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あすかの思い

「何で俺とスコルンだけ憑依されなかったんだ?」 


 俺は近寄るスコルンをなでながら考えた。そんな時、俺の頭の中に声が響いた。


『それは、お主の事が気に入っておるからだ』


「誰だ!」


 俺はあたりを見回した。するとティナが引き連れているリスが俺の顔を見つめていた。


『我だ』


「何だ、あすかか」


『何だとはなんだ!』


 リスは輪を描くように激しく走り回っていた。


「おい、あすか、お前、ティナには憑依しないと以前、約束したよな?」


 俺はリスのあすかに言った。


『スマヌ、情けない事に我が欲望に支配されたせいだ』


 リスは俺から体を背けた。


「欲望に取り憑かれてしまったものはしようがない、それより、何で俺とスコルンには憑依しなかったんだ?」


 俺はリスに話しかけた。


『スコルンはフェンリルゆえ、我が憑依するには格が高過ぎる』


「格が高い?」


『そうじゃ、憑依するにも低級なランクなら楽勝だが、フェンリルクラスじゃとランクが高過ぎて、難しいんじゃ』


 リスは俺の顔を向いた。


「俺には何で取り付かない? 人間レベルなら憑依するのなんて簡単だろ」


 俺は疑問をぶつけた。


『さっきも言った通り、お主を気にいっておるからだ』


「憑依すれば肉体の持ち主の思考も経験も手に入れられるし、お気に入りとやらを自分の欲求のおもむくままにコントロール出来るだろう?」


 俺はあすかに問うた。


『我も昔はお主の言うような事をした事もあったのだ、気に入る相手の精神を乗っ取って初めは満足していたのだが、次第に虚しくなったのだ』


「どうして?」


『当時の我は、ただ単に、お気に入りの相手と心身ともに一体化したかっただけなのだが、結果的にお気に入りの精神を亡き者とする事になり、我はしばらくして、一人ぼっちである事に気付いたのじゃ』


 リスは空を見上げた。


「じゃあ、俺に取り付かないのは?」


 俺はリスを見た。


『我は一人ぼっちはもう嫌なのじゃ、気に入った相手と共に同じ時を過ごしたいだけだ』


 リスは体を俺の方に向けて、俺の顔をジッと見た。


「そうか、わかったよ、そういう事なら一緒にいるよ」


 俺はリスをひざの上にのせた。そうしているうちにティナとバズの意識が回復した。


「旦那さま、私は一体、どうしていたのでしょうか?」


「疲れて気を失っていただけだ」


 俺はティナを抱き起こした。


「すみません、これからは体調に気をつけます」


 ティナは俺に詫びた。


「俺、なんか、師匠に失礼な事をした様な気がするんスけど?」


 バズは俺にたずねた。


「間違いは誰にでもある、気にするな」


 俺はバズに答えた。バズは何をしでかしたのかわからなくて釈然としない顔を俺に向けた。


「オイ、コノ縄ヲハズシヤガレ、ソコノエルフト交尾サセロ! オレハ、発情期デ、イラツイテルンダ!」


 木にくくりつけられたコボルトは怒鳴り声を上げてわめいていた。


「アイツは放っておこう」


 俺はつぶやいた。


「そうですわね!」


 ティナは俺に同意した。


「ジル、気が狂ったっスか?」


 事情がよくわからないバズはドン引きしていた。


「そろそろ、ここを片付けて、出発する準備をするか!」


 俺は皆に告げた。




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