ー 012 見えなかった未来
ガガンッ!!
俺は怒りに任せ殴った。
確かな感覚があった。
部屋中にその衝撃音が響く。
それでも怒りは晴れることはなかった。
きっと一生晴れることはない。
自分を責め続けることになるだろう。
「はぁ、はぁ、はぁ……」
そんな俺の目前には砂埃が舞う。
「カイ、どうして……?」
その砂埃の中から神殿長の戸惑う声が聞えた。
どうやら俺の復習は成功したようだ。
俺が殴ったのは神殿長のすぐ傍の床だった。
さすがの神殿長さまもこの未来は見えなかったようだな。
「誰がてめえの思い通りになんか動くかよ」
そう言った俺は神殿長をそのままに立ち上がった。
そう、こいつは俺に殺されることを望んでいた。
それがアヌエヌエに対する贖罪のつもりなんだろう。
ふざけんな!
誰がてめえの勝手で殺すかよ!
楽して死のうとなんか思うんじゃねえよ!!
そんなことを俺は言葉に出さずに部屋を出て行った。
そしてパライバトルマリン島も。
このままパライバトルマリン島にいたら
俺はパライバトルマリン島の人間を全て殺してしまいそうだった。
別にパライバトルマリン島に住んでいる人間は何も悪くない。
そんなことはわかっている。
しかしどうしてもアヌエヌエの犠牲の上で生きていると思うと俺は何を仕出かすかわからなかった。
だから俺はパライバトルマリン島を出た。
仲間はいたが別に何の心残りもない。
あるとすれば俺が生きていることだけだった。
俺さえいなければアヌエヌエは……。
あれからどれだけの時間が経ったのだろうか。
空しいことに俺はまだ生きている。
俺は俺を殺してくれる奴を追い求め続けていた。
誰でもいい。
人間でも猛獣でも魔物でも何でもいいんだ。
俺をギッタギッタにして痛めつけて殺してほしい。
あの時に生き残ってしまったことを後悔するように。
だから俺は世界中の悪名高い輩の所を回った。
しかし今まで俺に傷をつけた輩はいない。
最初はみんな殺る気でかかってきてくれるんだ。
なのにかかって来るだけで何にも手を出してこない。
手を出しやすいように少し攻撃する形で俺だって努力した。
そうしたら運河悪い奴はそのまま息絶えてしまう。
何でだろうな。
どうしてみんな簡単に死んでしまうんだろうな。
なあ、お前なら俺を殺してくれるか?
「……!?」
また駄目だった。
今度こそって思ったのにな。
悪かったな、無理言って。
俺は粉雪舞う凍てつく寒さの中で躯になったそいつを見つめていた。
ここはパライバトルマリン島から遠く離れた雪国。
その国のある山の山頂付近に俺は俺の目的のためにいた。
雪国というだけあり辺りは雪以外ない。
「わーーんっ!」
なのにこんな泣き声が聞こえてきた。
俺がその声の方を見ると茶色の毛皮の防寒着を着た子供がいた。
口元まですっぽり隠れるフードのせいで性別まではわからんが六、七歳ぐらいか。
「わーーん! わーーん!」
……何でこいつは泣いている?
いや、その前にいつからいたんだ?
「わーーん! わーーん!わーーん!」
何か泣き方が激しくなってきたぞ?
わけがわからん!
面倒なことになる前にさっさと他の場所に行った方がいいようだ。
「わーーん! わーーん!わーーん! わーーーんっ!」
しまった。
もう遅かった。
こいつは俺の足にしがみついて来やがった。
しかも是が非でもはなさないと言うかのように。
「おい、はなれろ」
「やーーーっ!!」
「何を言ってやがる。俺は忙しいんだ」
「やぁーーんっ! 家までつれて帰って!」
「はぁ? 何で俺が連れて行かなきゃいけねえんだよ?」
「足がいたいんだもん!!」
「知ったことか!」
「いだいよぉーーっ!! しんじゃうよぉーーっ!!」
「そう簡単に死にゃあしねえよ」
「わーーん!!」
「……っ!」
もう埒が明かねえ。
俺はこのガキの言う通りにした。
次回 ー 013 俺を騙した変なオヤジとガキ
…実はこの話を思いついた時、ここらでこの話は終わる予定でした。
何かこう暗~い感じでね。
でも、何となくそれもどうかと思い修正させ話は続きました。
なのでどうぞお付き合いの程よろしくお願いいたします☆




