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挨拶と報告

領主の部屋は、手前に執務室兼、応接室と奥に寝室などのプライベートルームがあるようだった。


 俺達は領主の姿を見ると慌てて片足を引いてのお辞儀、ティナはカーテシーを行い頭を下げた。


「そんな形式張った挨拶など良いから、王国でどの様な事があったのか報告を頼む」


 辺境伯は俺達をソファに座らせると説明を求めた。


「我々は王によって英雄の称号をいただいた後、貴族に取り立てていただきました。俺は子爵に、隣りのバズは騎士爵になりました」


「そうか! ならば盛大に祝ってやらねばのう!」


 辺境伯は豪快に笑った。


「ありがとうございます」


 俺達は礼を述べた。


「ところで、漏れ伝わってきた話によると、お主等、第三王子を壊滅的に追い込んだ様だな」


「第三王子とは因縁のある相手でもあり、王子側から難癖をつけられたので、仕方なく返り討ちにしました」


 俺は辺境伯に向かって話した。


「本来ならば、ワシがその場へ出席する予定だったが、どうしても手が離せない用事が出来たゆえ、代理に息子を出席させた。そんなに面白い見せ物があったならば、ワシが出席すべきだったのう」


 辺境伯は窓の外に目をやった。


「そんなに、面白いものではございませんので気にしなくてよろしいかと思います」


 俺は辺境伯の顔を見た。


謙遜(けんそん)するでない、少数で多勢を相手にするのだから並大抵のことではあるまい」


「確かに、相手は仮にも王位を狙う第三王子ですから多少苦戦はしましたが」


 俺は受け答えた。


「でも、ケガ一つお主等にはなかったらしいではないか?」


「実際、たいしたケガはしてません」


「噂は本当だったか」


 辺境伯は興奮を隠し切れない様子だった。


「それでは辺境伯様へのご挨拶と王国であった出来事の報告も終わりましたので帰らせて頂いてもよろしいでしょうか?」


 俺はダメ元で言ってみた。


「何を言っておる、レックスよ! ここからが本番だ!」


 辺境伯は俺達の申し出を当たり前のように断った。俺はがっかりした。


「本番とは一体、どの様な事でしょう」


 俺は辺境伯に(たす)ねた。


「お主達は現在、どこの派閥に属しておる」


 辺境伯は真剣な顔で俺にたずねた。


「冒険者としてはマイバッハ公爵の後ろ盾となっているクランに所属しておりますので、その観点では第一王子派になります」


「それは冒険者としての意見だよな、貴族としてはどうなんだ!」


 辺境伯は俺に圧をかけて来た。


「私は以前、公爵の娘のビクトリア様と懇意にさせて頂いた時期がありまして、そういう意味でも第一王子派と考えてもらってもよろしいかと思います」


 俺は正直に答えた。


「そうか! ワシも第一王子派だ、仲良くしよう!」


 辺境伯は豪快に笑いながら、ソファから立ち上がると俺に握手を求めた。


「大変心強く思います」


 俺は立ち上がり辺境伯と握手をした。


「ところでな、レックス、お主に相談したい事があるのだ」


 辺境伯は神妙な顔をした。


「何でしょうか?」


「ワシの叔父の子爵のエンツォがどうやらクーデターを企てているようだ」


「クーデター?」


 俺は思わず聞き返した。


「そうだ、エンツォは自分の領地に子飼いの貴族を集めて、軍事訓練に(いそ)しんでるようだ」


「それはきな臭い話ですね」


「エンツォは第二王子派で後ろ盾はマセラッティ侯爵だ」


「第二王子?」


「そうだ、しかもエンツォのヤツは王国と敵対するギリギリ共和国と繋がっているらしい」


「それは何とか対処しないと大変な事になりますね」


「だがな、決定的な証拠がなくてな」


 辺境伯は俺の方を向いた。俺はイヤな予感がした。


「どうするつもりですか?」


 俺が聞くと辺境伯は待ってましたと言わんばかりに俺の顔を直視した。


「お主達に奴らの様子を探って欲しい」


 辺境伯は俺の肩を(つか)んで訴えた。


「少し考えさせて下さい」


 俺は面倒な事に巻き込まれて途方にくれた。 



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