表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
68/83

エンジョイしょう!

 朝になると執事が呼びに来たので、応接室へと向かう。応接室の白い扉が開かれると、朝の陽の光を浴びて揺れる髪を(きら)めかせるビクトリアがいた。


「おはよう! レックス」


 ビクトリアは明るい笑顔で俺に朝の挨拶をした。その表情は、なんだか大人びて見えた。


「あ、嗚呼、おはよう」


 俺は戸惑いながら返事を返した。


「おはよう、レックス君」


 奥の席からマイバッハ公爵が近付いて来た。


「おはようございます」


 俺は公爵に挨拶をして席に着くとテーブルに用意された軽食を手にした。


「君はもう我々の家族の一員みたいなものだから困った事があったら、何でも言ってきなさい」


 公爵は俺の顔を見た。俺は子爵としての後見人的な立場で相談に乗ってくれるくらいの気持ちでいた。


「レックス」


 俺を呼ぶビクトリアの瞳は軽く(うる)み、(つや)っぽく見えた。


「私、今は貴方と結婚出来なくてもいい、でも、ずっと待ってる」


 何かが吹っ切れたように微笑むビクトリアの表情は本物の聖女のようだった。


「レックス君、私も君の気持ちが変わるのを待っているから、その気になったら家に来なさい」


 公爵が真剣な目付きで俺を見た。


「どういう事ですか?」


 俺は疑問を呈した。


「若いうちは色んな経験をしたほうがいい、それに飽きたらここへ来なさい。何かあれば我々が君の面倒を見よう! ビクトリアの伴侶として迎えるよ」


 公爵は俺の顔を見て微笑んだ。ビクトリアは公爵の後ろで(うつむ)いてはにかんでいた。


「ありがとうございます」


 俺はなんだか事情が良くわからないまま、礼を述べるとティナとバズがいる宿屋へと向かうため、馬車を用意してもらい公爵邸を後にした。



 馬車のなかで俺はポケットの中からビンを取り出した。


「コイツの事、ビクトリアに聞けなかったな」


 俺はつぶやいた。


「何でこんなものが必要だったんだろう」


 俺は夢欲転精と書かれたビンを(なが)めて、色々考えた。 


「もしかして、コイツを使って何らかの既成事実を作り出そうとしていたのか」


 俺は、思わず声に出したが、考えれば考えるほど恐ろしくなって来たので考えるのをやめた。


 宿屋の近くに馬車が到着すると俺は宿屋の方へ歩き始めた。するとそこに何故かバズが歩いていた。


「バズ、どこ行くんだ」


 俺は声をかけた。


「あっ、師匠! 今からマッチングサロンに行くっス! 師匠もどうっスか?」



「マッチングサロン? そんな所があるのか」


 俺は興味本位でバズの後をついて行った。サロンの店内に入るといかがわしい雰囲気が充満していた。


「何だ、ここは」


「男と女がエンジョイする場っス」


「そ、そうか」


 バズは手慣れた様子で参加費を払うと店内のイスに腰掛けた。


「師匠も早くこっち来て下さい」


 バズの言葉に俺も参加費を払ってバズの隣に腰掛けた。


 するとセクシーな薄着の女性がやって来た。俺はバズに言われるがまま、俺好みの巨乳メガネの女性と話をした。


「どうっスか師匠、ティナ姉さん以外の女性との出会いを楽しんで、日頃の憂さをはらしましょう」 


 そう言うと早くもバズは自分の世界に旅だった。


「バズの野郎、早速、エンジョイを始めやがったな」


 今までの賢者と化した俺ならきわめて冷静な対応をしただろう。しかし、今日の俺は一味違った。欲望レベルがマックスに達していたからだ。


「俺もエンジョイするか」


 俺はエンジョイするため、女性に手を伸ばそうとしたその時、制限時間が来てサービスは終了した。


「ふう、スッキリしたっス!」


 バズが横から清々(すかすか)しい声で言葉を発した。


「バズの野郎、欲望を解放しやがった」


 俺は欲望を解放できなかった事に肩を落とした。


「欲望レベルが上がり過ぎると時間の経過が早くなるとでも言うのか?」


 俺は(むな)しくて、しばらく天井を見上げた。


「ティナはどうしてるかな」


 俺は無性に、ティナに会いたくなった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