第3話 ■松浦博之警察官登場
■松浦博之警察官登場
17時50分ごろ、一人の警察官が歩み出てきた。
松浦博之「【録:今回の事故についてるんです松浦と申します。今回の事故を担当させてもらってます】」
「はぁ、でも、あの」
「はい、あなたの名前は?下坂さんね、で、あなたは?」
「工藤直子です」
下坂啓二「【録:あ、あのね、冷静に聞いてもらえるように言わせていただいてもらえませんか?】」
下坂啓二は、まるで、直子が冷静じゃないように、警察官に言い出した。
直子は、この頭がおかしい男が、ついさっきまで脇野病院の裏路地での巻き舌だらけで、喚き散らした姿を思い出すと、何を言ってるんだこいつとしか思えなかった。
「じゃ、まず、こっちに、名前と住所と連絡先を書いて」
もう、よくある記入の用紙をクリップの付いた板を渡されて記入した。
そして、その後、松浦警察官は言った。
「じゃ、連絡先を交換してもらってね、はい」
直子は、自分の名前と、携帯番号、そして住所も書いた紙を渡した。
から渡された紙には、「下坂090-○○○○―××××」
と、名字と携帯番号しか書かれていなかった。
事故を「された」相手に、それしか書かない?私、住所書いちゃったぞ?
もちろん、車の運転をしない、免許を取ったことのない直子には、全く初めての事だった。
そういうものなの?
下坂啓二「【録:で、明星(病院)にあのー、明星(病院)について来てもらうよう言うてもらえません?】」
下坂啓二は松浦警察官に向かって言った。
松浦博之「【録:ほんで、あのーお互い話してもらってまずは】」
下坂啓二「【録:工藤さん、ね。あの、明生(病院)にね、今電話したら見てくれるんで。お金払わないといけないんで】」
工藤直子「【録:いや払いません】」畳みかけるように言った。
工藤純「【録:いや、払わないと、あの、どれくらいの怪我の程度かっていうのは、それは聞いたほうが】」
下坂啓二「【録:払わないとダメです】」
工藤直子「【録:払いません。私何もやってないし、払いません】」
下坂啓二「【録:いや、防犯カメラ映ってるから、それダメですよ】」
防犯カメラに、何が映っているというのか。
工藤純「【録:ああ、身体に当たってないし 】」
工藤直子「【録:払いません。体に一切触ってないし】」
松浦博之「【録:それはそれでいいじゃないですか。民事で裁判してもらったら】」
工藤直子「【録:払いません】」
警察官C「【録:民事でええ】」
ここで、もう一人、別の警察官の声がした。これは、私に暴行されている動画を消せと言った警察官か?
全員、松浦警察官以外はマスクをしているので、目と声しか分からないのだ。
松浦博之「【録:もう払わへんね】」
工藤直子「【録:私、何もやってないんで、どこ行っても払わないんで】」
下坂啓二「【録:どこ行ってもじゃなくて!】」
下坂啓二は声を荒らげた。録音を聞くと「どこ行っても」という言葉に反応している。
自分に、怪我の診断書を何件でも書いてくれる医者のいる病院へ行く、そこでしか「この状況で診断書を書いてくれる医者はいない」
だから、「どこか別の病院へ」という選択肢はないんだと言いたかったらしい。と言う事かと今では思う。
それにしても、おかしいくらいキレている。
そして、その言葉に突然後ろから
松浦博之「【録:《《あつくならない》》】」。
松浦警察官が下坂啓二に向かって強く声をかけた。
その時点でも、なんだこいつら、異常なこいつら……。「お友達だ」。どう、どこから見ても、結託している。
警察官C「【録:民事でやればいい話】」
そして、何だか、覚えてきたセリフを言うかのように、別の警察官は同じ言葉を繰り返した。
それは「五七五」の七五のように、カルタの下の句を読むようなリズムを感じた。
下坂啓二「【録: いや、ちょっと待ってください。自分で払わないと】」
警察官C「【録:だめなんですよ】」
この警察官Cは、松浦警察官と盛山警察官の話の間に挟まってくる。一生懸命合いの手を入れてくる。
工藤純「【録:申し訳ありません、あの】」。
下坂啓二「【録:診断書とか自分で払わなければいけないんですよ】」
