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辺境伯

俺達は辺境伯領に凱旋(がいせん)した。領民は英雄になった俺達を熱烈に歓迎してくれた。


「師匠、領民の歓迎っぷり、すごいっスね!」


 バズが俺の方に顔を向けた。


「そうだな、バズ、領民に手を振ってやれ」


 俺はバズに提案した。するとバズは手を高々とあげた。


「キャーッ! バズが手を振ってくれた」


 若い女性達が黄色い歓声を浴びせた。


「バズがこっち向いたわよ!」


 バズが手を振る方向、顔を向ける方向それぞれで大きな歓声が起きた。


「バズ! こっち向いて!」


 気を良くしたバズは道を埋め尽くす若い女性達に投げキッスをしたりウインクしたり、暴走を始めた。


「バズ、いい加減にしてくれ! このままじゃ、前に進めないじゃないか!」


 俺はバズに状況改善を求めた。


「すんません、つい、自分に酔ってしまったっス」


 バズはアピールする事をやめた。


「旦那さまがバズを焚きつけるような事を言うからですよ」


 ティナが俺に注意した。


「まあ、そうだな。でもこんな騒ぎになるなんて思ってもみなかったな」


 俺はティナに顔を向けた。


「それにしてもこんな状態が続くのも困ったもんだな」


 俺がつぶやくのと同じくらいのタイミングで、憲兵達が通行整理を始めた。


「とりあえず、前に進むっス」


 バズが訴えたので、俺達は深く考えずに前に進んだ。


「何か、城が見えて来たっス」


 そこには要塞化された辺境伯の城がそびえ立っていた。


「ゲッ! ここって辺境伯の居城じゃないか」


「なにか問題でもあるっスか?」


 バズが俺に尋ねた。


「領主に挨拶とか王国であった出来事の報告をしないといけないんだよ」


 俺はバズに顔を向けて予想される流れを説明した。


「また、泊まりとかになるんスか?」


「おそらくな」


 俺は答えた。バズは面倒くさそうな顔をした。


「そんな面倒な事、師匠が一人で片付けてほしいっス」


 バズは俺に全てを押し付けようとした。


「バズ、もちろんお前も俺と一緒に行くんだよ」


「いやっス」


 バズはゴネた。


「バズ、何も考えずに私達の後について来なさい」


 ティナはバズに圧をかけた。


「了解っス」


 バズはなにかを悟った様な表情で空を見上げた。




 重厚な石造りの城壁がそびえ立つ城へ、兵の案内によって俺達は向かった。


 門の両脇には、領主の紋章が刻まれた鎧に身を包む衛兵が立ち、俺達の素性を確かめ、通行の許可を出した。


 俺達は門の中の暗い通路を通り、城の内部へと足を踏み入れた。門を抜けると外の世界と切り離された町が広がっていた。


「師匠、こんな所に町があるっス」


 バズは俺に(ささや)いた。


「そうだな」


 俺はバズの言うことに頷いた。


  厩舎からは馬の匂いと蹄の音が聞こえ、武器庫の近くでは、甲冑を叩く金属音が響いていた。


「活気がありますわね、旦那さま」


 ティナが俺に顔を向けた。


「確かに(にぎ)やかだな」


 俺は相づちをうった。


  使用人たちが忙しく走り回り、食料を運ぶ荷車の車輪が石畳の上で音を立てていた。俺達はそんな様子を見ながら先を急いだ。


 城の最も堅固な塔の本丸の入り口には、威圧的な石造りの大階段があった。ここからは、俺達は客としての扱いになった。


 重い扉が開くと吹き抜けの大広間があり、その奥には高い壇があって、宴が行われているようだった。


「ここに領主がいるんスかねえ?」


 バズが俺に聞いた。


「まだ、先があるみたいだぞ」


 俺はバズにこたえた。


 大広間の華やかさを後にし、侍従の案内に従って奥へと進むと喧騒は遠のいた。

 

 彫刻が施された扉の前に辿り着くと侍従が静かに扉を叩き、俺達に入るよう促した。


「主がお待ちです」


 扉が開くと、窓の外に広がる領地を見渡す領主の姿があった。その背中には一国を担う重圧と威厳が漂っていた。



「よく、訪ねてくれた。レックスよ!」


 辺境伯領主ヴェンツォ・ランチャが出迎えた。



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