帰って来たバズ
寄宿舎にバズが戻って来た。バズの顔はやつれきっていて、元気がなかった。
「バズ、なんだか顔色が悪そうだな、大丈夫か?」
俺はバズを見て話し掛けた。
「師匠、俺、有名人になった生活に耐えられそうもないっス」
バズは深刻な表情を浮かべた。
「何があった?」
俺はバズにたずねた。
「はじめは、チヤホヤされて、いい気分だったんスけど、段々、時が経つに連れて、息苦しくなって来たっス」
バズは言葉を選ぶように俺に返答した。
「結局、そうなったか! もっと詳しく話してみろ」
俺はバズの顔を見た。
「最初は若い女性が群がって来て、握手したり、軽く抱きしめたりして天にも登る気分だったっス」
「それで?」
「女の子達に嫌がる気配がないので、次第にエスカレートして、肩に回した手をズラシて胸を揉んでみたり、髪に軽くキスする振りをしてクチに接吻したりしたっス」
その場にいた俺とティナはドン引きした。
「痴漢呼ばわりでもされたか?」
俺はバズに聞いた。
「それが、女の子達はキャーキャー言って喜んでいたっス」
俺とティナは顔を見合わせた。
「バズが思い描いた展開じゃないのか?」
「そこまでは調子良かったっス」
バズは遠くを見つめた。
「そこまではって、その先はどうなったんだよ」
俺は、あきれながらも興味本位でバズにたずねた。
「俺は近付いてくるキレイな女性を見れば身体を触ったり、後ろから抱きしめて胸を揉んだり、舐め回したり、調子に乗って、面白可笑しくやってたっス」
俺はバズの言ってる事にゲンナリしてきた。
「そうしているうちに、好みの美人に連れられて、薄暗い店に連れていかれたっス」
「続きはどうなった?」
俺はバズの話に興味をかき立てられて、バズをせかした。
「薄暗い店で酒とツマミを注文して美人とちちくり合っていたら、屈強な男達が目の前に現れて、法外な金を要求して来たっス」
「ボッタクリカフェだな、でもバズの能力ならそんな奴ら、軽くひねり潰せただろ?」
俺はバズに疑問をぶつけた。
「それが、英雄様が料金踏み倒したら悪い噂が広まって辺境伯領に住めなくなるぞ! と脅されて、泣く泣く、お金を支払ったっス」
バズは思い詰めたような顔をした。
「それは大変だったな」
俺はバズに同情した。
「俺が失意の表情で店の外に出ると知らない男どもに囲まれたっス」
「どうなった?」
「テメェ、ちょっと有名になったからっていい気になるな! とか言われて暴行されたっスけど師匠の顔が頭に浮かんで、迷惑はかけられないと思って、必死に耐えたっス」
「そうか、大変だったな」
俺はバズの背中を軽くさすった。
「そして、ここまで帰って来る道中、尿意をもよおして、立ちションしようとしたら、皆んなが好奇の目で俺を見てくるんス! 俺は自由に立ちションも出来なくなったんス」
バズは話し終えると悔し涙を流し始めた。
「バズ、有名になるとぶち当たる壁だ。これからは有名人に相応しい世間の模範になる行動をとらないと駄目だぞ」
俺はバズに優しく注意した。
「わかったっス、これから気をつけるっス」
バズは納得した様だった。
「バズ、近々、辺境伯領第二の都市バジリコに向かう。そこなら、お前の事を誰も知らないから多少、自由に行動出来るぞ」
俺はバズを励ますつもりで言ったら、バズは弾けるような笑顔になった。
「了解っス! 師匠!」
バズの返事に、皆、明るく微笑んだ。




