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ー 002   どうしてもきけないワガママ

 どれだけ時間がかかったかわからんがようやくアヌエヌエの機嫌は直った。

 アヌエヌエの頬はしぼんでいる。

 俺のは腫れたままだ。

 こういう時、聖女さまとやらのお力はいただけないのだろうか?

 そう思った俺とアヌエヌエは大神殿のバルコニーで話すこととなった。

 そこは俺のお気に入りの場所で俺はそこでよく寝そべっている。

 ここはバルコニーに植えられている木々が影を作り、海から涼しい風が運ばれて来る。

 しかも滅多に人は来ない。

 なんで静かでいられる上に一日射ても快適に過ごせる場所ってわけだ。

 そこにちょうど寝そべるのにいい岩がある。

 もちろん岩に直に寝そべったりしたら痛くてたまらん!

 だから俺はここに色々と便利グッズを持ち込んでいる。

「で、お願いってのは何だ?」

 便利グッズの一つである低反発クッションの上に俺は座った。

 ヒリヒリする両頬をさすりながらアヌエヌエに視線を向ける。

「あした、マカヒキにつれてけ」

 アヌエヌエは俺の便利グッズの一つである低反発枕の上にちょこんと座っていた。

 そして白い膝上までのノンスリーブのワンピースからくっつけた細い足を出している。

 さらにその足先にはブラウンの足首まですっぽりとあるサンダルをはいて

両足とも上下に、ひょこっと動かしていた。

 手は両方ともしっかりと岩につけその姿勢から、くいっと顔を上げて俺を一心に見つめてくる。

「マカヒキ? 今やってる祭りのことか?」

「うん、そう」

 マカヒキとはパライバトルマリン島で年に一回行われる祭りで三日間行われる。

 その祭りは大規模なものでパライバトルマリン島全体がその祭り一色に染まる。

 と言っても何度も参加すると大した魅力を感じれない。

 そして今年のマカヒキは今日でもう二日目が終わる。

「へぇ、聖女さまはマカヒキなんかに行きてえのか?」

「アヌエヌエ!」

 俺はアヌエヌエを呼ぶ時は"聖女さま”と呼ぶ。

 それは当然のこと。

 アヌエヌエは雲の上の人だ。

 俺みたいなどこでもいそうな輩が間違ってもアヌエヌエなんて呼べる訳がない。

 立場が違いすぎるからな。

 しかも一応ここは大神殿。

 誰が見ているなんてわかったもんじゃない。

 アヌエヌエの名前なんか口にできるわけがなかった。

 したものならどんなお叱りがあるか。

 なのにアヌエヌエはどうしても俺に名前で呼ぶように要求して来る。

 しかも会う度に要求してくる。

 申しわけないがこのワガママばかりはきくことはできない。

「……わかってくれよ聖女さま」

「……」

 またアヌエヌエの頬が、ぷくっと膨れた。

 しかも俺を睨んだままのだんまり。

 機嫌を損ねたサインだ。

 それでも俺はこのワガママだけはきけないことを目でも訴えた。

 アヌエヌエの瞳にはこんな俺はどんな風にうつっているのだろうか?

 大して整えていないアヌエヌエより短い黒髪の短髪。

 アヌエヌエと同じ色の肌と瞳。

 しかし俺の目は決してくりっとしてるとは言えない。

 はっきり言って、やるきのない時は死んだ魚のようだとよく言われる。

 その上には申し訳なさ気程度のまつ毛しか生えていない。

 本当にアヌエヌエはこんな俺のどこが気に言っているのだろうか……。

 何故か俺の胸が、チクッと痛んだ。

 その俺の耳に海風が木々をさわさわと揺らした音が聞える。

 さらに鼻には潮の匂いも運んで来た。

 すると、ぶぅーっと息を吐いたアヌエヌエの頬はしぼんでいった。

「悪い。あとは何でもきいてやっから」

「ぜったいだよ? うそついたらアヌエヌエ、もうカイにくちきいてあげないんだから!」

「わかってら」

 ふっと笑った俺はアヌエヌエの頭を優しく撫でた。

 すると子供扱いするなとアヌエヌエの頬がまた、ぷくっと膨れる。

 そしてまた悪いと言った俺はアヌエヌエと約束した。

 明日、マカヒキへ一緒に行くと。

 次回 ー 003   何かが足りない昼下がり


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