第四章 14『断ち切る想い』
窮奇の巨剣が、海を裂いた。
斬刹は血を吐きながら、それでも二刀を握り直す。
右腕は痺れている。
左足はまともに動かない。
それでも、膝はつかなかった。
「まだ立つか、人間」
「……当たり前だろ」
斬刹は笑う。
痛みで顔は歪んでいた。
だが、その目だけは折れていない。
「俺はまだ、死んでねぇ」
窮奇が翼を広げる。
暴風が海賊船の残骸を吹き飛ばし、海面に巨大な渦を生む。
次の一撃で終わる。
斬刹にも、それはわかった。
だからこそ、全てを込める。
仲間を守りたい。
帰りたい。
まだ死ねない。
その想いが、刀に流れ込む。
万物斬が震えた。
「――来い!!」
窮奇が飛ぶ。
巨剣が振り下ろされる。
海が割れ、空が鳴り、世界そのものが押し潰されるような一撃。
斬刹は逃げなかった。
一歩。
前へ出る。
「万物斬――」
刀身が淡く輝く。
ただの刃ではない。
想いを乗せた刃。
守るために振るう刃。
「――斜斬」
二刀が振り抜かれた。
次の瞬間、音が消えた。
巨剣が止まる。
窮奇の目が見開かれる。
斬撃は、巨剣ごと窮奇の胸を斜めに断ち切っていた。
「……見事だ」
窮奇が小さく笑う。
その巨体に亀裂が走り、黒い霧のように崩れ始める。
「人間の想い……悪くない」
最後の言葉と共に、四凶・窮奇は海風の中へ消えた。
斬刹はその場に膝をつく。
刀はまだ握っている。
離さない。
「……勝ったぞ」
荒れた海の上で、罪道斬刹は静かに呟いた。
四凶討伐。
窮奇戦、決着。




