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ー 013   俺を騙した変なオヤジとガキ 

「いや~何年ぶりかね?」

「……」

「おい、五年ぶりだぞ?」

「……」

「せっかくの運命的な再会に何か言葉はないんかい?」

「……」

 俺は今、半月上のパンパンに膨れているキツネ色のパイが山積みにされた皿を前にして

変なオヤジにからまれている。

 パイの大きさは掌サイズ。

 そのパイからは暖炉で温まった部屋にもかかわらずほんわか湯気が見える。

 肉や野菜、スパイシーな香りもして匂いもいい。

 いや、それより何でそうなったかだ。

「わーい!」

「こらこら、お客さんがおるから静かにしなさい」

「はーい、ダディ!」

 ダディとかぬかしたガキにここまで連れて行けとせがまれたからだ!

 あんまりうるさいから俺は片手で担いで連れて来てやった。

 なのにあのガキめ、足が痛いからおんぶしろとかぬかしたくせに走り回ってんじゃねえかよ!

 くそ、まんまと騙された!

「いやいや、すまんねぇ。やんちゃな息子なもんで」

 こいつにもだ!

 こいつはあの指輪を買った店の店員。

 何でこんな辺鄙な所で再会する?

 しかも何でフリフリの白いエプロンなんか着てんだよ!?

 そしてこいつが言う息子の髪はふさふさの短髪ライトブラウン。

 肌の色はこの雪国の雪のように白く、瞳の色は晴天の空のような青。

 眉毛は細い。

 つまり息子なわけねえんだ!

 こいつの遺伝子をこのガキは何一つ受け継いでいねえ!!

「そんなに儂と息子は似てないかい?」

 俺がイライラしているといきなりオヤジからそう言われた。

 は? こいつ、俺の心を読んだ……?

 俺の目は丸くなった。

「そんな不幸な顔しとらんで儂の手作り具だくさんペイストリーを食べないか?」

 にっこり笑ったオヤジは皿に山積みになった半月上のパイに右手で、どうぞのポーズを取る。

 ……その、オヤジ。これ、お前が作ったのか?

「ろちもん」

 またオヤジは引き攣った顔の俺の心の声に答えた。

 そして俺が呆然となっているとオヤジは、にっこり笑ったまま話し始めた。

「儂はな、マイカイなんじゃ。と言ってもそこまで力はないから人の心を読めるぐらいなんじゃがの」

 このオヤジがマイカイだと? じゃあ、あの日もこいつは俺の心を……。

「読んで負ったよ」

 オヤジは俺が心の中で言い終わる前に答えやがった。

 イラっときた俺の眉間にしわが寄る。

「じゃあ、あの時お前は俺をからかってたのか?」

「まあの」

 得意気に答えるオヤジにさらに俺の眉間にしわが寄った。

「じゃあ、アヌエヌエの心も読んでたのか?」

「読んでおったよ」

 ふるえる声の俺の前で瞬時に真面目な顔になったオヤジは半月上のパイを一つ取って食べ始めた。

「……じゃあ、お前はアヌエヌエが何を思ってたのかを知ってたんだな」

「むぐむぐ……」

 そしてオヤジは食べながら頷いた。

 ガタタンッ!

「ふざけんな!! わかってたんならどうして俺に教えなかったんだ!!」

 すると俺は座っていた椅子が倒れるとほぼ同時に怒鳴っていた。

「むぐむぐむぐ……ごっくん。

 それは禁止されておるからな。

 本来、他人の心なんぞ知ってはならぬじゃろ?

 それに聖女さまが言わないでと言ったからじゃ」

 半月上のパイを丸ごと一つ食べ終わったオヤジは俺を見ながら言った。

「アヌエヌエが?」

「ああそうじゃよ。まあ、座りなさいなカイ君」

「……っ!」

 オヤジに名前を言われ何も言えなくなった俺は言う通りに座った。

「ふむ……素直になることはよいことだ」

「……」

「まあ、儂の手作り具だくさんペイストリーを食べながらでいいから話を聞いてくれぬか?」

「……」

「ダディ、ぼくもたべていい?」

「ろちもん。ただし大人の話を邪魔しちゃいかんよ?」

「あーい!」

 どうしていいかわからねえ俺の隣に座ったあのガキはニセモノ親子ごっこを始め、

そしてオヤジはあの日について話始めた。

 次回 ー 014   幸せの指輪

 …話を進めた結果がこれだす!


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