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公爵邸

晩さん会の翌日、俺はマイバッハ公爵邸へ招待された。


「ティナ、バズ、俺は公爵邸に呼び出しがかかった。ちょっと行って来るから、帰って来るまで、自由に行動して良いぞ」


 俺はティナとバズに告げた。


「夕方には帰って来られますか?」


 ティナは俺の顔を見た。


「それはわからない、最悪、明日になるかもしれない。相手はクランの事実上のオーナーだからな、必ず顔を出さないとな」


 ティナの方を見て話した。


「私も一緒に、というわけにはいかないのですか?」


「過去に色々あったからな、向こうから俺一人でという指名付きだ」


 俺はティナに告げた。


「仕方ないですわね、無事に戻って来て下さい」


「心配するな、必ず帰って来るよ」


 俺はティナの顔を見ながら髪の毛を軽く触れた。


 それから俺はマイバッハ公爵の迎えの馬車に乗って出発した。 



 マイバッハ公爵邸は王城にほど近い場所にある。大貴族なだけに桁違いな敷地の広さに圧倒される。


 重厚な門をくぐり、馬車止めの前で足を止めると、日常とは切り離された空間が広がっている事に驚く。


 俺は馬車から降りると出迎えた執事に案内され公爵のもとへ向かった。


 そびえ立つ双開きの扉が、執事の手によって開かれた。俺が玄関に一歩足を踏み入れると白百合の香りがほのかに漂った。


 正面には二階へと続く中央階段があり、 奥に進むと歴代当主の肖像画が並び、俺にはここが選ばれた者のみが許される場であることを無言で告げているように思えた。


 俺は案内されるまま、絨毯が敷かれた回廊を進む。前にも何度か訪れた事があるが、いつもながら圧倒された。


  隅々には、東洋の磁器や、精緻な装飾が施された置時計が並び、この屋敷の長い歴史と財力を物語っているように見えた。


 やがて、金色の縁取りがなされた応接室の白い扉にたどり着き、扉が開かれると、窓からは手入れの行き届いた広大な庭園が一望できた。


 俺がここで足を止めると、奥の席からマイバッハ公爵がゆっくりと立ち上がり、微笑みを浮かべた。


「昨日は俺達のためにありがとうございました」 


 俺は謁見式と晩さん会に参加してもらった礼を述べた。


「君は、娘と深い関わりのある人物だからね、当然の事だよ」


 公爵は俺に笑いかけた。その公爵の後ろにはビクトリアがいた。ビクトリアは落ち着かない様子だったが意を決したかのように俺に顔を向けて、話しかけた。


「レックス、久しぶり」


「この前の魔王軍との戦い以来か? それとも王国音楽祭以来かな?」


 俺はビクトリアの顔を見ながら微笑んだ。


「会いたかった!」


 ビクトリアはそう言うと俺の胸に飛び込んで来た。


「また元気な顔が見れて良かったよ」


 俺はビクトリアを抱きしめた。


「あんなに優しかったあなたが、別人みたいで驚いたわ」


 ビクトリアは上目遣いで俺の顔を見た。


「俺こそ、ビクトリアが絶対聖女なんてふざけた二つ名を掲げて辺境伯領に来たのにはビックリしたな」


「それ、私がつけたわけじゃないわ」


「まあ、そうだろうな、でも聖女だなんてすごいじゃないか」


 俺がほめると顔を赤くした。


 お互い、挨拶も済んで少し落ち着いた頃、マイバッハ公爵が、昨日の騒ぎについて俺に教えてくれた。


「第三王子とベルファイア宮廷魔術師それとモーリス伯爵だが、取調べで三者三様にお互いに罪をなすり付け合ってるそうだ」


 公爵が俺の方を向いて語った。


「そうですか」


 俺は公爵の話を真剣に聞いた。


「モーリス伯爵は元々叩けば埃の出る人物だった為、爵位はく奪、それと宮邸魔術師ベルファイアは死罪となる予定だそうだ」


「第三王子はどうなるのですか?」


廃嫡(はいちやく)になるかもしれないが、第三王子の後ろ盾がなくなれば次の王になる事もないだろうし、寛大な処分がくだされるかもしれないね」


「そうですか、今までの愚行の数々を考えたら生きる方が辛い事になりそうですね」


 俺は公爵に顔を向けた。



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