ー 022 聖女さまの加護
ザッザッザッ……。
ダンッダンッダンッダンッ!!
俺の身長の何倍もある木々をかきわけながら走る俺の後に
地面をグラグラと揺らすスゲエ音が追い掛けて来る。
俺は生い茂る木々や俺の身長とほぼ同じような高さの草が生い茂っている薄暗い中を
ワニ野郎から逃げている。
しくったか?
もう少しワニ野郎に食わせるべきだったか……。
ガギンッ! ガギガギンッ!
うぉっと! ぶっねえな!!
いきなり咬んでくんじゃねえよ!!
びっくりするじゃねえか!
しかしあんだけ食ったのにまだ食い足りねえのかよ?
まあ悪いがお前に喰われるわけにはいかねえんでな。
このままいかせてもらう!
道標に従って。
そう、俺はアヌエヌエに協力してもらい進んでいる。
だから一切ふり返ることなく進んでもワニ野郎の攻撃は全く当たらねえ。
ちなみに前だって考えずに進めている。
おっと、狡いとか言うなよ?
別に俺は正々堂々と戦って勝とうなんてこれっぽっちも思ってねえんでな。
そもそも体格差を考えてもみろ!
どう見てもあんなどデカい建物みたいで、しかも尖っている上に飛び出ている牙を持った反則野郎に
正面からぶつかって勝わけがない。
しかし用はどんな方法でも勝てばいいんだよ。
なあ、アヌエヌエ?
俺が笑うとまた目前に小さな虹がかかった。
わーってる。お前を信じてっからちゃんと導けよ?
俺はアヌエヌエを信じて走り続けた。
すると上り坂にかかって来たのがわかった。
ふぅ、あと少しだ。
そう、俺達はある場所へ向けて走り続けていた。
恐らく何一つ武器を持っていない俺があのワニ野郎に勝つ方法はこれしかない。
いや、もし持っていたとしても勝てないだろう。
あのワニ野郎は大神殿が上から崩れてきてもビクともしなかった。
それどころか瓦礫が目前にあろうとも気にせずに俺を殺しにかかって来た。
意外と口の中も丈夫みたいで大神殿の瓦礫やポッキリ折れた石柱を何十回もぶちこんだが
傷一つ負わせることはできなかった。
しかし目だけは違った。
俺がぶん投げた瓦礫でワニ野郎に傷を負わせることができた。
と言っても致命傷にはほど遠い。
やはり奴を倒すにはあれしかねえか……。
そんなことを考えていると木々がだんだん少なくなってきた。
そのおかげで少しは明るくなった。
そして生い茂っていた草もなくなってきた。
走りやすくなったのはいいんだが……。
「グオォーーッ!!」
ガギンッ!!
ワニ野郎からは俺の姿は丸見え。
今までよか噛みつき攻撃が近い。
つーかこれ本当に俺の命は持つのか?
いや、持たせなきゃいけねえんだったな。
生きるために。
神殿長を助け出すために。
そしてあのクソオヤジとクソガキとの約束を守るために!
いや、最後のにはつけ加えねえといけねえ。
そもそもあのクソガキのせいで俺がここまで来させられたんだ。
だからその親であるクソオヤジにはそれなりの対価を払ってもらわねえとな。
何が、アヌエヌエの指輪の代金の不足分をまだいただいていないだ?
もう絶対につりが発生してんだろ?
だったらそうだな……癪に障るが
オヤジの手作り具だくさんペイストリーを山積みでまずは手を打とうじゃないか!
あん時は一つしか食えなかった。
すすめておきながらてめえらだけで喰いやがって、くそっ!
もちろんホットチリなんか一滴も入れんじゃねえぞ?
あのせいで今でも口が、ヒリヒリしてんだよ!
だからオヤジ特製ホットミルクコーヒーも追加でな!
あれは絶品だった。
何倍でも飲める。
くそっ、そんなことばっか考えてたら腹が減ってきた。
しかしこんなピンチな時でもそんなことをかんがえられるってことはまだ俺には余裕があんのか?
だよな。
だって俺には聖女さまの加護があんだからよ!
さあ行くぞアヌエヌエ。
みんなとの約束を守るために。
次回 ー 023 決着