工藤純「【録: あの、前を遮ったことは…】」
工藤直子「【録:待ってください、あの、前を遮ったことは本当に申し訳ありませんでした……】」
一回目の強要された謝罪。直子は、純と共に大勢の人々が行きかう横断歩道で、頭を下げた。
下坂啓二「【録:自分で払わないと】」言葉を重ねてきた。
工藤直子「【録: 待ってください】」
そこへ松浦警察官が下坂啓二に向かって口をはさんだ。
松浦博之「【録:あのー立て替えて。立て替えて、それを請求したらいいんです】」
工藤直子「【録:払いません。一切払いません】」
下坂啓二「【録:あー、ま、一切払わない言うても、あの、そこはね】」
工藤直子「【録:一切払わないんで】」
松浦博之「【録:弁護士付けたら終わりやな】」
警察官C「【録:弁護士付けたら終わりやな】」
警察官C、誰か分からない、名前を知らない、しかし、中心になって話している松浦警察官、盛山警察官、その次の「子分」みたいな位置なのか、それとも新人なのか、一緒に、同じセリフを繰り返す。まるで、「言い方を一生懸命、習おうとしている」かのように。
しかし直子もきっぱり言った。
工藤直子「【録:はい、いいですよ】」すると突然下坂が
下坂啓二「【録:どうぞどうぞ】」
と言い出す。現場でも全員が「はあ?何言ってる?」と顔を見合わせる一瞬。録音の音声でもその異様な雰囲気でもそうだが。
松浦警察官は「ちっ、またか、下坂」と頭の中で舌打ちをした。
こいつ、カッとなったら自分が何を言っているのか分からなくなる。警察が味方になってるんやから、そんな喚き散らさんでええのに。ましてや京橋横断歩道の大舞台。往来の人に、違和感があったらいかんやろう。落ち着け下坂。
下坂啓二「【録:堂々と、一切払わないって】」
工藤純「【録: あの、前を遮ったことは本当に申し訳、その点は申し訳なかった】」
直子は、また、大衆の中で深々と頭を下げた。二度目の謝罪。純も横で頭を下げている。
下坂啓二「【録: 払わないって。ちょっとまって、松浦さんちょっとこれ大変やわこの人大変やわ】」
ここまででも充分だが、松浦警察官と下坂啓二は、コンビのようなメンバーのような関係か。
工藤直子「【録:で、あの、待ってくださいね。 あの、もひとつね、あの、動画も全部消しましたんで】」
ギロリと興奮しきりの下坂啓二をいったん、宥めるように、目で合図をした。「まぁ、任せておけって」
松浦警察官は、呆れたように直子に言い放った。
松浦博之「【録:いやもうそれは、民事で揉めたら刑事でも揉めます。ま、それは覚悟してもらっていいです。そのスタンスでおるんやったら。お好きにしたらいいです、ほんなら再現検分していこうか】」
■自転車保険には入ってないんですか
そこから、再現見分、どのように事故になったのかと言うのを、再現して写真を撮るという事で、移動した。
盛山敦志「【録:お二人で、こんな感じでした、と言うのをやってみます】」
盛山警察官は、説明し始めた。
盛山敦志「【録:え~っと~ちょっと表面撮りたいんで。あ、そうそう、人が多いね、ちょっとこっちに、クリーム色のやつ(下坂のミニサイクル)をこっちに持って行って】
警察官C「【録:了解です】」
盛山敦志「【録:今からね、衝突時のどんな状況、まぁ大体もちろん記憶です。記憶になりうんで1センチ2センチ争う話でもないんで、大体こういう感じの、こういう角度くらいでぶつかってる、と。で、大体このあたりとこの辺りぐらいが当たってぐらいの再現ちょっとお互いでしてほしい。で、それを写真撮ります。僕らも防犯カメラ見て答えは分かってるんで明らかに違うようでしたら、修正入れますけど、お二人でこんな感じって、やってみてください。なので、後でちょっと自転車またがってください】」
そして、横断歩道の南東側、2mくらいのところで
盛山敦志「【録:この場ですね。止まったまんまね】」と言いつつ、写真を撮影。
そうしながら、松浦警察官は全く「急に」直子の方にキョロリとした目で向き直って言った。
松浦博之「【録:ちなみに自転車保険は入ってないんですか?】」
