ー 023 決着
灰色の雲の下、いよいよ目的地が見えてきた。
俺達の目的地はこの海に面した断崖絶壁の淵。
風は強く、この崖の下にはコバルトブルーだった海が激しい白波を立て
以前の面影を全くなくしている。
ここから落ちたら誰も助かりはしない。
いくら俺が頑丈だからって落ちたら即死だ。
海面でグシャリとなってそのまま約束を破ってしまう。
しかしワニ野郎は違うだろう。
あの皮膚ならそうはならないはずだ。
それでもワニ野郎をここから落とさなきゃいけねえ。
とは言ったもののどうやってワニ野郎だけをここから落とすか?
ズゥン、ズズン、ズズン!
って、いい考えが浮かばねえうちに
ワニ野郎が俺の退路を塞ぐように場所をゆっくりと移動しやがった。
俺の目前にはワニ野郎の顔が、ドンとある。
そしてギョロっとした目で俺をじっくり見つめてきやがった。
何だその目は?
もう勝った気でいんのか?
まあそうも思うわな。
てめえのその岩よりも固い皮膚なら俺を飲み込んでここから飛び降りても傷一つ追わないだろう。
しかし悪いが俺達はてめえを傷付けて倒すってことは一つも考えてねえんでな。
まっ一か八かにはなるがやるしかねえな!
そう覚悟を決めた俺はゆっくりと右に移動した。
すり足でほんの少しずつ場所を移動する。
するとワニ野郎は、何してんだバーカ的な顔で俺の様子をうかがっていたが
またデケエ足音を立てながら俺にゆっくりと近づいて来た。
さて……まだだ。
まだ近づいて来るんだ。
そうそう、そうじゃなきゃ俺をガブリとはできねえぞ?
俺とワニ野郎との距離は五メートルぐらいか?
もう一歩でもどちらかが近付けばガブリとなるだろう。
そういうことなんで頼むぜアヌエヌエ?
そう思った俺は空を見上げた。
すると急に雲の間から太陽が顔を覗かせた。
まあそうなることを知っていた俺は目を閉じていたから何の問題もない。
しかしそんなことを知らねえワニ野郎はどうだ?
薄目から俺がのぞく限りじゃあ結構まぶしそうな顔してんな。
じゃあ仕上げといくか!
俺が頷くと俺の隣に虹がかかった。
しかし今回のは今までかかってたのよりはデカい。
言うならば俺ぐらいの大きさ。
しかも、ゆらゆらと動きまでもがある。
ダンダンダンッ!!
その虹の動きにつられたワニ野郎はそのまま突進してきた。
「ガアァーーッ!!」
そして口をめいっぱい拡げてそのまま突っこんで来た。
その食えねえ虹を食う勢いで。
ワニ野郎、残念だったな。
そこに俺はいねえよ。
俺がいるのはてめえの頭上だ!
そう、ワニ野郎が突進して来た時、俺は力の限り飛び跳ねた。
そしてワニ野郎はそんな俺には見向きもせずにアヌエヌエがかけた虹の方へ突っ走った。
まあワニ野郎の左目は俺がさっき瓦礫をぶつけたから見えにくくなっていたからな。
そんなことで俺の存在に全く気付かなかったワニ野郎はそのまま崖を目がけて突進して行った。
俺はというとワニ野郎の顔のどっかに着地してそのままワニ野郎の尾の方へ向け掛けていた。
考える間もなく走り抜けなくては間に合わねえ。
つーかどこまでナゲエんだよ!
くそっ、面倒だ!
ダンッ!!
また俺は力の限りワニ野郎の体のどっかで飛び跳ねた。
しかし今度はさっきとは少し違う。
俺はできるだけ前へ向けて飛んだ。
ガラガラガラ!
すると着地とほぼ同時に俺の背後から崖が勢いよく崩れ落ちる音が聞えた。
ダバーーーン!!
それに続いたのは崩れた崖と共に海に落ちたワニ野郎の音だった。
どうかすっと水しぶきがここまでくるな。
ふう、何とか俺は無事か。
あと少しでも遅かったら、あれに巻き込まれていただろう。
まあ、あれだけ大神殿の瓦礫を食わせてやったんだから崩れて当然だわな。
もう遅いが知性の低いお前に教えてやるよ。
俺達が考えた作戦をな。
次回 ー 024 普通じゃねえ俺




