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ー 004   マカヒキの夜

 アヌエヌエとマカヒキが行われている場所にやって来た。

 もう辺りはすっかり暗くなり、昼間の暑さはどこかへ消え去った。

 いや、消え去っていなかった。

 パライバトルマリン島は湿度が低く夜になると海から涼しい風が流れ込んでくるので

過ごしやすいはずなのだがこの人数のせいで熱気に溢れていた。

 どこを見ても人、ひと、人!

 わいわいとずっと喋っている。

 少々うるさい。

 こんなマカヒキに来るのは何年ぶりだろうか?

 それこそ俺がアヌエヌエと同じ年のころだから……いや、そんなことは考えまい!

 細かいことは考えないタチなんでね。

 久しぶりに来たマカヒキはやはり俺の子供のころと左程変わりなかった。

 うまそうな食べ物を売っている店。

 相変わらず食欲をそそられる匂いが漂う。

 キラキラとライトアップされている小物を置いている店。

 パライバトルマリン島での伝統色の強い土産品が所狭しと並べられている。

 特にパライバトルマリンというだけあって緑色を基調としたものが多い。

 しかしマカヒキのイベントはこれだけではない。

 マカヒキには数千人の人が参加するパレードがある。

 このパレードは三日間行われ特に最終日のパレードはマカヒキのメインイベントとなる。

 そこではパライバトルマリン島の自然を使って表現した色鮮やかな山車が

朝から夜にかけて島中を優雅に回る。

 これがどこで噂になったのか大人気となった。

 なのでその観客は世界中から集まった十数万人にも及ぶ。

 その他にもステージイベントもあるがアヌエヌエの目的はどうやら花型のそれらではないらしい。

 ずんずんとそれらに見向きもせずに俺の手を引っ張って歩き続ける。

「おーい! どこまで行くんだ?」

「……」

 俺を無視するアヌエヌエ

 何なんだ?

 俺は何かアヌエヌエの機嫌を損ねることしたか?

 たぶんしてねえと思うんだがアヌエヌエは機嫌が悪い。

 顔を見なくともそれはわかるが俺の手をはなさない。

 しっかりと自分の右手で俺の左手を握り歩き続ける。

 そうやって歩き続けるとマカヒキの賑わいから離れた処までやって来た。

 もう人もまばらにしか見えねえ。

 ここは、ぽつんぽつんと灯りが付いている店店が並ぶぐらいの灯りしかない。

 そのせいか夜空には今にも零れ落ちて来そうな満天の星空が見えるようになっていた。

 そしてアヌエヌエはある店の前で足を停めた。

 俺の足も止まる。

 すると夜風が二人の服を揺らした。

 二人の服が優しく靡き、その風は少し暑かった俺には心地よく感じた。

 しかしアヌエヌエは小さくふるえていた。

 寒いわけもないのにふるえていた。

「おい、どうしたんだ?」

「……」

 また俺を無視するアヌエヌエ。

 どうしたもんかと溜息をついた俺が、ふと店に目をやるとそこは小さな宝石店だった。

 ……まさかとは思うがアヌエヌエの目的地はここなのか?

 どこでこんな店を見つけたんだよ?

 アヌエヌエの足は動かない。

 また夜風が動かない俺達の服を揺らす。

 アヌエヌエの足は動きそうにない。

 何なんだよ全く!

 はあと俺は大きな溜息が出た。

「ほら、行くぞ!」

「あっ、カイ!?」

 今度は俺がアヌエヌエの手を引いた。

 ずかずかと進んで右手で店の戸を押して開ける。

 すると、カラランと戸の上についていた鐘が警戒に鳴った。

 俺はアヌエヌエの手をまた引いて店の中へと、ズカズカと進む。

 わけもわからずにそうしていた。

 そうして店に入ると、カララントまた鐘が鳴った。

 そんなことは気にせずアヌエヌエの手を引いて俺は店の奥へ進む。

 店の床は木造で歩く度に、ギシギシと軋むような音がした。

 並んでいる宝石達はライトアップされまるで散らばる星屑だった。

 そんな風に店はいかにも年代を感じる造りだったがそんなことはどうでもいい。

 俺はただアヌエヌエのために進んだ。

 次回 ー 005   お気に入りからのまさかの発展


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