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お客様は神様です?  作者: 黒一もえ
4・お友達の登場ですか?
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十八章・あの人の仕事は意外です

 神様の戦闘が終わったと思ったら、私達はガラの悪い神官さんに馬車に放り込まれ、どこかへ連行されました。ご丁寧に、目隠しをされ、手錠されて。

 もしや、神官を装った人売り!? とか考えたんですが、どうとでもなるはずなので私は何も考えないようにしました。だって私と一緒にいるのはオーディンさん達ですよ? 神様ですよ?

 しばらくして馬車から引きずり下ろされた私達は歩かされて、どこかの部屋に放り込まれました。あれ、これってデジャヴ? 放り込まれ率高くないですか?

 まあ、大丈夫でしょう。神様がいるし。

 私は、立って抵抗できないようにと床に座らせられたまま、同じ状態であるはずの神様に声をかけました。

「オーディンさん、さっさとこれ外してください。それから早く帰りましょう」

「おい、シャルロット。なんだか接し方が雑になっていないか?」

「友人ならこれくらいでオッケーですよ。じゃ、やってください」

 手を差し出すと、それがなぁ、と言われます。

「この手錠は特殊な構造らしい。神にとって都合の悪い道具らしいな…どうだ、トール?」

「ああ。我の力も制御できないだろう。今、雷を呼び寄せれば間違いなく貴様らに直撃する」

 ぞっとしませんね。

「バルドル…は、使えないな。シャルロット、貴様はあいつに期待するなよ」

「私の息子は戦闘において役に立たない」

 連行される前にバルドルさんをフォローしていたはずのトールさんも、今は辛辣な意見を口にしています。よっぽど使い物にならないんでしょう。

 私がため息をつこうとしたとき、しゅるりという音がして、目隠しが取れました。

「…」

 自由になった視界に写っていたのは、端正な顔立ちの男性でした。鳶色の髪にコーヒーみたいな色の瞳。私に視線を合わせているのか顔は同じ高さにありました。あ、格好は騎士っぽいです。

 と、そこまで思考が飛んでいってしまいましたが今はそれどころではありません。私は視線を巡らせ、部屋の様子を観察しました。無機質な灰色一色の部屋にはテーブルが一つ置かれ、向かい合えるように椅子が設置されていました。どちら簡素な作りで、特に椅子は座り心地が悪そうでした。壁には太陽神にまつわる神話のタペストリー。

「ねぇねぇ、そんなのじゃなくて俺を見ようよ。こんなトコより俺の方が断然華があるでしょ。君の目って節穴気味だよね」

「はぁ」

 首を傾げながら頷きます。どっちだ。

「気味、ってことはそういう傾向にあるというだけで完全に節穴ではないということですか?」

「気になっちゃうのそこかぁ。でもいいや。俺じゃなくても俺の言動に関心を向けてくれたってことはいいコトだよね〜」

 このチャラさ…ルドさん似!

「あの…どちら様で?」

 手錠を外してくれている男性を見ながら私は問います。

「え? 気づけない?」

 男性は困ったようでした。困っているのはこっちですよ。

「シャルロット。私達の他に誰かいるのか?」

 相変わらず目隠し+手錠のオーディンさんが言います。

「他の人間の気配は感じないのだが、ここに入ってこられたのならよほどの手練れだな」

 私はぎょっとして他のメンバーを見ます。オーディンさん、トールさん、バルドルさん…いないのは……ロキさん?

「貴方…まさかロキさん?」

「かもね〜」

 うざいなこの人。

「ロキさん、オーディンさん達の手錠、取ってあげてください」

「イヤだな」

 友達じゃないのかよ、と私は思ったのですが、ロキさんは大人しく皆さんの手錠を外していきます。そう言えば、ロキさんって嘘をつく癖があるんでしたっけ。面倒な人ですね。

 全員が自由の身になると、トールさんがロキさんに問いかけます。

「どうやって手錠のカギを入手したのだ」

「こうやって」

 瞬きをしているうちにロキさんの姿が金髪に神官様の装いをした壮年の男性に変わりました。

「連行される前に神官の一人として紛れれば助けることも可能なわけだ。だから鍵を奪ってこれた」

「ふむ…そうか。では帰るぞ」

 よく理解していなさそうなオーディンさんがドアノブに手をかけます。

「いやいやいやいや。まだ逃げるのは早いですよ!」

 バルドルさんが元父親をとめにかかります。

「見張りがいたらどうするんだ」

「見張りはいない。俺がこの騎士の格好で見張り役をやることになっている」

 言い終わったロキさんの姿は先程の男性騎士のものでした。

「脱出方法を教えろ、ロキ」

 トールさんの指示にロキさんは頷き、語り出しました。




「と、いうことで彼女たちは釈放してもいいと思う。どうかな、ファイ」

 私達を連れ去ったガラの悪い神官さんの名前はファイさんというようです。だって、彼に語りかけているブレントさんがそう言っているから。

「どうも何も…先輩の判断を俺が否定できるはずがない。というか先輩の観察対象ですから俺に権限はありません。…それなのに勝手に動いたことに関しては、本当にすみません」

 ブレントさんが先輩だそうです。おぉ、なんだか意外かも。

「君は何か焦っているようだね。悩み事があるなら相談には乗るよ。じゃあ、僕は彼らを釈放するから…君は、反省文でも書いてくれ。枚数はいつも通りだ」

 いつも反省文書いてるんですかね、ファイさん。とんでもねぇ、です。

 ファイさんが去ると私は柱の後ろから出ました。

「助かりました、ブレントさん」

「いや。ファイが証拠不十分で動いて、まだ「市民」の域を出ていない君たちを取り押さえるのは規則違反だから釈放したまでだ。神だという証拠が見つかったら研究対象にされかねないから気をつけろと彼らに言ってくれないかな?」

「はい」

 はい、って言いましたけど、神様を研究対象にする組織って怪しくないですか? そこに所属しているブレントさんも危なくないですか?