工藤直子「【録:入ってないです】」
松浦博之「【録:車両保険に特約?それも入ってない確定で大丈夫です?調べてみたら、実はありましたとか、加入は義務ですよ?いつ購入されたんですか】」
純とも顔を見合わせた。「入ってないよね?」「うん、そんな支払いの引き落としも記憶にないから」
防犯登録のシールを確認した「滋賀県?2016年やったら、もう保険とかも義務ですけど」
工藤直子「【録:滋賀県なのは、ネットで……ネットで買ったから】」
盛山敦志「【録: オークションで。オークションで?違う? 】」
オークション?いや、Amazonで買ったと思うけど……オークションでは買わないな、電動自転車を。
工藤直子「【録:これ、ネットで買ったけど。だいぶ昔やから。どうだったかな】」
盛山敦志「【録:それはちょっと帰ってから、調べてみてください、車両保険にも特約があって、月々200円から300円出したら、とかもあるんで。まぁだから、それを調べてみてください、もう僕は一般論をお伝えしているだけなんで選択肢がね、無いならいいです】」
改めて録音を聞き直すと、ここも、かなりおかしな話の流れになっている。実況見分しながら、急に自転車保険の話を切り出す。
後になれば、直子の、今回の事だけではない。
《《何度もこれまでに、同様の事で、自転車の保険に加入していると、保険屋さんに連絡をして、保険金から搾取してきた》》、という意味だと思いつく。本人を相手にするよりも、保険屋に警察から話を向けた方が、疑われることもなく請求が通るからだ。
この時現場で、不自然な流れの中「保険に入ってないの」と突拍子な質問をしてきたのか、訳が分からなかった。
しかし、この事件はつまり、個人を陥れるのが本来の目的ではなく、「《《保険会社から、保険金を騙し取る、保険金詐欺事件》》」
これが、大阪京橋警察交通課の、目論んだことだったのだ。
工藤直子「でも、監視カメラって、どんな感じだったんですか?私は、それ見てもらったら、どんな風に走ってたか、分ると思うんですけど」
直子は言ってみた。
松浦博之「監視カメラは見ましたよ、僕らで確認しました」
松浦警察官は答えた。
工藤直子「それ、私が事故をしているの言うのなら、見せてください」
松浦博之「それは出来ません」「え?何でですか」
松浦博之「監視カメラの映像を見たければ、裁判してください、それで、開示請求してください、ほんなら見せますわ」
工藤直子「……そんなん、だって自分でも確認したいし。そんなんで、私、事故した犯人って、そんなん納得できません」
松浦博之「カメラ映像は見せられない決まりです」
ここのやり取り部分は、録音に入っていない。ここの流れなのか、また絶えず電車が通る轟音の中、録音が途切れているところがある中だったのか。
下坂啓二「ちょっと、保険屋さんに電話してきますわ」
松浦警察官は、右手をさっと上げて友達にするように、応じる恰好をした。下坂啓二が近寄り、ちらっと、自分の携帯を松浦警察官に見せて
「今回はこっちにしときますわ」と。直子の見ている目の前で。
そういうと、下坂啓二は路地へ入って行った。直子はその後ろ姿を見た。
「《《今回は、こっちにしときますわ》》」だと?こいつら……。目の前で携帯見せたぞ?
そして、松浦警察官は車両を眺めながら、言い出した。
松浦博之「【録:...いいですか、そしたら、結論払わへんって言ったら民事裁判、おそらくなるでしょうから、それで義務は出てきます。うん。それで払いなさいやったら払わなあかんでしょうし】」
盛山敦志「【録:さっき言った通りですよ。だから、相手さんは診断書持ってきます。で、それに打ち勝つ何か資料がないと、払いなさいになると思います。口だけじゃダメなんです。ほんでもう、もうね、あの、こんだけ説明してたからわかったと思ったんやけれども、もう払えませんって言ったらもう相手多分、多分《《修復不能》》やと思うんすよ】」
本当に、下坂啓二は一度も、どこも一言も痛いとも言わず、受診もする前から警察官が「診断書持ってきます」。そんなおかしな話を真に受ける警察?いや違うこれはシナリオだ。修復不可能?
