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パチリ、と部屋の灯りが点けられた。綺麗な男だと思っていたが本当に美しかった。金色の髪に薄い水色の澄んだ瞳。
「…あれ?さっきまで紫の目だったんじゃ」
「光の加減で色が変わるんですよ」
なるほど。
「それで、えーっと、どこから聞いたものやらちょっと分からないんですけど」
男は頷く。
「私の名前はゾイサイト。あなたがシロと呼んでいたものです」
私はいつの頃からか、私の悪魔的な願望を叶えてくれる存在をシロと呼んでいた。悪魔と取引をしている。その悪魔の名前はシロ。そう決めた。その考えが他人に知られていたと思うと少し気恥ずかしい。
「これからもシロと呼んでくださって構いませんよ」
シロが穏やかに微笑んだ。
美しい顔で微笑まれると何だか照れてしまう。
「えーっと、それで、シロさん「シロ」」
「ん?シロさ「シロ」」
これは呼び捨てにということなのだろうか。どうもこの美しい年上の人を呼び捨てにするのは抵抗があるのだが、彼は黙って微笑んでいる。意地でも譲らないというものを感じる。
「えっと、シロ?」
微笑んで頷く。
「私の願い事を叶えてたということは、シロは悪魔ってことですか?」
「悪魔ではありませんね」
「ん?」
「ああ、そのきょとんとした顔も愛らしいですね」
いやいや、こっちは平均的な日本人容姿だと言おうとしたら、ベッドサイドに座り込んでいた彼が立ち上がった。空気を読んで黙る。
バサッー
背中から一対の羽が広がる。その翼の色は漆黒。それはどこか蠱惑的で私の瞳を魅了する。
「…堕天使です」
彼は誇らしげに言った。