ー 001 カイとアヌエヌエ
今日も何事もなく平和だ。
雲一つない空からギラギラと太陽の光が波間のない海にも降り注がれている。
ここはパライバトルマリン島。
数々の自然の緑とどこまでも広がるコバルトブルーの海に囲まれた島。
俺の名はカイ。二五歳。
パライバトルマリン島にある大神殿の衛兵をやっている。
正確に言えばやらされている。
生きとし生けるものには生命力であるマナがあるとパライバトルマリン島では信じられ、
そのマナが特に豊富な輩はこの大神殿に集められてそれぞれに合った役職が与えられる。
そして一生それに従事しなければならない。
それがこのパライバトルマリン島での絶対的ルール。
ちなみにその役職ってのはある者は祈祷。こいつらはプレと呼ばれる。
パライバトルマリン島のために何か祈るだけでいいらしい。
ある者は占い。こいつらはマイカイと呼ばれる。
未来予知とでも言うのか。
何でも見えるらしく、
このパライバトルマリン島にこれから起こることを予知し、よりよい方向へ導くように助言する。
最後は俺のような力だけの者。
ラナキラと呼ばれる勝利を齎す輩がそう呼ばれる。
格好よく言えばそうだが単に力バカだ。
付け加えるとラナキラは他の輩よりは人数はかなり多い。
さらにプレやマイカイの輩のせいでパライバトルマリン島は平和そのもの。
なんで俺たちラナキラは暇人ばかり。
あれだけ他の仕事は禁止なんてほざいている癖に
ラナキラのほとんどは奉仕活動とやらにかり出されている。
これもお上の何とやらってやつだ。
そんな中で何で俺はのんびり大神殿のバルコニーから
パライバトルマリン島を眺めていられるのかと言うと……。
「カイー!」
こいつのせいだ。
今日も走って仰向けで寝そべっている俺の腹にいきなりダイブしやがった!
「ぐはっ!? いってーよっ! 毎日毎日それやめろや!!」
見事、くの字に曲がる俺の体。
マジで内蔵全部つぶれたかと思った。
いくら四歳の、どちらかというと痩せた少女だからと言って飛び乗られたら死ぬわっ!
「ねえねえねえカイ! おねがいある!」
って、また俺の話をききやしねえんだから。
まあ、いつものことだったな。
はぁとわざとらしく大きな溜息をついてまた仰向けに寝た俺はアヌエヌエを見た。
そう、俺の腹にまたがっているのはアヌエヌエ。
俺にダイブしてきやがった少女だ。
アヌエヌエは褐色の肌、真っ黒い髪に瞳。
髪の長さは耳下までの短髪でくりっとした目の上にはくるっと巻いたまつ毛がある。
それに前髪を押さえるように淦と黄色の三角形が交互になった模様のヘアバンドをつけている。
そして身長はチビの方で俺の太腿ぐらいしかねえクソガキ。
しかしこう見えてもアヌエヌエはいわゆる聖女ってやつだ。
パライバトルマリン島で一番マナが豊富で、しかも貴重なプレ。
だからパライバトルマリン島ではかなり重宝され、どんなワガママでも許される。
そのワガママに付き合わされているってのが俺だ。
俺はアヌエヌエのお気に入りらしい。
どこでどうなったらそうなるのかわからんがそうなっている。
「はいはい、聖女さま。本日のワガママは何でございましょうか?」
「カイ! わたし、ワガママなんていったことない!」
ぷぅと風船のように膨らむアヌエヌエの頬。
ちょっとからかうとすぐこうなる。
これのどこが聖女なんだか……。
思わず噴き出した俺の頬をアヌエヌエは思いっきり引っ張ってきた。
かなり強い力でつねってもいる。
しかもアヌエヌエの頬は膨れたままで、キッと睨んできやがった。
「うぇてててっ! ばべろって!!」
「アヌエヌエにあやまるまでやめないもん!」
「ばーかっだ! ぼべん!!」
「カイ、ちゃんといって!!」
時々、俺は思う。
本当に俺はアヌエヌエのお気に入りなのだろうかと。
次回 ー 002 どうしてもきけないワガママ