松浦博之「【録:もうなんか刑事事件も受けないといけないかなー、そんなスタンスで来られたら】」
盛山敦志「【録:説明したでしょ、僕だから】」
松浦警察官と盛山警察官は、見事な脅迫のキャッチボールを繰り広げる。
松浦博之「【録:まあ、あのスタンスで来られたら、多分、払えません、払えませんやったら向こうさんは歩行者ですよ。ここはサンクチュアリ、聖域ですわ。それを無謀な斜め横断してね、ぶつかってその挙げ句の果てにはもうそのまま行ってしまってそら刑事罰も受けて、民事罰も受ける話になりますわ。もう第一ボタン掛け違えてますからね。うちらが直す必要もないんですよ。ご自身が選んだ選択ですから、それはもうご自身で受けてください】」
工藤直子「【録:じゃあ、……?】」
盛山敦志「【録:いや、だから、それを僕の説明を聞いて判断されるのは奥さんですよって僕言ったじゃないですか。最終的に。それで今選択された行動をとられたわけですよ。払えませんって】」
松浦博之「【録:だからもう僕ら知らないです、もう知らない。それはもう民事で、民事で裁判で2年も3年も揉めはる方ありますわ】」
盛山敦志「【録:僕言ったでしょ、同じこと何回も。2年も3年も揉めて】」
松浦博之「【録:挙げ句の果てに裁判官から払いなさい。そら払わな、払わざるを得んね】」
工藤直子「【録:……デモ……】」
修復でも何でもいいから、とにかく解放される方法は?
直子はそれしか考えていない。それでも……。
盛山敦志「【録:何を天秤に取るかって話なんですよ。だからデモじゃないですよ】」
見事な、松浦警察官と、盛山警察官の連係プレートークタイムが始まっていた。
工藤純「【録: 払ったほうが良かったか】」
純は、複雑な顔で、そう言った。実は、純も頭の中で直子と同様の事を考えていた。
ここまででも充分この警察の異常な会話を「《《録音できているはず》》」。
どうやったら、早くここから離れて、録音を確認できる?
それでも、……ボイスメモのボタンは押せてる。これ、もし録音できていなかったら、お母さんはどうなる?とにかく早くこいつらから、離れる方法は?
……いや。この様子だと、もっとヤバい事を言い出す可能性もある。
盛山敦志「【録:それは個人差やから。だから奥さん今選択されたんで、そしたらそれでいいんじゃないですか】」
松浦博之「【録:多分刑事罰も民事罰も多分相手さんは訴えてくるでしょう】」
盛山敦志「【録:僕それも説明しましたよね。だからそれを理解の上でされた行動やと僕は思ってるんで何もあの間言及しなかったんですよ。止めたりも何も言わんかったんそういう意味】」
松浦博之「【録:受けて立つんでしょ?何か勝てる要素があるから多分受けて立つんやなと思ったんですよ】」
受けて立つ……?
ここまで口を挟む隙なく、二人で流れるように話しているのだが、そもそも、直子が「絶対払いません」と言い続けたのは、そもそも盛山警察官が「知りません、払いませんと言うのもひとつですよ」と言った言葉のせいだった。
盛山警察官はそれとは《《全く真逆の事》》を、今は言い続けている。
もう、その翻し方が気持ち悪いレベルで。それでも。
工藤直子「【録:いや、言ったじゃないですか】」と、言ってみる。それを遮るように盛山警察官は続けた。
盛山敦志「【録:いやいやいやいや、ほんなら払わん意味わからんじゃないですか、僕、だって説明したじゃないですか。診断書に対抗する武器がないと勝てないっすよ】」
工藤直子「【録:え、診断書が出るんですか】」
盛山敦志「【録:おそらく出ますよ。十中八九】」
工藤直子「【録:えー…… 】」
盛山敦志「【録:十中八九出ます。無傷、無傷って言うのは、中身。じゃあ、体、中身打撲とか】」
AIに聞き取ってもらってもここ、「無傷」と言ってる。無傷に見えるというか、その後私の電動自転車を追いかけてきて、引き倒して、ここまでに一切どこが痛いとも一言も言っていない人間が、打撲?「診断書が出るような打撲?怪我?」
(この事に関しては、また、章を変えて検証していこうと思っている)
工藤直子「【録:じゃあ引っ張られた時、怖かったとか、え、そういうんじゃないんですか】」
後になって、録音を聞いていると、直子はまだこの時点でも自分が倒されたり、手をひねられた事の方を、自分も痛いのにと考えていた。痛いというか力が入らない。動かしにくい。
盛山敦志「【録:え、それはだって、逃走してる犯人を制圧する行為ですよ。正当行為です。逃げてはるわけですから、事故起こしてんの分かってて】」
松浦博之「【録:逮捕行為にも、逮捕って言われても、うん】」
……逮捕行為?……逮捕?
