ー 019 いつまで経ってもワガママはなおらない
俺は今、パライバトルマリン島にいる。
空は灰色の雲に包まれ昼にもかかわらず薄暗いせいか息苦しい。
自然は薄れ人はいなくなり、以前の姿はほぼ残っていない。
残っていると言うかいるのは魔物共だけだった。
変なオヤジに聞かされた通りヒデエありさまだ。
そのオヤジによると五年ぐらい前からパライバトルマリン島はこんな風に徐々に変わっていった。
それはパライバトルマリン島をよりよい方向へ導く輩の機能が上手く回らなくなったかららしい。
つまりプレやマイカイの輩のことなんだがその理由まではわからんとオヤジはキッパリ言い切った。
さらにラナキラの輩は奉仕活動ばかりに従事していたので
魔物の襲撃があっても戦わず逃亡した。
ったく、何してんだか……。
溜息をつきながらも俺はここまで船で運んでくれた一番仲がいいラナキラの仲間をおいて
ある所へ向かっている
そいつには半日経っても俺が戻らなければここから離れるように言ってある。
しかしここまで本当に穏やかな船旅だった。
まあ当然だ。
俺はアヌエヌエの最後のワガママをきいてやってんだから。
そう、あのクソオヤジめ……都合がいい時はマイカイとしての本領を発揮しやがって!!
つーか今考えるとあのオヤジが言ったことは本当なんだろうな?
『カイ君。パライバトルマリン島に今、神殿長さまがお一人で残っておられる』
それがどうした?
クソ真面目な顔になったオヤジの話に俺はそう怒鳴った。
もちろんオヤジの激辛手作り具だくさんペイストリーを食べさせられた後の話だ。
『このままだと神殿長さまは死んでしまう。
魔物共の餌となってね』
だからどうした?
あいつはてめえでパライバトルマリン島に残ることを決めたんだろ?
俺には何の関係もねえ話じゃねえか!!
また俺はそう怒鳴った。
『カイ君。聖女さまが父親を助けてほしいと言っていたらどうするかね?』
な……?
何ふざけたこと言いやがると俺は言いたかった。
しかし言えなかった。
オヤジの言うことをすんなり受け入れてしまった。
それは右手の中にあるアヌエヌエの指輪からその気持ちが伝わって来やがったからだ。
その俺を見たオヤジは目を細めて、うんうんと頷きやがった。
何だその得意気な顔は?
くそっ! これでワガママをきくのは最後だからな!!
そういうわけで俺はこんな所まで来たんだが……。
ドガッ!
「ギャッ!」
ゴッ!
「グゥッ!?」
本当に次から次から沸いて来やがって!
邪魔なんだよ!
てめえらさえいなきゃ普段なら一時間もかからずに大神殿に行けんだよ!!
悪いな。さっさと終わらせねえと、ぐだぐだ言われっから手加減なんかしてられねえんだ。
そうやって走りながら魔物共をあしらっていた俺は神殿長がいるであろう大神殿の前まで到達した。
ここに神殿長がいるとオヤジが言っていたがこれでいなかったらぶん殴ってやるからな!
とは言ったものの本当にいんのか?
もう大神殿はボロボロに壊れてるぞ?
何本もポッキリ折れてる石柱がここからでも見える。
それに露見してる部屋だったと思われる部分はもう長い間、雨風にさらされてる感あるし。
どう見ても人が住める状態では……わーったよ!
いるんだろ!
行けばいいんだろアヌエヌエ!!
そう、俺が進むべき道に何故か小さな虹がかかる。
それは灰色の雲の間から気紛れに顔をのぞかせる陽の光のせいだと思っていた。
しかしこうも何度も出ては消えたら偶然ではないことぐらい俺でもわかる。
アヌエヌエだ。
アヌエヌエの奴がそっちに行けと言っている。
ったくいつまで経ってもワガママはなおらないんだから……。
はいはい、わかっておりますよアヌエヌエ。
どこまでもワガママに付き合ってやるさ!
そう思った俺は、ふっと笑って大神殿の奥へ駆けて行った。
次回 ー 020 ワガママは一人だけじゃない




