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ー 005   お気に入りからのまさかの発展

 カララン!

 まるでいらっしゃいと言うように鳴ったドアの上に付けられている鐘。

 小さい癖に意外と大きな音を鳴らしやがる。

 勢いで店に入ってしまったものの俺は少し後悔していた。

 狭い店に客は俺とアヌエヌエの二人。

 しかも俺はアヌエヌエの左手を握ったままだ。

 上からのライトはやんわりとした灯り。

 商品棚のライトは対照的に、キラキラと魅せる光。

 店の2種類の光は幻想的な雰囲気を作り出している。

 まあこれも商品を買わせる秘訣なのだろう。

 ちなみに店員は少々頭の毛が寂しくなった白髪の男一人だけ。

 その癖、白い眉毛はどっさりと生えている。

 体格はまあまあよくて指は太め。

 やんわりとライトで照らされている肌は俺達と同じ色のはずだがどこかくすんで見える。

 それにその顔にくっきりと出ているしわで人生経験の豊富さがわかる。

 そんな店員は座ったまま無言で俺達を、じっと見つめてきた。

 うわ……変な目で見んなよ!

 店員のくぼんだ目の奥にある黒い瞳は俺達の仲を変に勘ぐっている。

 参ったな。何て言えばいいんだ?

 さすがにアヌエヌエは聖女さまなんてバカ正直に言うわけにはいかねえし。

 じゃあ何で二五の俺が四歳の少女を連れてこんな店に来てんだとなると……!?

 しかも手を握ってるし。

 おい、違うからな!

 苦笑する俺。

 そわそわするアヌエヌエ。

 じっと見つめる店員。

 3人とも何も言わず気まずい空気が流れる。

 俺はまだアヌエヌエの手を握ったまま何故かはなせないでいる。

 何とか空気をよくしようと笑う俺。

 俺をじっと見つめるアヌエヌエ。

 俺をじっと見つめたままの店員。

 だから違うからな!!

 このままでは有らぬ方へ勘違いされそうなんで俺はとりあえず何か言ってみることにした。

「お、おい……」

 そして出た言葉はこれだけだった。

 何やってんだ俺は!?

 もう助けてくれよ聖女さま。

 俺がそういう目で見るとアヌエヌエは店員の方を真直ぐ見つめた。

 店員はアヌエヌエをじっと見つめる。

「いらっしゃい、お嬢さん。お目当ては何かね?」

 すると普通に店員は接客を始めやがった。

 何だったんだよさっきまでの圧力は?

 俺をからかっていただけか?

 一気に気が抜けた俺はようやくアヌエヌエの手をはなすことができた。

 しかし今度はアヌエヌエが俺の手を握ってきた。

 おいおい……せっかく疑いが溶けそうだったのに何のつもりだ?

「ゆびわをください!」

 ……アヌエヌエはとんでもねえことを言いやがった。

 本気で言ってんのか?

 俺は変な汗が出てきやがったぞ?

「ほぉ……お嬢さん、お父さんに気に言ったものを買ってもらえるのかい?」

 すると店員は、にっこり笑ってこう言った。

 俺達を親子と思って見てたのか。

 すまなかった店員。

 疑って悪かったな。

 俺は心の中で何度も店員に謝罪した。

「ちがう! わたしはカイのおよめさん!」

 しかしアヌエヌエは声を張り上げた。

 しかも真面目な顔で。

あーぁ……また話をややこしい方に持っていきやがった。

 どうすっかなこれ?

 それよりアヌエヌエは何を考えてんだ?

  お気に入りからどうしてそんな考えまで発展する?

 どこでそんな言葉を覚えたんだか。

 はぁと俺が大きな溜息をつくと店員は、にこにこと微笑ましく俺達を見ていた。

 どうやらまだ俺達を親子だと思ってくれているようだ。

 よかった。

 店員にはこのままそう思っててもらおう。

 しかしそれを継続させるには俺はアヌエヌエの言う通りにするしかない。

 大丈夫か俺の財布?

 まあ一人者の俺は今までそう使うこともなかったから大丈夫だろう。

 そう思うことにした俺はアヌエヌエに好きな指輪をえらばせた。

 すると少し離れた処から見守る俺の前でアヌエヌエは一つの指輪をえらんだ。

 足りてくれよ俺の財布。

 そう願った俺は変な汗をかきながら会計に臨んだ。

 次回 ー 006   いつものワガママをきいただけ

 投稿予定日は2026年8月10日

 またこの日から5話連続で投稿します…たぶん

 うーん…最後まで書けるかしらね?

 がんばって書き上げるつもりですので、よろしくお願いいたします☆


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