ー 020 ワガママは一人だけじゃない
ボロボロになっている大神殿の中には意外にも魔物共の姿は見当たらなかった。
それよか気配すらねえ。
天井もすっぽりと穴が開いている。
なんで上からのことも気にせず、ちょっと瓦礫が散らばり足場が悪いぐらいで進みやすい。
だから俺はそのまま進んだ。
しかし静かすぎることには違和感しかねえ。
さっきまで魔物がうじゃうじゃ出て来ていたのに
全く出て来ねえってえ理由はあんま考えたく……。
ズズーン!
面倒なことを考えてると大神殿の奥の方でデケエ音がした。
どうやらこいつのせいで他の魔物がここに近づけねえみたいだがまだ壊す気か?
それとも……。
さらに面倒なことを考えると俺の眉間にしわが寄った。
それでも前には俺を急かすように小さな虹がかかる。
それは今にも儚く消えそうだった。
わーってるよアヌエヌエ。
お前の大切な父親の命は絶対に守ってやるから安心しろ。
俺はその虹に心の中でそう言ってデケエ音がした方へ足を進めた。
そして辿り着いたのは神殿長の部屋の付近だった。
ドゴゴーーンッ!!
って、いきなりスゲエ出迎えだな。
俺の前に残ってた両サイドの石柱がスゲエ音を伴っていくつも壊れた。
結構な量の破片もパラパラと飛び散って来やがったし……。
しかしこいつは何者なんだ?
姿は見えないがさっき俺の前を左から右に横切った黒いものは奴の一部分だとすれば
かなりの大きさだ。
今まで見て来た中で一番デカかったのは俺より身長が倍はあって横もそれなりにあったが
奴のその一部分はそれよりも遥かにデカい。
何を食ったらそこまでデカくなれんだよ?
バーーンッ!!
ちっ、スゲエ音だな。今度は上からか?
砂埃で視界を奪われた俺は少し間を取っていた。
避けなきゃ大変なことになっていただろう。
上から振り下ろされた奴の攻撃でかろうじて残ってた天井が全て吹っ飛びやがった。
となると奴の体高はこの大神殿よりもかなりデカいのか?
いや……どうやらそうでもないみたいだ。
砂埃の中にある奴の姿はこの大神殿の天井まではなく、だいたい体高は三メートルはないな。
横は廊下とほぼ同じみたいだから五メートル以上はあんのか?
何にせよデカいことには変わらない。
そして砂埃が薄れて来たころ、奴のギラリと光る金色の瞳がお目見えした。
しかも、グウゥと地の底から聞こえるような唸り声までも聞こえる。
それからだいたいの奴の姿が見え出した。
そう、奴はワニの姿をした魔物だった。
……だと思うんだが牙は数本は口から飛び出している。
上下ともスゲエ長さでしかも鋭い。
あの牙で、ガブリとされたらさすがの俺でもひとたまりもないだろう。
もっと早くにお前と出会っていたら俺はその牙で死ねただろうな。
……だから前だって言ったろ!
言葉の綾じゃないか!!
俺はあのワニ野郎の足元にかかっている小さな虹に叱られた気がした。
そう、その虹はアヌエヌエの頬のように、ぷくっと膨れやがった。
だから俺は心の中で言い返してやったがどうしたもんか?
どうやら神殿長はそこにいるみたいだが
まずはあのワニ野郎から引き離さねえことには何も始まらねえよな……。
「グウゥ……!」
へぇ……どうやらワニ野郎はターゲットを俺にかえてくれたみたいだ。
まあ、あんなひょろい奴よか俺の方がうまそうだろ?
いや、そんなんじゃねえか。
どうやら俺を殺したいみたいだ。
スゲエ殺気がビンビンと伝わって来る。
しかし悪いが俺はまだ死ねねえんだ。
アヌエヌエのワガママをきかなきゃいけねえんでね。
だからお前を倒して神殿長を生きたまま救出しなきゃいけねえんだよ。
それにあのクソオヤジとクソガキのもな!
ったく、何であいつらのまできかなきゃいけねえんだよ?
俺は、ふとあのクソオヤジとクソガキとのやり取りを思い出した。
次回 ー 021 イライラしてんのはこっちだ!
投稿予定日は2026年8月31日☆
この週で最終回となります
最後までお付き合いの程、どうぞよろしくお願いいたします m(__)m




