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俺とティナ

 俺はバズとともに宿屋に戻った。ティナは辺境伯領へ戻るための準備をしていた。


「ティナ、帰って来たぞ」


 俺は何事もなかったように振る舞った。


「お帰りなさい」


 ティナは俺の顔を真剣に見つめた。


「途中、バズに会って話し込んでたんだ」


 俺は視線がうまく定まらないまま、ティナと話をした。


「そう」


 ティナは短く答えた。


「そうだよな、バズ」


 俺はバズに同意を求めた。


「そうっス」


 バズは俺の方を向いて返事をした。


「そう、わかったわ、バズ、席を外しなさい」


 ティナはバズを険しい顔で見た。


「了解っス」


 バズは何かを察して席を外した。


「旦那さま、私に何か隠し事しているのではありませんか?」


 ティナが俺の顔を見つめる。


「いや、そんな事はないよ」


 俺はティナの顔をまともに見る事が出来ないまま答えた。


「本当ですか?」


 ティナは俺の顔をにらみ付けた。俺は恐ろしくなって、バズと会ってからの経緯を話した。


「浮気ですか?」


「結果的にそういう事になるな」


「不潔よ」


 ティナは俺にそう言うと俺に背を向けた。


 そのなんとも言えないティナの後ろ姿に俺の欲望レベルはマックスになった。


「ティナ!」


 俺はそう叫ぶと後ろから強引にティナに抱きついた。


「嫌、離して!」


 ティナは俺を拒絶した。俺はティナから離れようとしたその時だった。


「ぐあぁ~っ!」


 獣の皮をかぶった欲望が俺の良心の欠片すらをも支配し、俺を一匹の怪物に変えた。そして俺はティナに覆い被さった。


「やめてよ!」


 ティナは抵抗したが、その姿がかえって俺の煮えたぎる興奮を倍増させるスパイスとなった。


「いい加減にしなさい!」


 ティナは怒鳴り声をあげると俺の後頭部に手刀を食らわし、そのせいで、俺は気を失った。



 それから、しばらくの時がたった。


「旦那さま、起きて下さい! 大丈夫ですか?」


 俺はティナの呼びかけで、ティナの(ひさ)の上で眠っていた俺は目を覚ました。


「ティナ、俺はどうしちまったんだ? 途中から記憶があいまいなんだ」


「あなたは、気を失っていたのよ」


 ティナは俺を見て答えた。


「すまん、今日の俺はどこか変なんだ。なんだか変にムラムラするんだよ」


 俺はティナに訴えるとポケットの中からビンを取り出した。


「知らぬ間にコイツが俺のポケットの中に転がっていたんだ」


「それは何?」


「夢欲転精という精力増強剤みたいだ」


 俺がティナに説明するとティナはドン引きした。


「なんでそんな物、持っているのよ?」


「それが、俺にもわからないんだよ!」


 俺はそれを手にした理由がわからない事を強調した。


「そう、わかったわ。でもね、そんな薬の様な物に頼っちゃ駄目ですよ」


 ティナは俺に優しく微笑みながら訴えた。俺は何だかこそばゆいような温かい気持ちになった。


「ティナ」


 俺は起きあがるとティナを見つめた。


「何、旦那さま」


 ティナは俺を見て笑みを浮かべた。その様子を見て、俺の胸は高なった。


「ティナ、好きだ」


 俺はティナを抱き寄せた。ティナは特に嫌がることはなかった。


「旦那さま」


 ティナは俺に身をまかせた。



 俺は今まで、ティナの事を額縁(かくふち)の中にとらわれた綺麗な人物画の女性を見ている様な、何ともいえない感覚があった。俺のすぐ傍にありながら、手が届きそうで、決して手に届かない存在、それがティナだった。


「ティナ、綺麗だ」


 俺はそんなティナの髪を優しく撫でた後、ベッドの上に押し倒した。


 ティナの柔らかく瑞々(みずみず)しい生身の姿を俺の自らに沸き起こる衝動によって、生じた感覚を、俺自身の心の奥深くに刻み込んだ。


 そして俺とティナの二人で共に過ごす時間と空間がシンクロする事で、俺とティナが互いに共鳴し合う存在である事を再認識させた。


 俺とティナは結ばれた後、ベッドの上でともにしばらく時を過ごした。


 それからしばしの時が経つと俺の欲望レベルは底辺と化した。俺は再び、賢者に逆戻りしたのだった。


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