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ー 015   アヌエヌエが指輪二こめた思い

 青い巾着袋の口はふるえながらゆっくり開いていった。

 そして傾けるとその口から小さなオレンジ色の指輪が、コロンと出て来た。

 アヌエヌエの指輪。

 あの時から一度も見ていないが見るとやはり息ができなくなるほど苦しくなる。

 それでも俺はアヌエヌエがこの指輪にこめた思いを知りたかった。

 だからオヤジのルーペでのぞいて指輪の内側を見ようとした。

「待ちたまえカイ君!」

 しかし真面目な顔のオヤジがルーペを握っている俺の右手を握ってきた。

「何すんだ!」

「駄目じゃないかねカイ君。これじゃあ指輪がかわいそうだ」

「お、おいっ!?」

 わけのわからねえことばかり言うオヤジは俺からアヌエヌエの指輪を強引に奪い取って

部屋を出て行った。

 くそっ! 何のつもりだ?

 つうか返せよ! それはお前のじゃねえだろうが!!

 俺がオヤジが出て行ったドアを睨むと、すぴすぴと寝息が聞こえて来た。

 そう、残された俺の右隣ではあのガキが机につっぷして眠っている。

 その机にはオヤジの手作り具だくさんペイストリーが皿に一つだけ残っていた。

 ……よくあれだけの量を二人で食ったな。

 呆れた俺が溜息をつくとオヤジが戻って来た。

 しかも、うきうきしている。

 そして元いた席に座ってアヌエヌエの指輪を手渡してきた。

 部屋の灯りに照らされ、キラッと光った指輪を俺はぶん取るように奪い取った。

「どうだねカイ君?」

「何がだ?」

「聖女さまの指輪だよ。君は全く手入れをしていなかったね?

 あれじゃあ指輪がかわいそうだ」

「……」

 ムカツクことに俺は嬉しそうな顔のオヤジに何も言い返せなくなった。

 その俺を見たオヤジはまた得意気な顔になって顎をくいくいと上下に動かした。

 ……ああ、悪かったな! 何にも手入れしなくってよ!!

 どうせ今の俺の心の声も読んでんだろ?

 そう思った俺は無言でオヤジを睨んだ。

「ろちもん」

 だよな。

 あの顔のオヤジはそう言った。

「ささ、カイ君。指輪の内側を見なさいな」

 そして、うんうんと頷いた。

 これ以上オヤジの顔を見ているとぶん殴りそうになった俺は視線を左手にある指輪に移した。

 そしてオヤジのルーペで指輪の内側をのぞくと青色の宝石が目に飛び込んで来た。

 その青色は濃く、青紫色にも見える。

 さらに表面には他の輝きも現れた。

 どうやら光の当たり具合で変化したみたいだが不思議な光景だった。

 しかも宝石の隣にはこんな文字が刻まれていた。

"ohana”

 その文字が目に写った俺の頭は真っ白になった。

 この言葉の意味は"家族。

 それはただの血縁の関係だけでなく大切な絆で結ばれた関係をも差す。

 これがアヌエヌエが指輪二こめた思い?

「そうだよカイ君」

 俺がその文字を見つめたまま固まっているとオヤジの声が聞えた。

 また勝手に俺の心を読みやがって!

 俺が、イラっとしてもお構いなしにオヤジは話し続けた。

「この文字はの、儂が刻んだんじゃ。

 聖女さまに頼まれてな」

 アヌエヌエにだって?

「ああそうだ。

 カイ君は知らんかったかもしれんが儂が文字を刻むとその通りになると有名じゃったんだよ。

 あっ、ろちもん、儂のワイフがデザインした物に限るがな」

 ……それはお前が嫁さんのにしかやらなかったからだろ?

「バレたか」

 俺の心の声に答えていったオヤジは、はははっと笑って聞いてもねえのに話を続ける。

「聖女さまはそんな儂の噂を聞いたみたいでな、あの日にカイ君と儂の店に来たんじゃ。

 儂も儂で普段はマイカイとしてはさっぱりな癖に、あの日は冴えておってな、

店じまいの日に聖女さまにとって一番大切な人と店に来ることがわかっておったんだ」

「店じまいだと?

 それにアヌエヌエにとって一番大切な人……」

 俺もやめればいいものをオヤジの声に答えてしまった。

 だからオヤジの話は続いた。

 次回 ー 016   変なオヤジに認めさせられたこと

 投稿予定日は2026年8月24日☆

 …何かこんな感じになってしまいました(汗)

 でも、こんな感じの話はまだまだ続きます。

 どうぞよろしくお願いいたします m(__)m


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