盛山敦志「【録:それは正当行為やと思いますよ、私は。ちょっと軽く考えすぎですわ。僕だからあんだけ時間かけてお話ししたのは奥さんはそこに至ってほしかったんですよ、実は】
工藤直子「【録:……ああ、そういうこと……か】」
盛山敦志「【録:いや、でも、いや知らないですよ、もうあとはもうだから僕らもやることやるだけなんで。これで相手の人が診断書出します、訴えますって言われたら。ああ、はいそうですか言うて被疑者として手続きしていだけなんで、もうただそれだけですわ。淡々と手続きを。息子さんちょっと途中でね、言うたら、応じようとされてるような様子あったんで】」
工藤直子「【録:え、そうなの?】」
直子は純の顔を見た。
工藤純「【録:……一瞬払ってもいいみたいな】」
この時純は、直子以上にもう、この異常な警察官たちから、とにかく早く離れるために、としか考えていなかった。
こいつらに、何を言ってもどうしようもない、とにかくこれを、相談するところに行かないとだめだ。どうしたらいい?
盛山敦志「【録:だからそれも入ってないでしょ。息子さんがどんな対応されようとしてたかも。だから冷静じゃなかったってことなんですよ】」
盛山警察官はもう、シタリ顔でそう言った。
松浦博之「【録:だからそこを切り替えるかやね。だから感情出さんとってくださいよって言ったじゃないですか。冷静じゃなかったんで、すみませんって言うしかないわね】」
松浦警察官も、勝ち誇った顔でそう言い放つ。
松浦博之「【録:だって100ゼロ、100ゼロなら直せますよ】」
盛山敦志「【録:僕最後に設けるって言ったじゃないですか】」
その、100ぜロって……どういう意味?100%私が悪いって言われているの??後ろからぶつかってこられて?
盛山敦志「【録:だから最後に僕らの手続きが終わった後に、きっちり設けますねって言ったじゃないですか。そこでなんか感情的にむき出しになるから】」
感情、むき出しに?いや、当たり屋だと言って、叫びまくった男だぞ?それに、本当に私は後ろから当ててこられた……。
引き倒されて、叫ばれた。それをこいつらに主張しても、聞いてもらうことはできないのか?私が本当に「加害者にされるのか?」
直子はどう対応することが、正解なのか分からなかった。
とにかく、帰らせてもらうためには?どうすればいい?
松浦博之「【録:だってどっちみち病院は行きはるんやから】」
どっちみち、病院へ行きはるって、どっこもケガしているそぶりもなく、痛がってもいない。何しに行くねんとしか思えなかった。
しかも、下坂啓二は病院にまだ行ってもいない。その段階で警察官が病院の治療費を払えと言ってくる。
盛山敦志「【録:診断書出るでしょ。自転車やし、車両やし】」
盛山敦志「【録:え、実際こう自転車、こう歩いててね、ボコッて横から来た自転車とぶつかったらこうなるじゃないですか、で、この人の状態がどんなんかもわかってない状態で、いやそんな怪我ありませんわってわからんでしょ手首ひねったりするじゃないですか】」
工藤直子「【録:え、じゃあどうしたらいいんですか】」
直子は「これは、もう、あかんやつや。どうしても、こいつら、払わせようとしてるんや」絶望の中にいた。
工藤純「【録:ミスったなー……】」純はつぶやくように、抑揚なくそう言った。
盛山敦志「【録:だから僕説明したでしょ。何回も同じこと言わせるんですか】」
ますます、声のトーンを上げて盛山警察官は詰め寄った。
松浦博之「【録:だから国にも、国にも罰金を払った上で、相手にも民事裁判で、えーと、病院代も払わなあかん流れになってくるんじゃないんですか。穏便に済まなかったら】」
盛山敦志「【録:いいんじゃないですか、もう僕らの手続きしましょうよ、最低限】」。
工藤純「【録:ミスったなー. 】」純は再び、つぶやくように、抑揚なくそう言った。
この時の録音を文字起こしを見つつ、純は
「ほんまにこいつら異常すぎて、こんな事を言う警察がいるなんて。必ずこれを、公にしてやる。こいつらにここで何を言っても無駄や、だからとにかく早く離れることを考えよう、としか思ってなかったよ」
と後日、直子に話した。全く同じように考えていたのだ。
工藤直子「【録:あの人もうここで打撲とかも言うてるんですけど】」
松浦博之「【録:ちょっと待ってもらっていいですか。まずちゃんとここでやってからや。ミスったと思うんやったらもうほんまに。息子さんちょっとだいぶ手伝ってあげて。完全に冷静じゃないからから】」
純はそれを聞いて「はい」と頭を下げた。「……お母さん」
警察官C「【録:で、事故したのは、奥さんがぶつかってしまってるんやから。歩いてるね、押してる人に対して。それもカメラ見て、それは確実なものになってるんで、そこを覆すようなことはないです】」
さっきの別の警察官、が話し出す。
警察官C「【録:ってことはもう、うん。外傷がなくてもね、病院行って診断してもらって、診察料払ってっていうのも、まぁ、致し方ないこと。でしょ?うん、でしょ?まぁだからもう、あ、そう、それで思ってますっていうのは、この手続き終わったらちゃんとやるんで。まぁやっていくから。ちゃんとそういう手続き終わってからね。息子さんも手伝ってくれるから、お話はね】」
なんだろう、一生懸命、セリフを思い出しながら、喋っているような?
