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ー 010   どうして……

 満天の星空の下、また俺は息を切らしながら走っている。

 もう人の姿はどこにもない。

 俺を通り過ぎる風は妙に冷たい。

 俺の目的地は決まっていた。 

 大神殿だ。

 お偉いさん方に聞かなくてはならないことが山のようにある。

 俺はあの海辺でアヌエヌエの手をしっかりと掴んだんだ。

 掴んだはずだった。

 なのに掴めなかった。

 わけがわからねえ俺が呆然となっているとアヌエヌエの奴は、ヘラヘラ笑った。

 何で笑ってんだと俺が言うとアヌエヌエはこう言いやがった。

『カイ、わたし、もうしんじゃったから』

 俺はアヌエヌエが言った意味がわからなかった。

 それでもアヌエヌエは笑ったまま話し続けた。

『あのひ、わたしはうみのかみさまのところにいったの。

 そうすればパライバトルマリンのひとがみんなしあわせになれるから。

 カイがしあわせになれるから……』

 意味わかんねえよ。

 何言ってやがる?

 どうしてアヌエヌエは一年前の日と同じ服を着てんだ?

 どうして身長が伸びてねえんだ?

 どうして笑ってんだ!!

 いや……泣いている?

 アヌエヌエの目に光るものが見えるとアヌエヌエは、にこっと笑って話し始めた。

『ごめんね、カイ。

 あのひ、おわかれしなきゃいけないってわかってた。

 けど、いえなくって、うそついちゃった

 でも、どうしてもしあわせのゆびわがほしかったの。

 そのゆびわをカイからもらったらわたし、

わらってうみのかみさまのところにいけるからっておもったの』

 指輪……?

 掴んだはずだった俺の手の中にあの指輪があった。

 まだ現実を受けとめきれずにいる俺の前でアヌエヌエは、ぽろぽろと涙を流しながら笑った。

『カイ、いっぱいワガママきいてくれて、ありがとう。

 やくそくまもってくれて、ありがとう。

 だいすきだよ……』

 そしてそう言って消えた。

 それは一点に集まっていたいくつもの色の光が優しく広がるようにして

薄れながら消えていった感じだった。

 その光が完全に消えると残ったのは俺をあざ笑う満天の星空とそれをうつす真っ黒い海。

 それに俺の右手にあるあの指輪だった。

 暫く俺はその場で固まったように動けなかった。

 恐らく一生かかっても理解できない現実がじわじわと体に広がって来ると

俺の頬を温かいものが流れていた。

 そして訳もわからねえまま俺は走っていた。

「こらー! そこのお前、止まれ!」

 大神殿の前まで走り着くとそこにいる衛兵から怒鳴なれた。

 まあ当然だわな。

 こんな時間に入れるわけがねえ。

「あっ!?」

 知るか。

 俺は大神殿にいるお偉いさん方に用があるんでね。

 俺は右手で、ダンッ!と門を殴って破壊した。

 また大神殿を破壊したが手加減してる場合じゃねえ。

 何か言われたが止まっている場合でもないので空いた所からそのまま中へ入った。

「そこのお前、止まれ!」

「そいつをおさえつけろ!」

「お、おい、カイ!? 止まれって!」

 続々と俺の下に衛兵が集まって来る。

 中には仲間のラナキラの声もしたが俺はそのまま走り続けた。

「うげっ!」

「ぐはっ!」

 どけよ。

 俺が用があんのはお前らじゃねえんだよ!

 行く手を阻む奴らを俺は適当にあしらった。

 ここでも手加減なんかしねえ。

 そんな暇ねえんだ。

 俺はお偉いさん方、いや、神殿長に用があんだよ!

 その神殿長がいるのは大神殿の奥の奥。

 そう、あそこに見える扉の向こうだ。

 走る俺の横をいくつもの柱が横切る。

 その柱に何人俺があしらった奴らが横たわっているか。

 結構な数そうしてきたがまだうじゃうじゃ沸いてきやがる。

 お前らさぁ……何を守ってんだ?

 俺の中で何かが、プツリと切れた音が聞えた。

「がっ!?」

「ぐぅっ!」

 いい加減にしろ。

 邪魔スンナって言ったろ?

 俺がそう思った時にはもう行く手を阻む奴は誰もいなくなっていた。

 あるのはあの扉だけだった。

 次回 ー 011   神殿長

 投稿予定日はたぶん2026年8月17日☆

 で、執筆が上手くいっていたらまた連続投稿したいです♪

 その時はよろしくお願いいたします m(__)m

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