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ー 021   イライラしてんのはこっちだ!

 ガギンッ!

「ガアァーーーッ!」

 ちっ、うるせえな。

 お前の噛みつき攻撃が何度も当らねえぐらいでそうわめくな。

 しっかしデケエ口だな。

 広げるともうないが大神殿の天井につくんじゃねえか?

 そんなことを思いながら俺はワニ野郎をあしらっている。

 ここは大神殿の入り口があったぐらいの場所。

 ここまでワニ野郎を誘導することには成功した。

「グウゥ……!」

 おいおい、そうイライラすんなよ。

 イライラしてんのはこっちだ!

 そう、あの家であのガキがいきなり俺のことを"お兄ちゃん”なんてほざきやがった。

 しかも、行かないでなんて泣きわめきやがった!

 オヤジはオヤジで、お兄ちゃんは必ず帰って来るから安心しなさいなんてほざきやがって!

 そうしたらあのガキは、ほんと、ダディ?なんてニセモノ親子ごっこを始めやがった!

 もちろん俺はそんなことに付き合う気はさらさらないから

黙ってこの島に向かおうとした。

 しかしあのクソオヤジがこんな冗談を言いやがった!

『カイ君、あの指輪の代金の不足分をまだいただいていないのだが?』

 何を言ってやがると思った俺が睨むとオヤジはこう続けやがった。

『まさか幸せの指輪があの時の君の財布の中身で買えるとでも思っていたのかい?』

 そう、オヤジはクソ真面目な顔で俺を脅してきやがった!

 何が、あれは聖女さまの前で君に恥をかかせないために儂が気を利かせたんじゃだ?

 他にも色々と俺を脅す言葉を並べやがったオヤジにして息子のあのガキもそうだ!

 何が、ダディ、カイお兄ちゃんは何か悪いことしたの?だ!

 だから帰って来れないの?だ!

 ふざけやがって……。

 ゴゴゴゴゴ!

 俺がイラついているとワニ野郎がスゲエ勢いで突進してきやがった。

 地面が揺れ、残っていた大神殿の壁が次々に崩れていく。

 まっ、これはこれでこっちからすれば都合がいいんだがな。

「ガアァーーーッ!」

 そうそう、そのまま大きく口を開けててくれよ?

 そう思った俺は落ちていた石柱をワニ野郎の口の中にぶん投げてやった。

 そのデカさはワニ野郎の口の半分程度。

「……!?」

 見事それを飲み込んだワニ野郎の足は止まり、口を閉じて目をキョトキョトと動かした。

 まあ、びっくりもするわな。

 しかしこれで何度目だ?

 もう何十回もぶち込んでるんだが……。

 素早さと力は凄いが学習能力はないみたいだ。

 ブンッ! ドゴゴーーンッ!!

 しかし集中してねえとワニ野郎はとんでもねえ攻撃をしてくる。

 今だってそうだ。

 ワニ野郎は自分の尾で目前にあるものをスゲエ速さで薙ぎ払いやがった。

 その風圧が俺に襲いかかって来る。

 これも、ただ後ろに避けるだけだと吹き飛ばされていただろう。

 残念だが微妙な距離まで下がり伏せたから俺はこの通り無傷だ。

 そう思った俺がワニ野郎を見ているとワニ野郎の様子に変化が見られてきた。

 息切れしている?

 それに動きが鈍くなってきやがった?

 ふーん……そろそろか。

 何でも破壊できる牙や尾があろうとも、鉄壁の皮膚があろうとも、

所詮お前はワニってことに変わりねえんだよ。

「ガアッ!?」

 仕上げにかかった俺はまず初めに

ワニ野郎のギョロっとした左目に俺の体の半分ぐらいの大神殿の残骸をぶん投げて当てた。

 するとワニ野郎は痛そうな声を出した。

 しかもその目からは赤い血が流れ落ち、充血もしている。

 しかし見る見るうちにその目に殺気が宿った。

 へへ、そうこなくっちゃ。

 俺を殺す気でもっと責めて来いよ?

 その気持ちをあの魚の目で俺はワニ野郎に言ってやった。

 別にやる気がないわけじゃない。

 この目の方がワニ野郎を挑発できるからな。

「グウウゥ……!!」

 ワニ野郎は俺の挑発にのった。

 俺を殺そうとする目の色が一段と強くなった。

 そしてそれを確認した俺はある所へ向け駆け出した。

 次回 ー 022   聖女さまの加護

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