「まあ、とりあえず僕が君達を出したことになったから、もう安心して家に帰れるはずだ。出口まで案内するから彼らと合流しよう。どこにいる?」

「こっちです」

 私はそう言って歩き出しました。

 ロキさんは、前からブレントさんについて知っていたらしく、鍵を取ってくるときに見かけたので今回協力してくれると考えたそうです。なので面識のある私がこそこそ隠れながら、ロキさん情報に従ってブレントさんに会いに行き、事情を説明しました。これでやっと家に帰れます。

「ところでブレントさん、ここ、どこですか?」

 ブレントさんと廊下を歩きながら私は質問します。

「ここは、聖歌隊の本部だよ」

「聖歌隊って、歌を歌う?」

「いや。歌竜の保護・観察・記録、あとは現世の神の管理…それから政府から仕事を依頼されたりもするかな。歌竜と神に関係しているから聖歌隊という名前なんだと思う」

「どうしてブレントさんは所属しているんですか?」

「姉が信心深いせいで聖歌隊を知っていて、兄と僕を入隊させようと母にせがんでいたんだ。男性恐怖症だったから僕達が疎ましかったんだろう。母も家族を恐れる娘を見ていられなくなったのか、僕か兄かどちらかを入れると言い出したんだ。兄は音痴だったから、聖歌隊を額面通りに受け取った僕は代わりに入隊したわけだよ」

 ブレントさんのお家事情は複雑なようです。よかった…好条件だからと結婚を承諾しなくて、本当によかった……。

「まあ、聖歌隊は本当の聖歌隊に所属するのが最低条件だから僕も歌は頑張った…」

 しみじみと語るブレントさん。苦労があったのでしょう。まさか、音痴とか?

 仲間意識が芽生えて嬉しくなる私でしたが、

「学校で主席取った甲斐があったよ」

「え?」

「実は僕、音楽学校に通っていてね」

 ……この人が親の七光りと呼ばれることを嫌って様々な分野で努力しているのは知っていましたが、なんか腹が立ちます。私が音痴だからでしょうね。どーせ音痴ですから。歌竜だけど音痴ですから!

 心の中で拗ねているうちにオーディンさん達と合流することができ、馬車で金魚草の近くまで送り届けてもらいました。

 その際、

「あそこが聖歌隊の本部だったと言うことは忘れてほしい。と言っても場所が分からないんじゃ広めようもないけど。一応、今日の出来事は無かったこととして考えて。でなければ、こちらも動くことになるから」

 と釘を刺されました。やけに「これ聞いて良いの?」ってこと教えてくれると思ったら、口封じの準備はいつでも、というわけですね。ブレントさんが分からなくなりそうですよ。


「では、皆さん。しばらく派手なことはしないでくださいね」

「ああ。この愚か者共にはきつく言い聞かせておく」

 トールさんはお母さん的ポジションなのかもしれませんね。

 神様達と解散した私は、ぽてぽてと歩いて帰ります。途中で降ろされたのは聖歌隊が関わっていたという痕跡を消すためだとか。ルドさんに知られたら厄介そうなので、その考えは素晴らしいと思います。

「シャル!」

 金魚草まであと少し、というところで大声で名前を呼ばれました。足下を見つめながら今日を振り返っていた私は、驚いて顔を上げました。

「ルドさ…」

「遅い」

 は? と言う間もなくルドさんは私の肩を掴み、安心しきった顔になりました。

「心配した…」

「ルドさん帰ったんじゃないんですか?」

「オリヴィエが騎士団までシャルを探しに来た。だから俺も…探し回ってて…はぁ…疲れた」

 ルドさんは肩で息をしていました。迷惑をかけてみたいです。

「ご心配おかけして申し訳ありません。でも、大丈夫ですし…」

「そういう言葉はいらない」

 ルドさんは真っ直ぐに私の目を見据え、責めるような口調になります。

「あんたはこの先どうなるか分からない。だから、もう俺の目が届かない場所には行かないでくれ」

 そんな無茶な。と思いましたが、ルドさんの瞳は何か大切なことを訴えるような、上手く伝えられないような、もどかしい感情が写っていました。

「とにかくあんたは俺の側を離れるな。目の届かない場所に行くな。ただ、元気で笑っていればいいんだ」

 人をすぐ死ぬ人間みたいに言わないでくださいよ。まあ、心配される気持ちも分からないでもないですけどね。私とルドさんの出会いは私の身投げ未遂時でしたから。

 私、そんなに危なっかしいでしょうか、と思いながらルドさんの後に付いて金魚草に向かいます。




 逃げるわけがないのにしっかりと握られたその手は、あまり嫌ではありませんでした。

 



溺愛ではなく心配になってきました。

次の次くらいで物語を動かせるようにしたいです。

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