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ー 018   変なオヤジと嘘つきガキの過去

  いまはどれぐらいの時間だろうか。

 俺があのガキにせがまれこのオヤジの家にやって来た時には外は真っ暗だった。

 山は暗くなるのが本当に早い。

 だから時間の感覚がマヒしてしまう。

 しかもかなり吹雪いてきたので俺はここに留まる羽目となったのだが……。

「儂のマイカイとしての力があればワイフの未来を変えれたのやもしれん。

 まあそんなことは許されんかったじゃろうがな」

 オヤジの重苦しい話を聞く羽目となっている。

 もういいとは言えねえし、どうしたもんか?

 俺が困ってんのにこういう時はオヤジの奴は俺の心の声に答えねえんだな。

「なあ、カイ君。自分より年下の者が先に旅立つというのは堪えるものじゃ。

 儂もな、自分の子供に先立たれた時はワイフとともに後を追うことを考えたものだよ」

「オヤジ……」

 しかし穏やかな顔のわりにとんでもねえことを言ったオヤジのせいで俺は口を開いてしまった。

 するとオヤジは、うんうん頷いてまた話始めた。

「だからなカイ君。儂も少しだが君の気持がわかるんじゃ。

 それにディランもな」

「あのガキもだと?」

 また俺の口は開いた。

 オヤジはと言うと今度は目を細めて小さく頷いてから話し始めた。

「ディランはワイフの親友のお子さんなんじゃ。

 しかしその親友も儂がこの地に辿り着いてすぐに息を引き取った。

 母一人、子一人の家庭だった上に親戚もいなかったディランは生涯一人となってしまったのだよ」

 嘘だろ……あの嘘つきガキにそんな過去があったなんて。

 今度は開いた口からその言葉は出なかったがそう思った俺はオヤジのくぼんだ目を一身に見つめた。

「ディランは嘘をついたりはせんよ?」

 ちっ、やっぱ読んでんのかよ!

 イラっとした俺はオヤジを睨んだ。

 すると、ふふふとオヤジは意味深に笑ってまた話し始めた。

「ひょんなことから儂がワイフの親友を看取ることとなっての。

 そこでディランを託されたというわけなんじゃ。

 そしてディランのこの家でディランとともに暮らすこととなった。

 最初は大変だったんじゃぞ?

 儂の言うことは一つもきかんし、儂のことを変なオヤジだと言うし……」

 まあ俺も変なオヤジだと思ったから言われても仕方がな……。

「……」

 すまん、オヤジ。つい滑ってしまったんだ。

 じぃっと無言で見つめて来るオヤジに俺は心の中でそう言った。

 しかし機嫌を損ねてしまったのか、すごすごとオヤジは部屋を出て行った。

 また一人取り残された俺は、はぁと大きく溜息をついた。

 すると、パキッと暖炉の薪が弾けた。

 そして、パチパチと薪が燃え続ける中でオヤジはあるものを持ってきて元の席に座った。

「まあカイ君。儂の特製ホットミルクコーヒーでも飲みたまえ。

 心が落ち着くぞ?」

 そして、にっこり笑って机に置いたたっぷりサイズの白いコーヒーカップを俺の方へ押しやった。

 そのコーヒーカップからはまったりとした甘い匂いが漂う。

 確かに俺はどちらかと言うと甘党だがこれはさすがに……わーったよ!

 飲むさ!

 飲むから泣くな!!

 涙目になったオヤジは無言の圧をかけてきやがった。

 その圧に負けた俺はそのミルクコーヒーに口をつけた。

 するとほんの一口にも満たなくともミルクコーヒーのまったりとした甘さが口いっぱいに広がる。

 しかし何だろうな。

 嫌な甘さじゃねえ。

 しかも俺の体中に優しい甘さが広がる感覚で悔しいことにオヤジの言う通り心が落ち着いていった。

 すると俺がこの家に来るまであったあの嫌な思いは少しだけだが薄れた。

 別にそれは感じるだけで心でも口にでも出していないのに

オヤジには伝わったようで、うんうんと何も言わずに満足そうな顔で頷いた後にこう聞いてきた。

「ところでカイ君。今、パライバトルマリン島がどうなっているか知っているかね?」

 次回 ー 019   いつまで経ってもワガママはなおらない


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