。尊敬も思いやりもない結婚生活は地獄のようだと。今回の戦いの目標は、王女を王太女の身分から引きずり落ろし、婚約を白紙に戻させること、グリックの罪を暴くこと、そして叶うならアスラス様の奪還です。作戦名は略して婚約白紙大作戦。皆様、よろしいですか?」
「もちろんだ。アスラスは我がロウタス家に必要な人材だ」
お父様の重々しい声に、ここにいる皆が頷く。
「アイツには、戻ってきて欲しいからな。薬草園も完成して欲しいしな」
お兄様がニヤリと笑った。
「お嬢の幸せのためなら、俺は一肌、否、千肌でも脱ぎますぜ」
ジェニファ、あなたってとっても心強いわ。
「お嬢様、城内のことはどうか私にお任せを」
アンナ、あなたに任せておけば大丈夫ね。
「私が教えたことが、今回は大いに役立ちそうですな」
ステイク師匠、今回の作戦は、あなたの教えなしにはできません。
「皆様、ありがとうございます。では、今から作戦の詳細について説明します」