盛山警察官と、全く同じような内容を、直子に話す。これは、コイツは?
警察官C「【録:さっきどうしましょう、順番で。次、謝りたいっていうかお話……】」
工藤純「【録:あ、本当申し訳ないです、本当。今回のことは】」
工藤直子「【録:一言……あの、私があんな風に言ってしまって。で、あの、不愉快な思いをしまって、本当に申し訳ございませんでした】」
ここで、京橋の横断歩道、大衆の面前で二度目の謝罪。息子と二人で、深々と頭を下げる。
その時の、松浦警察官と下坂啓二の態度を忘れない。トンデモなく嬉しそうで勝ち誇った顔だった。
下坂啓二「【録:それはいいんですけども、今、保険屋と喋ってねえ、えっとね、病院行くっていう。払って、いや、その治療費はね……
工藤直子「【録:あ、え、あのね、もちろん払わせていただきます】」
もう、そう言った方が、というか、そう言わないとこいつらからは解放されない!……こいつら……。
下坂啓二「【録:そういうふうにを言うてくれはったら僕も……その、払わへん、全然払わへん、ていうのが】」
工藤直子「【録:申し訳ないです、本当】」
できるだけ、本気で謝っている風で言ってみる。
下坂啓二「【録:その、あ、手続き、そのー、ちなみにちょっと誰が……】」
工藤直子「【録:息子です】」
下坂啓二「【録:あ、息子さんが。あ、息子さんが、息子さん、ちょっといいですか?お母さんと代わりますんで。
工藤直子「【録:あ、申し訳ございませんでした、本当】」三度目の大衆の前での強要された謝罪。
下坂啓二「【録:あの、お母さんね。とりあえず僕、明生(病院)に行きますんで、後で明生(病院)が本人に、その、被害者の加害者の方を連れてきてください。で、それでちょっとお金払って僕も、その、向こうちょっと見てもらわないといけないんで】」
工藤純「【録:結果次第で】」
下坂啓二「【録:いや、だからそれは行ってみんとわかんない】」
下坂啓二「【録:はい。んで、もう分かりましたから、それは今松浦さんも、こころ広く聞いてくれって言われたら、それは分かりましたから。とりあえずは病院を、ここで今現場検証今からしますから】」
松浦警察官は、いつ下坂啓二に「心広く聞いてくれ」と言ったのやら?
そんな話ひとっこともしてないけど。
警察官C「【録:現場検証一緒にね、あの、下坂さんもどう歩いていたらこんな風に行きましたっていうのをこれ持ってもらって、再現で写真撮りたい】」
下坂啓二「【録:はい。はい】」
松浦博之「【録:うん。だから信号変わったら、それでいい?ほんなら現場……】」
警察官C「【録:もうここで。あ、ここで。いやいや、現場、衝突状況のね】」
そしてこの、トンデモ捜査劇場、台本通りに繰り返されるセリフの数々、こうやって書いていて思う。切り取りのものではなく「全編をアップロードした方が良かった」と。
残念ながら抜粋ですが、youtubeの「チャンネルginnnha」にて、公開中です。




